初めてチタンと言う金属を知ったのは、「ニコンF2 Titan」という高級一眼レフだった。このカメラは日本光学工業株式会社(現・株式会社ニコン)の最高峰モデル、ニコンF2を冒険家の植村直己さんのオーダーで作られた「NIKON F2 ウエムラスペシャル」が元となっている。「NIKON F2 ウエムラスペシャル」は3台ほど作られた記録があるそうだが、現存するのは2台。もう一台は植村直己さんと共に今も眠る。
なぜチタンがカメラの外装に選ばれたのか、まずは軽さである。だがもっとも重要視されたのはチタンの熱伝導の低さかもしれない。熱伝導率の良い金属なら、あっという間に体温は奪われる。もちろん、マッキンリーでは素手で触ることはないのだろうけれど、皮膚が貼り付いてしまう恐れもある。僕はこちらが主たる目的であったのではないかと思えてしまう。
じつはチタンと言う金属は他の金属に比べて、人類にとってそれほど歴史は長くない。発見は1792年、純チタンの抽出は1910年である。その上に、大量抽出が実用化されたのは1946年以降である。
軽量で強度のあるチタンはクルマやバイクのアフターパーツとして、高額であるけれど手に入れられる。じつは僕自身、チタンという金属が大好きで、チタン製の腕時計を購入したこともある。所有している1100ccのバイクもエキゾースト、マフラー、ボルトまでチタン製に換えてある。
現在、以前に比べて手に入れ易くなったチタン。アウトドアの世界にも高額ではあるけれど、多く存在し始めている。ただし、チタンは熱伝導率が高くはないので、あまり調理器具には向かない。特に1点に集中する小さなバーナーヘッドでは、その当たる部分だけ高温になり食材を焦がすことになる。だが、軽いという魅力は絶大だ。調理に手こずったとしても、大好きなチタンを携えて、アウトドアに出てみたくなるではないか。軽いんだわ。硬いんだわ。これがすべて。
そこで、部分的に熱が食材に加わる対処法として、下に熱伝導率の良い銅板を敷いてみることにする。市販品でもステンレスのメッシュ素材のバーナーパットがある。これを使えば調理器具の底に平均的に熱を伝えられるのだが、まずはオリジナル、銅板を試してみることにする。
チタン製の飯ごうの底は、強度を出ためなのだろう、中央部が内側に凹んでいる。つまり中央部で銅板とは接触しない。飯ごうの周囲から加熱されるとベストな対流が起こる気もする。ところがそれは小さい方にはない。残念である。
シェラカップも新たにチタン製を導入した。今までの物はアメリカで作られた製品で重量は約80g。チタン製は約45gと約半分の重量だ。今までのシェラカップは取っ手が折り畳めない仕様なので、パッキングも楽になるだろう。
プレートは2枚、大小、大きさを分けての導入だ。TITAN MANIAと言うブランドだ。じつは表記されていたサイズよりも小さいのである。導入したMサイズは直径が約2cm小さく、Sサイズのプレートは約1cmほど小さい。深さは変らない。仕様変更があったのなら、しっかりと表記してもらいたい。このあたりは大きすぎるとパッキングに入らないし、小さいと盛りつけや調理に影響する。
マグカップは以前から使用しているこの中空のチタン製。スノーピークの一番小さいモデルである。正直購入する時に高価なのでかなり迷ったけれど、未だに新品の時と同じように存在している。
さて、最後はフライパンとして販売されていたものである。正直、これがお皿のプレートとどこが違うのか、見た目ではわからない。本来なら取っ手が付いているのがフライパンなのだが、取っ手なしのフライパンは珍しいので、おお!と魅了されての導入。このフライパンを使う時も下に銅板を敷いてみた。高温で加熱したい食材は銅板のある場所あたりに置き、ゆっくりと加熱したい食材は銅板のない場所で焼く。上手くいけばチタンの熱伝導率の低さを利用してちょうど良い焼き具合になるかもしれない。
正直言ってしまえば、クルマでの移動がほとんどである。軽さやコンパクトなことはそれほど重視しなくてもよいのだ。だが、それなら、家庭で使う調理器具を持ち出すのが一番使い勝手がよい。特別にアウトドア用品を手に入れるのだから、こだわってみるのも楽しみのひとつだ。廉価なものをだましながら使うのも良し。気を使う金属を選びそれを楽しむのもまたよしである。
※純チタンとチタン合金との差はあるのですが、ここでは一律にチタンと呼ばせて頂きます。導入した商品にその表記がないものもありますので、ご了承ください。
実際にチタン製フライパンと飯ごうを使ってみる
新規導入したチタン製のフライパンと飯ごうを使って実際に料理をしてみよう。