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フォレスターがモデルチェンジを受け、五代目へと進化した。パッと見た限りは、いわゆる先代からの正常進化といった感じだが、乗ってみれば誰もが大きな違いを感じ取ることができるはず。その原動力となっているのが、SGPと呼ばれる新世代のプラットフォームの採用だ。本記事では、そのSGPがもたらした恩恵にテーマを絞ってインプレッションをお伝えしたいと思う。
SPGとは軽量かつ高剛性な新世代プラットフォームで、現行のインプレッサから順次採用されている。一番の特徴は、まず従来では進行方向に対して真っ直ぐに通されていたフロアサイドフレームをなだらかな形状としつつ斜めに配置することでリヤサイドフレームと連続性を持たせていること。フロアトンネル(フロア中央)の両側にもフレームを通すことで、荷重の伝達経路を多重化し、高い剛性と衝突安全の向上を実現している。
また、Aピラーとフロントドアピラーを結合し、そこからストラットタワーまでを結ぶインナーパネルを配置して、フロントの曲げ剛性を向上させている。リヤまわりは環状骨格構造とすることで、こちらも車体剛性の向上の一助となっている。さらにリヤサスまわりも含めたリヤセクションには構造用接着剤を採用し、操舵に対する応答性や振動減衰の向上に寄与している。
今回の試乗は、新型と旧型を同じコースで乗り比べるチャンスに恵まれた。プラットフォームの刷新という、わかったようでわからない進化の恩恵を感じるにはこれ以上の好機はない。
まず旧型に乗り、その直後に新型に乗り換える。その進化っぷりは走り出した瞬間から感じ取れた。旧型は路面の荒れた部分の凹凸をドライバーに伝えすぎる感があるが、新型は雑味を濾過し、必要な情報だけをドライバーに伝えてくるのだ。
速度を上げていくと、旧型がロールを無理に抑え込んでいるのに対し、新型は素直に一定のロールを許容する。だらしないわけではなく、旧型で突っ張っていたアシが新型ではよく動くようになったのだ。ブレーキングでノーズが沈み込み、そこからステアリングを切り込んでいくにつれてロールが発生するという、その一連の動きが、旧型ではひとつひとつ切り離されていたような感覚だったのが、新型では自然とつながるようになったイメージだ。左右の切り返しなどでの動きが自然で安心感が高く、なにより乗り心地もいい。同乗者が感じる恩恵はドライバーよりも大きいかも知れない。
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このスッキリとしたハンドリングと乗り心地の進化に関してわかりやすく例えるなら、まるで古くてカチカチのタイヤから新しいタイヤに履き替えた瞬間のような感じである。
念のためにタイヤをチェックしてみると、旧型が履いていたタイヤの製造週は2018年の第21周目で、新型は第14周目と、ほとんど違いはなかった。それぞれのタイヤがどんな使い方をされてきたかまではわからないが、トレッド面を見る限り、ほとんど大差はないと思われた。ちなみに旧型のオドメーターは7520kmで、こちらも経年劣化を考慮するほどの距離ではない。
もちろんサスペンションのジオメトリーやセッティングの適正化による部分もあるだろう。だが、それにしたって走り全体の質の向上が著しく、プラットフォームの刷新に要因を求める以外にない。これは街中でのちょっとした試乗でも感じ取れるほどの違いだから、興味がある方は迷わずディーラーに足を運んでみていただきたい。
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また、SGPの採用はパッケージングにも恩恵をもたらしている。テールゲート開口部の幅が1300mmと大きく取られ、一般論でいえば剛性に関しては不利に働くはずだが、SGPのおかげでまったく問題なく実現できたという。ホイールベースは30mm延長され、キャビン(主に後席のフットスペース)やラゲッジスペース(15L増大の520L)も拡大も実現している。
正直に告白すると、インプレッサでSGPが初採用されたとき、筆者はその進化をしっかりと感じ取ることができなかった。いいクルマだとは思ったけれど、どの部分がSGPによってもたらされたのか自信をもって説明することはできなかった。さらには「旧型もいいじゃない」などと呑気なことも言っていた。
今回、なぜ明白に旧型との進化の違いを感じ取れたのかはわからない。旧型との直接比較が効いたのか、それともスバルがSGPに合わせたサスペンションなどのセッティングをモノにしてきたのか……。まぁだからこそクルマというものは奧が深く、面白い乗り物なのだろう。
みなさんもご自身の手でSGPの底力を体感してみてはいかが?
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