溝呂木 陽の水彩カースケッチ帳 連載・第19回 フレンチ・ブルーに栄光あれ!!

溝呂木 陽の水彩カースケッチ帳/連載・第19回 フレンチ・ブルーに栄光あれ!!

クルマ大好きイラストレーター・溝呂木 陽(みぞろぎ あきら)さんによる、素敵な水彩画をまじえた連載カー・コラム。10年ほど前に訪れた、フランス、ル・マンで開催されている偉大なクラシックカー・イベント『ル・マン クラシック』のお話も今回が最後です。トリはやっぱりフランス車のお話でシメましょう。
アンリ・ペスカロロとグラハム・ヒルが駆った1972年ル・マン優勝車、マトラMS670。(水彩画)

長く書いて来ましたが、『ル・マンクラシック 2010』を振り返ってきたレポートも今回で最終回としたいと思います。今回はフランスの栄光を背負って走る、フレンチ・ブルーのクルマたちについて書いていきましょう。

フランスには過去にブガッティやタルボ、パナールと言った名車がありましたが、ボクの好きな60-70年代はと言えば、スポーツカーの二大巨頭、アルピーヌとマトラが毎年ル・マンでしのぎを削っていました。

ルネ・ボネが作り出した世界初のミッドシップ量産車、ルネ・ボネ ジェット。のちにマトラ ジェットになります。(水彩画)
マトラ ジェットはルノーのエンジンを搭載しています。ボクの日本の友人たちも乗っています。

こちらはボクの大好きなマトラ。マトラというメーカーは元々は航空機産業から身を起してミサイルや人工衛星なども開発していた大企業体です。世界有数の老舗自動車メーカー、パナールのスポーツ・モデルやレーシングカーを開発していたルネ・ボネが興したメーカーで開発した世界初の量産ミッドシップ車、ルネ・ボネ ジェットをプロジェクトごと買い取って、1962年に自動車の分野に進出してきました。

マトラの野望は凄まじく、新興自動車メーカーでありながらV12エンジンを新規開発してF1とスポーツプロトタイプのレースに進出。短期間でのF1チャンピオン獲得とル・マン優勝という目標を掲げます。

1968年から本格的なF1参戦を開始し、フォードV8を搭載したマトラ インターナショナルが、早くも1969年に名手ジャッキー・スチュワートによりドライバーズとコンストラクターズタイトルを手にしてしまいます。

スポーツカーの分野でも66年からレース参戦を始め、68年からV12エンジン搭載マシンにスイッチ。そして72年から74年までマトラシムカMS670シリーズによる伝説の3連勝を成し遂げるのです。

こちらは1972年のアンリ・ペスカロロ/グラハム・ヒル組の記念すべき初優勝車。『ル・マン クラシック』でもV12のマトラミュージックを響かせて観客の大きな拍手と声援を浴びていました。
こちらはエアロジェットという小さなマトラ ジェットのル・マンスペシャルです。『ル・マン クラシック』の会場でスケッチした作品になります。(水彩画)
彩色のもとになった写真です。エアロジェットは明るいブルーが印象的。

そしてもう一つの巨頭がアルピーヌです。こちらもル・マンでは大人気のメイクスで、当時アルピーヌはラリーで活躍したA110とは別に、ル・マンではミッドシップのA210のシリーズを展開しました。

加藤先生所有の美しいアルピーヌM63プロトタイプ。

こちらは日本から、名古屋のベテラン医師にして日本を代表するアルピーヌ/ルノー愛好家として知られる加藤仁先生がエントリーされていた貴重なM63プロトタイプです。もちろん当時――1963年――、ル・マンを走ったワークスカーの一台で、積極的にレースに出場されている、“走る文化財”とも言える世界的に有名な個体です。

アルピーヌはラリーなどで活躍したA110が有名ですが、こちらはアルピーヌA210です。
アルピーヌA220はさすがに迫力がありました。会場でスケッチしたものを日本で彩色しました。(水彩画)

こちらの絵はA220と言われる3リッターのプロトタイプで、レースでは結果を残せませんでしたが、大きく迫力のある形状は大好きです。会場でスケッチしていると、オーナーのフランス人が喜んで見てくれました。

会場内ではクラブのブースがいたる所にあり、このマトラやルネ・ボネのジェットたちが並ぶジェットクラブの結束も印象的でした。(水彩画)
パナールのル・マン スペシャルたち。フランス以外ではまず見られないクルマたちですね。こちらは1960年のル・マンに参戦したDBパナールHBR4 スパイダーです。
同じくパナールのル・マン スペシャルで、1967年のル・マンに参戦したCDパナール プジョー66C。モトーリ・モデルニでチューンされたプジョー204のエンジンを搭載。ル・マンに参戦した最後のパナール車になります。

会場で夢のようなクルマたちと過ごした3日間。あまりに暑く火照った体をクールダウンするために何度も『ル・マン ミュージアム』へ行きました。このミュージアムは素晴らしい名車やミニチュアのジオラマなどで歴史を体感できる施設ですので、ル・マンに行かれた際にはぜひとも訪問されることをオススメします。

会場のVIP駐車場では、かわいらしい彼女たちが配車やシトロエンDSのタクシーの手配などを連日こなしていたのが印象的でした。カッコいいワンピースと真っ赤に日焼けした肌が魅力的で、ボクの『ル・マン クラシック』での想い出のひとつとなっています。

今年、2022年は『ル・マン クラシック』開催年。また名車たちの熱い闘いを期待したいと思います。次回からはボクが愛するパリの街並やクルマたちについて語っていこうと思います。引き続きおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

著者プロフィール

溝呂木 陽 近影

溝呂木 陽

溝呂木 陽 (みぞろぎ あきら)
1967年生まれ。武蔵野美術大学卒。
中学生時代から毎月雑誌投稿、高校生の…