長く書いて来ましたが、『ル・マンクラシック 2010』を振り返ってきたレポートも今回で最終回としたいと思います。今回はフランスの栄光を背負って走る、フレンチ・ブルーのクルマたちについて書いていきましょう。
フランスには過去にブガッティやタルボ、パナールと言った名車がありましたが、ボクの好きな60-70年代はと言えば、スポーツカーの二大巨頭、アルピーヌとマトラが毎年ル・マンでしのぎを削っていました。
こちらはボクの大好きなマトラ。マトラというメーカーは元々は航空機産業から身を起してミサイルや人工衛星なども開発していた大企業体です。世界有数の老舗自動車メーカー、パナールのスポーツ・モデルやレーシングカーを開発していたルネ・ボネが興したメーカーで開発した世界初の量産ミッドシップ車、ルネ・ボネ ジェットをプロジェクトごと買い取って、1962年に自動車の分野に進出してきました。
マトラの野望は凄まじく、新興自動車メーカーでありながらV12エンジンを新規開発してF1とスポーツプロトタイプのレースに進出。短期間でのF1チャンピオン獲得とル・マン優勝という目標を掲げます。
1968年から本格的なF1参戦を開始し、フォードV8を搭載したマトラ インターナショナルが、早くも1969年に名手ジャッキー・スチュワートによりドライバーズとコンストラクターズタイトルを手にしてしまいます。
スポーツカーの分野でも66年からレース参戦を始め、68年からV12エンジン搭載マシンにスイッチ。そして72年から74年までマトラシムカMS670シリーズによる伝説の3連勝を成し遂げるのです。
そしてもう一つの巨頭がアルピーヌです。こちらもル・マンでは大人気のメイクスで、当時アルピーヌはラリーで活躍したA110とは別に、ル・マンではミッドシップのA210のシリーズを展開しました。
こちらは日本から、名古屋のベテラン医師にして日本を代表するアルピーヌ/ルノー愛好家として知られる加藤仁先生がエントリーされていた貴重なM63プロトタイプです。もちろん当時――1963年――、ル・マンを走ったワークスカーの一台で、積極的にレースに出場されている、“走る文化財”とも言える世界的に有名な個体です。
こちらの絵はA220と言われる3リッターのプロトタイプで、レースでは結果を残せませんでしたが、大きく迫力のある形状は大好きです。会場でスケッチしていると、オーナーのフランス人が喜んで見てくれました。
会場で夢のようなクルマたちと過ごした3日間。あまりに暑く火照った体をクールダウンするために何度も『ル・マン ミュージアム』へ行きました。このミュージアムは素晴らしい名車やミニチュアのジオラマなどで歴史を体感できる施設ですので、ル・マンに行かれた際にはぜひとも訪問されることをオススメします。
今年、2022年は『ル・マン クラシック』開催年。また名車たちの熱い闘いを期待したいと思います。次回からはボクが愛するパリの街並やクルマたちについて語っていこうと思います。引き続きおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。