近年、ラリー界においては二世ドライバーの活躍が著しい。WRCにトヨタ・ワークスから参戦する勝田貴元の父は勝田範彦、2020年に全日本ラリー選手権を制した新井大輝の父は新井敏弘というのは、周知のとおり。また、先週末開催されたWRC(世界ラリー選手権)第4戦ラリー・ポルトガルで勝利したカッレ・ロバンペラの父も、プジョー・ワークスで活躍したラリードライバーのハリ・ロバンペラだ。
2000年10月1日生まれのカッレ・ロバンペラは、現在21歳。彼が初めて注目されたのは、10年以上も前のこと。8歳の子供が、FRのトヨタ・スターレットで雪道を激走する動画が、世界的にバズったのである。年端もない子供が華麗にドリフトやドーナツターンを決める姿に、「天才少年登場!」とさまざまなニュースでも取り上げられることになった。
天才少年が、本当にトップドライバーへと成長できるのか。そんな疑問をよそに、2013年には13歳の段階で、運転免許がなくてもエントリー可能なラトビア選手権に参戦。運転免許を求められる公道では、コ・ドライバーが代わりにラリーカーをドライブしていた。その後、ラトビアや周辺国で経験を積み、17歳になった2017年、フィンランドにおいて特例により1年前倒しで運転免許を取得(フィンランドでは18歳から)。その年のラリーGBで、早々とWRCデビューを果たしている。
翌2018年は10代ながらもシュコダとワークス契約。2019年にはWRC下部カテゴリーの「WRC2 Pro」で5勝を記録し、タイトルを獲得した。この活躍を受け、19歳でTOYOTA GAZOO Racingに加入、トップカテゴリーへの昇格を決めている。
ヤリスWRCでの参戦1年目は勝利こそなかったものの、表彰台を含めコンスタントに入賞。すると、2021年第7戦ラリー・エストニアでついにWRC初優勝。「20歳290日」でのWRC初勝利は、チーム監督のヤリ-マティ・ラトバラが持っていたWRC最年少優勝記録「22歳313日」を2年以上も縮めるものだった。
今シーズン、ロバンペラは第2戦スウェーデンで勝利すると、第3戦クロアチア、そしてポルトガルと破竹の3連勝。未舗装イベントのポルトガルは、ライン上に積もった砂利掃除を強いられることから、先頭スタート(ポイントリーダー)が圧倒的に不利となる。そんな逆境を跳ね除けて、ロバンペラはラリー2日目にトップに立つと、チームメイトのエルフィン・エバンス(彼もまた二世ドライバー)を従えて、余裕の勝利を決めてみせた。
今シーズン、すでに3勝。現時点でランキング2番手のティエリー・ヌービル(ヒョンデ)に40点以上の大差をつけている。残り9戦で何が起こるかはわからないが、スノー、ターマック、グラベルと、全ての路面でスピードと強さを披露している上、21歳とは思えない冷静さも持ち合わせている。今のロバンペラに死角は見当たらない。
WRCドライバーズ選手権最年少タイトル記録は、故コリン・マクレーの「27歳109日」。たとえ、今シーズン王座を逃したとしても、この記録がロバンペラにより早晩破られるのは間違いなさそうだ。