“デカい原付”こそ正義! NS-1は見た目の満足感がケタ違い
1990年代初頭、原付スポーツに乗る若者にとって「大きく見えること」はかなり重要だった。もちろん排気量は50ccだけど、パッと見た瞬間に“ちゃんとしたスポーツバイク”に見えるかどうか。そこは、当時の所有満足度に直結する大事なポイントだったのだ。
NS-1の魅力は、まさにそこにあった。全長1905mmのフルサイズボディにフルカウルをまとい、前後17インチホイールを装着。燃料タンク風のセンタートランクも相まって、中型クラスのスポーツバイクにも見える堂々たるシルエットを持っていた。
それでいて原付免許で乗れる50cc。通学や街乗りの相棒として使いながら、気分はしっかりロードスポーツ。まさに「デカいはエライ!」をそのまま形にしたような一台だった。

50ccとは思えないフルサイズボディがNS-1最大の魅力。原付ながら、乗るだけで少し誇らしい気分にさせてくれる存在だった。
タンクに見えて実は収納! 24Lメットインが常識を変えた
NS-1がただの“デカい原付”で終わらなかった理由が、センター部分に用意された24Lのメットインスペースだ。見た目はどう見ても燃料タンクなのに、開けるとそこは収納スペース。フルフェイスヘルメットも入る実用性を備えていた。
当時のスポーツバイク系原付で、ここまで大きな収納を持つモデルはかなり画期的。しかもスクーターではなく、フルカウルのミッションスポーツでそれをやってのけたのがNS-1のすごいところだ。
燃料タンクはシート下へ移され、給油口はシートカウル上部に配置。スポーツバイクらしい見た目と、スクーター的な便利さを両立していたわけだ。通学で使うなら、これはかなりありがたい。教科書、レインウエア、たばこ……ではなく、ちょっとした荷物まで入れられるNS-1は、見た目だけでなく日常の使いやすさでも若者の心をつかんだ。

燃料タンクに見える部分は、実は容量24Lのセンタートランク。フルフェイスヘルメットも収納できる実用性がNS-1の大きな武器だった。
水冷2スト7.2ps+17インチで走りも本格派
見た目と便利さに注目が集まりがちなNS-1だが、走りの装備もなかなか本気。エンジンはNS50系で定評のあった水冷2スト単気筒。最高出力は7.2ps/10000rpmを発揮し、6速リターンミッションを組み合わせていた。
車体にはツインチューブ・ダイヤモンド式フレームを採用し、前後17インチホイール、前後油圧式ディスクブレーキを装備。タイヤサイズは90/80-17・100/80-17で、50ccスポーツとしてはかなり立派な足周りを与えられていた。
もちろん、NSR50のようなミニバイクレース直系の小さなレーサーレプリカとはキャラクターが違う。NS-1はフルサイズの車体を活かして、街乗り、通学、ツーリングまで楽しめるオールマイティなロードスポーツだったのだ。大きな車体、2ストの伸び、17インチの安定感。その組み合わせがNS-1らしい乗り味を作っていたのだ。

大径タコメーターがレーシーなコクピット周り。水冷2スト単気筒エンジンは最高出力7.2psを発揮し、前後17インチホイールと前後ディスクブレーキにより、走りも本格派だった。
ロスマンズ、ネコ目、RVF風カラーまで見た目の進化も熱かった
NS-1の歴史を語るうえで外せないのが、カラーリングや外観の進化だ。1994年には、4000台限定のロスマンズカラーを設定。カウリングにRothmansロゴやエンブレムを配した特別仕様で、レーシングマシン気分を味わえるスペシャルな一台だった。+7000円でこの雰囲気が手に入るなら、そりゃズルい! と思った人も多かったはず。
さらに1995年には後期型へ進化。大型アッパーカウルとデュアルヘッドライトを採用し、外観はよりスポーティで精悍なイメージとなった。いわゆる“ネコ目”と呼ばれる二灯ヘッドライトは、後期型NS-1を象徴するポイント。400ccクラスの人気車RVFを思わせるカラーリングもあいまって、50ccとは思えない迫力を漂わせていた。
中身も熟成され、DC-CDI点火方式や新設計パルサー、インテークチャンバーの新設、リードバルブ形状の変更などにより、扱いやすさとスポーティさを高めていた。見た目だけでなく、日常での乗りやすさまで進化していたのが後期型の魅力だ。

1994年に登場したロスマンズカラーは4000台限定。レーシングマシン気分を味わえる特別仕様として、今なお印象に残る存在だ。

1995年登場の後期型では、大型アッパーカウルとデュアルヘッドライトを採用。通称“ネコ目”の顔つきで、さらにスポーティな印象を強めた。
NS50FからNS-1へ。原付スポーツが本気だった時代
NS-1の前には、先代にあたるNS50F・エアロが存在していた。1987年に登場したNS50Fは、水冷2スト単気筒エンジンを搭載したロードスポーツで、最高出力は7.2ps。前輪油圧式ディスクブレーキ、アルミ製キャストホイール、幅広タイヤを採用し、50ccながら本格派の雰囲気を持っていた。
ハーフフェアリングやシートカウル内の小物入れなど、走りだけでなく実用性にも目を向けていた点もNS50Fらしいところ。つまり、NS-1の“スポーツバイクらしさと便利さの両立”は、突然生まれたものではなく、NS50Fからの流れを受け継いだものでもあったのだ。
ただしNS-1は、そこにフルカウル、フルサイズボディ、そして24Lメットインという強烈な個性を上乗せした。原付スポーツがまだまだ本気だった時代。その象徴のひとつが、まちがいなくNS-1だった。

NS-1の先代にあたるNS50F・エアロ。水冷2ストエンジンを搭載した本格派ロードスポーツで、NS-1につながる始祖的存在だった。
当時のモトチャンプ誌面が伝える“Nワン”熱狂時代
NS-1が盛り上がっていた当時、モトチャンプ誌面でもNS-1はたびたび登場していた。限定ロスマンズカラーの発売時には、伊藤真一さん、岡田忠之さん、宇川徹さんの3選手が新東京サーキットを激走。伊藤真一さんの「基礎を学ぶための絶好の素材ですね」というコメントも残っている。
2ストチューンの定番であるチャンバー交換テストも大人気で、毎月のように新型チャンバーが登場。さらにガレージノア製NRレプリカカウルや、キタコの耐久スタイルなど、ドレスアップ&カスタムパーツも盛り上がっていた。
走ってよし、いじってよし、眺めてよし。しかも通学にも使える。NS-1は、50ccという枠の中でできることをめいっぱい広げた原付スポーツだった。今見ても「原付なのに、ここまでやる!?」と思わせてくれる一台。デカいはエライ。Nワンは、そんな時代の空気を今に伝える名車なのだ。



当時のモトチャンプ誌面でもNS-1は大人気。走り、チューニング、ドレスアップまで、Nワン文化は大きな盛り上がりを見せていた。
主要諸元|1991年 ホンダNS-1

全長×全幅×全高:1905×670×1080mm
ホイールベース:1295mm
シート高:752mm
車両重量:101kg
エンジン:水冷2スト単気筒
総排気量:49cc
最高出力:7.2ps/10000rpm
最大トルク:0.65kgm/7500rpm
燃料タンク容量:8.0L
燃費:54.3km/L(30km/h定地走行)
変速機:6速リターン
ブレーキ(前・後):油圧式ディスク
タイヤ(前・後):90/80-17・100/80-17
価格:27万9000円
※この記事は過去のモトチャンプ掲載内容を基に、構成を再編集しています。
【モトチャンプ編集部】