たった1000円でカブ旅を楽しむという、物価高に挑戦するようなこの企画。当然のことながら物質的なぜいたくはできないが、カブでのんびり散策するという行程が、ぜいたくな時間を過ごさせてくれる。今回の旅のテーマは、歴史の道をたどるという内容で、布田道を訪ねてみた。

土方歳三ゆかりの地をめぐる

道路が整備された現在も、各地に古道が残っている。都内にももちろんそうした古道があり、歴史をいまに伝えている。布田道もそうした古道のひとつだ。
布田道はかつての甲州街道布田五宿と大山街道小野路宿とを結ぶ間道で、幕末、新選組の近藤勇や土方歳三、沖田総司らが小野路の小島鹿之助に天然理心流(剣術をはじめとした古武道の流派)の稽古に通ったとされる道だ。そんな布田道も現在、カブで走れる箇所は限られているので、まずは新選組にゆかりのある場所をめぐることにした。
関屋の切通しと小野路宿の間の布田道からの眺め。町田とは思えない風景が広がっていた
初めに目指したのは日野宿本陣。JR中央線日野駅の近くにある。都内で唯一残っている江戸時代に建てられた本陣建物で、幕末に日野宿の問屋と日野本郷名主を務めていた佐藤彦五郎が本陣兼自宅としていた。天然理心流の道場を敷地内に開き、新選組の面々が稽古に励んだという。
次に向かったのは日野市新選組ふるさと歴史館。建物に由緒があるわけじゃなく、新選組や幕末維新、甲州道中日野宿などに関する展示、調査、研究を行っている。新選組推しの人にはおすすめの施設だ。

日野には土方歳三の生家があり、現在も子孫の方が居住していて、土方歳三資料館として遺品の展示が行われている。開館は休日を中心に月に数回ほど。興味のある人は開館日を確認したうえでの来訪が必須。
土方歳三資料館の隣には、伊十郎屋敷長屋門がある。土方家の分家だった土方伊十郎の屋敷の長屋門だ。個人宅なので内部に入ることはできないが、長屋門の外観を眺めるだけでも歴史を感じることができる。
日野宿本陣は都内で唯一残っている江戸時代建造の本陣建物 日野宿本陣 – 日野市観光協会
新選組や日野宿に関するさまざまな展示が行われている日野市新選組のふるさと歴史館 新選組のふるさと歴史館|日野市公式ホームページ
新選組副長土方歳三の生家。土方歳三資料館にもなっている 歳三の生家 土方歳三資料館|東京都日野市
土方家の分家である土方伊十郎の屋敷。土方歳三の生家のすぐ隣にある
新井橋で浅川を渡り、高幡不動の境内の駐輪場にカブを止める。なぜ高幡不動へ来たかというと、ここ高畑不動尊、正式には真言宗智山派別格本山高幡山明王院金剛寺は土方歳三の菩提寺なのだ。境内には近藤勇、土方歳三の碑や、土方歳三の銅像があり、大日堂には土方歳三の位牌や新選組隊士慰霊の大位牌などがある。さらに奥殿には土方歳三の書簡をはじめ、新選組に関する資料が数多く展示されているのだ。
過去に何度か高畑不動尊には来ているが、新選組ゆかりの場所という視点から眺めてみると、またちがった風景に見えた。
高幡山明王院金剛寺の仁王門
東京都最古の文化財建造物である不動堂
丈六不動三尊像を中心に多くの文化財を収蔵、展示する奥殿
高幡不動尊のシンボルともいえる五重塔
境内には土方歳三の銅像がある

里山の中にひっそりと残る布田道

多摩モノレール通りを一気に南下して、南多摩尾根幹線道路を交差し町田市域に入る。ニュータウンの景観は里山の風情へと一変する。一本杉公園通りを進み、恵泉女学園大学の脇を抜けたところで南側に狭い道に入る。軽自動車ならなんとか通行できそうな道をたどっていくと、すぐに周囲は雑木林と田畑となる。谷戸の縁を西側に折れてしばらく行くと、鬱蒼とした竹林の切通しが現れた。実はこの道こそが古道である布田道なのだ。そしてここが関屋の切通しなのだ。軽自動車でも通行に困難を極める道も、カブなら躊躇なく走ることができるから、こうした古道めぐりにカブはうってつけだと再認識した。
近藤勇、土方歳三らが小野路の小島鹿之助の元に天然理心流の稽古のためかつて通った道である。案内板にもそのように記されていて、小野路宿まで二町の道のりとあった。200mちょっとの距離だ。
カブならこんな古道も難なく走破できる
かつての布田道の面影をいまに伝えている関屋の切り通し
5つの街道が集まる小野路宿は江戸時代から交通の要衝として栄えていた。幕末には6軒の旅籠があったといわれていて、そのひとつの角屋は現在、町田市の観光拠点『小野路宿里山交流館』となっている。施設内には長屋門や土蔵、味噌蔵、実際に製茶作業が行われる製茶場などがあり、その佇まいに江戸風情を醸し出している。さらに物販コーナーや食事処もある。ちょうど昼時だったので、名物の小野路うどんで腹を満たした。
小野路宿里山交流館の向かい側に小島資料館がある。そしてこの小島家こそ新選組の近藤勇や土方歳三が布田道を通り、名主である小島鹿之助のもとに剣術の出稽古に訪れていた場所なのである。
近藤勇や土方歳三ら新選組の面々が剣術の稽古に通った小島鹿之助の屋敷。小島資料館にもなっている 小島資料館 – 町田市観光ガイド
小野路宿の旅籠の一軒だった角屋を改修した小野路宿里山交流館 小野路宿里山交流館/町田市ホームページ
というわけで今回、歴史の道を訪ねて新選組ゆかりの場所をめぐってみた。カブならではの高い機動性を生かして狭い古道を走るのはなかなか爽快だった。走行距離は約35kmで、ガソリン使用量は0.7L。燃費はちょっと悪かったのが残念。かかった費用は小野路うどん650円のみだった。
江戸時代に宿場として栄えた小野路宿。いまも江戸の風情を残している