センサー構成は現行アイサイトXと同じ。ソフトウェアで高度運転支援を進化させる

ハードウェアを変更せずにアフォーダブルなコストで支援範囲を拡大させる。

スバルは2026年10月17日に栃木県佐野市のスバル研究実験センター(SKC)で「SUBARU 開発戦略 説明・取材会」を開催した。この場では自社開発BEV(電気自動車)で取り入れた開発変革、次世代ADAS、次世代プラットフォーム、次世代パワーソース(新エンジン/BEV)、制御統合ECU/E-Eアーキテクチャーなどの説明と試験車の試乗体験があった。本稿では「次世代ADAS」についてレポートする。

テストコースに用意されていたのは現行レヴォーグのアイサイトX搭載車だった。システムを構成するセンサーは広角化したステレオカメラと左前側方、右前側方、左後側方、右後側方の各レーダー、それにリヤソナー。これに3D高精度地図データ(HDマップ)と高精度GPS(GNSS)情報を組み合わせて活用することにより、安全で正確な高度運転支援機能を実現している。

スバルは一般道でのハンズオフを可能とする自動運転レベル2++へ進化させることを視野に入れ、開発に取り組んでいる。全車速ハンズオフの車速設定上限は135km/h。

次世代アイサイトのコンセプトは、「トップクラスの安心をアフォーダブルな価格で多くのお客様に届ける」こと。そのため、アイサイトXのハードウェア(センサー構成など)はそのままにソフトウェアの進化で既存機能を拡大したり、新たな機能を付加したりする考えである。

全車速ハンズオフから一般道へ。次世代アイサイトが目指す運転支援の領域

現行機の場合、全車速ハンズオフが可能なのは渋滞時のみで、車速は50km/h以下。これが全車速対応になることで自動運転レベル2+が実現する。国内のアイサイトX購入率は非常に高い。

現在のアイサイトXは自動運転のレベル区分にあてはめるとレベル2に相当する。システムがアクセル・ブレーキ(前後方向)とハンドル(左右方向)を同時に制御して運転を支援するのがレベル2。レベル2+はドライバーが運転の主体となる運転支援であることに変わりはなく、高速道路などの自動車専用道路でドライバーがハンドルから手を離すハンズオフが可能となる(アイサイトXは渋滞時にハンズオフが可能なので、部分的にレベル2+)。スバルはこれを一般道でのハンズオフを可能とするレベル2++へ進化させることも視野に入れて開発に取り組んでいる。

今回の試乗プログラム

試乗車で体感できたのは①全車速域ハンズオフアシスト(完全レベル2+)、②ハンズオフのままアクティブレーンチェンジ、③ドライバー異常時対応システムで路肩まで退避、④アクティブレーンチェンジでシステムが判断して自動で追い越し、の4点である。

現行アイサイトXの場合、ハンズオフアシストができるのは渋滞時のみだった。これが全車速域(設定上限135km/h)に適用範囲を拡大。アクティブレーンチェンジアシストは現状、作動中にハンドルを保持している必要があるが、次世代アイサイトではウインカーレバーを操作した後にハンズオフできるようになる。また、同一車線上にいる遅いクルマを検知した場合は、ハンズオフ状態のままシステムが自動で判断して追い越しを行なってくれる。

ドライバー異常時対応システムは現行機では自車線内で停止していたが、次世代アイサイトでは路肩まで寄せて停止する。実際に市販車に適用する場合は、今回試乗車でデモンストレーションした機能をベースに支援範囲をさらに拡大するという。

135km/hまでハンズオフ。ウインカー操作だけで車線変更も可能に

次世代アイサイトの試乗は現行レヴォーグで実施。どの新機能も(ドライバー操作が起点になる機能も含めて)応答が良く、クルマの動きはスムーズ。安心してシステムに任せられる。

試乗車ではまず全車速ハンズオフを体験した。筆者の場合、この機能は他メーカー車で体験済み。高速道路でずっとハンズオフでいられる快適さや、身体的にも心理的にも負荷が軽減されるのは体験済みである。それだけに、アイサイトが渋滞時だけでなく全車速でハンズオフ可能になるのは大歓迎だ。

次に、「ウインカーレバー操作だけでハンズオフレーンチェンジ」を試した。ウインカーレバーを浅押ししても全押ししても作動するが、試乗車が現行モデルそのままだったので浅押ししづらいのが難だった。浅押しのつもりが全押しになり、押した先で固定されてしまう。浅押しの場合はレーンチェンジが終了するとウインカーは自動で消灯するが、全押しの場合はレーンチェンジ終了時に自らウインカーレバーを戻す必要がある。浅押ししやすいウインカーレバーの必要性については、技術者も認識しているようだった。

ウインカーレバーを操作した際のクルマの反応に遅れがなく即座にレーンチェンジに移行してくれるのがいいし、動きもスムーズ。積極的に使ってみたいと思わせる完成度だった。

ドライバーが意識を失ったら? 自車線停止から路肩退避へ進化

アイサイトX作動後にドライバーが急病などで運転できなくなったことをシステムが検知した場合(ドライバーモニタリングカメラでドライバーの表情を監視している)、まずメーターに警告が表示される。それでも反応がない場合はシステムが強めのブレーキ(パルスブレーキ)を瞬間的にかけて覚醒を試み(計2回)、それでも反応しない場合はハザードを点滅し、ホーンを慣らしながら減速する。

試乗車はその後、ゆっくりと路肩に寄って停止した。HDマップの情報とステレオカメラで得た情報を突き合わせて路肩の状態を確認し、ハンドルやブレーキを制御してスムーズに路肩に寄り、停止する。路肩の幅が充分に広い場合は問題ないが狭い場合はどうするのかなど、試行錯誤している段階だという。自車線で停止するより路肩に寄せて停止してくれたほうがより安全なのは言うまでもない。

自動追い越し作動時の動きもスムーズだった。追い越しのタイミングは車間距離の設定によって異なる。車間距離の設定が長い場合は手前側から追い越しを仕掛けるし、設定距離が短い場合は先行車に近寄ってから追い越し動作に入る。いずれにしても動きはスムーズでクルマ任でも不安はない。追い越し後、元の車線へ戻る動きもスムーズで、とにかく一連の動きはスムーズだった。

ただ、勝手に車線変更されては困る状況もあるだろうと感じた。先行車との速度差が小さい場合など、自車線にとどまっていたい気分のときもあるはず。システム側からの提案に対し、ドライバーが承認する形でレーンチェンジを実行してほしい。どのような提案方法がいいのか、どのような承認方法がいいのかについては課題として認識しているし、さまざまに検討中だという。

繰り返しになるが、アフォーダブルな価格で機能を付加することが次世代アイサイトのポイント。スバル車がより安心・安全なクルマになる準備は着々と進んでいる。