最大のニュースは、特殊コーティングを施したブレーキローターとの組み合わせによって、PM10のブレーキ粒子排出を最大65%削減すると発表したこと。さらに、最大制動トルクは30,000Nm。2027年の量産開始を予定しているという。

重要なのは、これは「環境対応ブレーキ」というだけではないこと。Euro 7では排気管から出る排出物だけでなく、ブレーキやタイヤなどの非排気系粒子も規制対象になるため、ディスク/パッドという摩擦材そのものから発生する粒子をどう減らすかが技術課題になっている。ZFはその対策としてMAXX Uniperを位置づけている。また、MAXX UniperはZFが30年以上開発してきたシングルピストン式エアディスクブレーキの次世代型で、従来型から単にローターを変更した製品ではないことに注目。ZFによれば、この方式は累計1200万ユニットを販売している。

あらためて、ブレーキという装置について。ディスクブレーキというフォーマットではローターとパッドの摩擦で制動力を発揮する構造で、その摩擦で微粒子が発生する。「ホイールが真っ黒になる」のは、パッドやローターの摩擦によって発生した摩耗粒子が付着するためだ。つまりディスクブレーキでは、制動するたびに摩擦界面から微粒子が発生している。MAXX Uniperではローター側の表面をコーティングすることで、摩擦界面から発生する粒子を抑える方向へアプローチしていて、ZFの発表値では、PM10排出量を最大65%削減したとしている。

コーティングによって摩耗粉が抑えられたときけば、心配になるのはブレーキ性能である。要するに「粒子を減らすために摩擦性能を犠牲にしたのでは?」ということ。そのような懸念を払拭するためか、ZFは「最大制動トルクは30,000Nm」という数値をあわせて発表した。ただし、65%削減と30,000Nmが同一試験条件で得られた値なのか、削減率の測定条件は何かまでは、今回の公式リリースからはうかがえず、ここは実際の製品化を待つ必要があるだろう。

これらに加え、目立たないが重要な技術がもうひとつ。bidirectional adjusterと称する技術が発表されていて、これはブレーキパッドとローターの間のランニングクリアランスを調整する機構。無用な引きずりを抑え、パッドの均一な摩耗を助けることで、ブレーキの寿命や整備性にも寄与する技術だ。

前述のとおり、MAXX UniperはZFが長年使ってきたシングルピストン式。ブレーキの基本機構そのものを刷新するのではなく、長年量産してきたシングルピストン式をベースに、ローターの摩擦面・周辺構造・制御機構をアップデートして、従来とは別の要求=非排気系PM低減に対応したところがポイントである。ZFがパイオニアと位置づける、30年以上にわたり培ってきたシングルピストン式エアディスクブレーキ技術と、1,200万台の販売実績を基盤に開発したことで、既存の量産技術基盤を捨てずに次の規制要求へ持っていくというメッセージと捉えることができるだろう。