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【試乗記:ホンダ・クラリティ PHEV】モーター走行だけじゃない! エンジンも力強くてビックリ

  • 2019/08/08
  • ニューモデル速報
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異なるパワートレーンを搭載することを想定して生まれたクラリティ。その言葉通りにFCV、EV、そしてPHEVが登場した。動力にエンジンが加わったことで走りはどう変わるのか。その結果は望外の魅力に満ちていた。

REPORT●石井昌道(ISHII Masamiti)
PHOTO●平野 陽(HIRANO Akio)/井上 誠(INOUE Makoto)

※本稿は2018年7月発売の「ホンダ クラリティPHEVのすべて」に掲載されたものを転載したものです。車両の仕様や道路の状況など、現在とは異なっている場合がありますのでご了承ください。

燃料電池、電気と並ぶ3つめのパワートレーン

 初めてクラリティに出会ったのはもう10年以上前のことになる。現行のクラリティFUEL CELLの前身であるFCXクラリティの、そのまた原型となったFCXコンセプト。それまでFCV(燃料電池車)と言えば嵩張るユニット類を収めるべく背高で無粋なルックスというのが相場だったが、FCXコンセプトは低重心なセダンで空力を強く意識したエアロフォルム。いまのようにクーペルックのセダンがプレミアム・ブランドの一ジャンルとなる前だったこともあり、とてつもなく新鮮に映ったものだ。

 過去のCR-Xや初代インサイトなど、ホンダが環境ソリューションを考慮して生み出してきたモデルは、技術に懸ける情熱が溢れるのか、どれも機能を超えた美しさや潔さがあるが、中でもFCXコンセプトのオーラは際立っていて、艶めかしく、セクシーでさえあった。

 そこからホンダの環境技術の象徴として育まれてきたクラリティは、FUEL CELL、EV、そして今回リリースされたPHEVと3種類の先進パワートレーンを搭載するシリーズとして確立された。本格的な普及はまだ不透明なFUEL CELL、利便性に課題が残るEVに比べてPHEVは現実的。だから先進性では一歩譲るかと思いきや、そうとも言い切れない。FUEL CELLとEVが電気モーターだけで走るのに対してエンジンの力を直接タイヤに伝えるモードを持つゆえ、メカニズムとしては複雑で奥深い。このエンジンドライブモードの他、バッテリーのSOC(充電状態)が十分にあればEVドライブモード、一定量まで減ればハイブリッドドライブモードと3つのオペレーションがなされ、さらにSOCをキープする、あるいはチャージするためにエンジンの発電状態を変化させもする。持ちうるエネルギーをいかに高効率に使うか、ホンダの英知がとことん詰め込まれたのがSPORT HIBRID i-MMD Plug-inと呼ばれるシステムを搭載したクラリティPHEVなのである。

 試乗はSOCが上限に近いところから行なった。その状態ではEVドライブモードが基本となる。アクセルを床まで踏み込んで最強の加速を要求すればバッテリーからの持ち出しだけでは電力が足りなくなり、発電のためにエンジンが掛かるが、その手前でも十二分に速い。

 クラリティPHEVには、エンジン車のタコメーターに相当するパワー/チャージメーターがある。パワー側は上半円になっていて8つの目盛りが刻まれる。アクセル全開では一番右の8目盛りまで振り切れるが、SOCが十分に高いときはエンジンが掛からない状態でも6と7の間ぐらいまではいく。そこまではメーター内のブルーのゾーンとされ、超えるとエンジン始動。メーターを見てもわかるのだが、実は右足でもエンジンが掛かる境目はわかるようになっている。ペダルがクッと重くなるクリック感があるからだ。エンジン車のキックダウンスイッチを用いた物理的なものなので、モードやSOCなどで違いがあり、必ずしもエンジンが掛かる瞬間にクリックがくるわけではないが、SOCが十分でECONで走っていればほぼぴったり。NORMALでは、クリック感より前でエンジンが掛かるがクリックとともに回転数が上がる。人はハイブリッドカーに乗り慣れるとなるべくエンジンを作動させないで運転することに快感を覚えるようになるものだが、クラリティPHEVはその心理がよくわかっている。

 試しにアクセル全開と、エンジンが掛からないギリギリでの加速を比べてみたが0-50㎞/hはほぼ同じで4〜5秒、それ以上になると差が開き、全開で約9秒のところ、エンジンが掛からないようなアクセル操作だと約12秒だった(手動計測であくまで参考)。とはいえ、EVドライブモード内でも速さは十分で10㎞/h以上でも苦もなく速度を高めていく。80〜100㎞/hの高速域でも巡航ならばパワーメーターの1目盛りとちょっとで事足り、2になればスルスルと加速。3ならば交通の流れをリードできそう。合流や追い越しなどの急加速でも4〜5で十分だ。

 プラグインハイブリッドのEVドライブでこれだけパフォーマンスが高いのは異例と言えるが、それはアコードPHEVでの経験を踏まえ、バッテリーやPCU(パワーコントロールユニット)などをブラッシュアップしてきたからだ。アコードPHEVに対してバッテリー出力は1.4倍、PCUのEV出力は3.3倍。バッテリー容量は17.0kWhで約4倍のEV使用容量となり航続距離は100㎞を超える。大容量化は電気の使い方に余裕をもたらし、パフォーマンスにも貢献。また、小排気量なエンジンでシステムを成立させることができたのも、電気の出力と容量が大きいからだ。

 日本は電動車先進国なので電気モーターに特有の魅力があることを理解している人も少なくないだろう。走り出しから大トルクで押し出していく感覚、言わずもがなの静粛性。古くから高級車のエンジンは大排気量にして低回転・大トルク型かつ静かな特性を狙い、良くできたそれは「まるで電気モーターのよう」と形容されてきたことからもわかるように、EV走行はハイパフォーマンスかつ贅沢な雰囲気に満ちている。

 ただし、電気モーターの特性そのままに走らせるだけでは、走り出しは強力だけれど、速度が上がるほどにトルク感が薄れていき、どこかで頭打ちになる残念な感覚になりがち。ホンダも、過去のEVやFCのコンセプトカーなどではそういった傾向にあったが、FCXコンセプトから独特の味付けをするようになった。走り出しは十分に力強く、速度が上がってもそれが持続する、実に伸びやかなフィーリング。クラリティPHEVにもそれはしっかりと受け継がれ、磨かれている。電気モーター特有の贅沢な加速感がどこまでも続いていくのだ。それもエンジン車と違ってレスポンス遅れなどまったくなし。右足の動きと望みの加速感がぴたりとシンクロして気持ちいいことこの上ない。

PHEVのエンジンは、1.5ℓアトキンソンサイクルDOHC i-VTEC。最大熱効率は世界でも有数の40.5%に達している。これにアコードPHEVのシステムをベースに大幅な小型軽量化と高トルク・高出力化された電動ユニットを組み合わせる。
空気の流れをそのままかたどったような流麗なボディラインはクラリティだけのものと言っていいだろう。
フルLED化によって生み出される先進感はFCVの登場から2年を経てもなお変わることはない。

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