トヨタは、6月9日から13日までイタリア・ブレシアを拠点に開催される「1000 Miglia 2026」の関連イベント「1000 Miglia Gran Turismo Experience 2026」に5台の歴史的モデルを出走させる。

参加車両は以下の5台だ。

1955年型トヨペット・クラウンRS

・初代トヨペット・クラウンRS型
・トヨタ・スポーツ800 UP15型
・トヨタ2000GT MF10L型
・スープラ JZA80型
・レクサスLFA

トヨタ・スポーツ800 レースでも大活躍した
スープラ JZA80型
レクサスLFA
トヨタ2000GT

いずれもトヨタの歴史を語るうえで欠かせないモデルだが、なかでも注目したいのは初代トヨペット・クラウンRSである。

なぜ初代クラウンなのか

クラウンRS

1955年に発売された初代クラウンは、日本初の本格量産乗用車として知られる。戦後復興の途上にあった日本で、「日本人のための乗用車を日本の技術でつくる」という挑戦から生まれたモデルだった。

その後のクラウンは日本を代表する高級乗用車へと成長するが、その原点となったのがこのRS型である。

豪州一周ラリーに挑戦するクラウンRS

また、クラウンRSはトヨタのモータースポーツ活動の原点の一台でもある。1956年にはロンドン―東京間約5万kmの長距離ドライブを敢行し、1957年には豪州一周ラリーに日本車として初めて参戦して完走を果たした。

そして、その1957年こそが、オリジナルのミッレミリアが最後に開催された年でもある。

フェラーリやアルファロメオ、メルセデス・ベンツがイタリアの公道で栄光を争っていた時代、日本の自動車メーカーはまだ世界への挑戦の入口に立ったばかりだった。その時代に誕生したクラウンが70年後のいま、再び世界の舞台へ向かうことには、日本の自動車産業の歩みそのものが重ね合わせられる。

そもそもミッレミリアとは?

ミッレミリア(Mille Miglia)は、1927年から1957年までイタリアで開催された伝説的な公道レースである。

名称はイタリア語で「1000マイル」を意味し、北イタリアのブレシアをスタートしてローマを往復し、再びブレシアへ戻る約1600kmのコースで争われた。

当時はフェラーリやアルファロメオ、メルセデス・ベンツなどがしのぎを削り、モータースポーツ史に数々の名勝負を残した。しかし公道を高速で走行する危険性から、1957年の重大事故を機にレースとしては終了した。

現在の1000 Migliaは1977年に復活したヒストリックイベントで、1927~1957年のミッレミリアに出場した、あるいは出場資格を持っていた車両のみが参加を認められる。競技というよりもヒストリックカーによる耐久ラリーの性格が強く、「世界で最も美しいレース(The Most Beautiful Race in the World)」とも称される、自動車文化を象徴するイベントとなっている。

新設されたGran Turismo Experienceとは

今回クラウンRSが参加するのは、本戦とは別に2026年から新設された「1000 Miglia Gran Turismo Experience 2026」である。

これは、ミッレミリアと、リアルドライビングシミュレーター『グランツーリスモ』シリーズを手掛けるポリフォニー・デジタルが共同で企画した新イベントだ。

本戦と同じルートを走行しながら、参加資格をより幅広く設定し、歴史的価値を持つさまざまな名車が参加できるようにしたのが特徴である。

ミッレミリアにはこのほかにも、BEVやHEVなど代替燃料車を対象とした「1000 Miglia Green」、1958年以降に製造されたフェラーリのみが参加できる「Ferrari Tribute 1000 Miglia」などの関連イベントが存在する。

Gran Turismo Experienceは、そのなかでも「より多くの歴史的名車を実際に走らせたい」という発想から生まれた新たな試みと言える。

日本の自動車文化を世界へ

ミッレミリアは単なるクラシックカーイベントではない。自動車史そのものを未来へ受け継ぐための“動く博物館”である。

そこに参加するということは、車両を所有しているだけでは足りない。歴史的価値を理解し、整備し、実際に走らせ続ける体制と意思が求められる。

フェラーリやアルファロメオにとってミッレミリアが自らの歴史を語る舞台であるならば、トヨタにとっての初代クラウンRSもまた同じ意味を持つ。

70年前、日本のモータリゼーションの原点として誕生した一台が、いまイタリアの公道を走る。その姿は、日本の自動車産業が歩んできた歴史そのものと言えるだろう。