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ボルボS60をトヨタ・クラウン、メルセデス・ベンツCクラスと比較試乗〈ライバル車インプレッション〉

  • 2020/03/29
  • ニューモデル速報
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日本車のセダンモデルが減少する中、それでも日本のセダン市場は、ほぼ安定した販売状況にある。それは欧州セダンの人気に牽引されているためでもあるが、その中にあっても、相変わらずトヨタ・クラウンの存在も極めて大きい。ここでは日欧セダンの両雄、メルセデス・ベンツCクラスとトヨタ・クラウンを引き合いに、S60の存在感をじっくりと確認していこう。

TEXT : 大谷達也 (OTANI Tatsuya)
PHOTO : 中野 幸次 (NAKANO Koji)/花村英典(HANAMURA Hidenori) / 水川尚由(MIZUKAWA Masayoshi)

※本稿は2020年1月発売の「ボルボS60のすべて」に掲載されたものを転載したものです。

コンセプト・クーペのDNAを忠実に継承した1台

 日独の定番セダンとの比較によりボルボS60のグローバルなポジションを再確認しようというのが、このページの主旨である。ライバルとして引き合いに出したのはメルセデスCクラスとトヨタ・クラウン。どちらもこのクラスのスタンダードであるといって間違いないだろう。

 3台を並べてまず気づくのは、S60の優れたデザイン性だ。XC90に始まる新世代ボルボをデザインしたのは、前チーフデザイナーで現代ポールスターの代表を務めるトーマス・インゲンラート。その彼が、新世代ボルボのデザインコンセプトを初めて示したのが2013年フランクフルトショーに出品したコンセプト・クーペだった。最近のボルボはどのモデルもこのコンセプトを忠実に守っているが、現在、日本で発売されているボルボのなかで、コンセプト・クーペと同じ「車高が比較的低いクーペないしセダンで、独立したトランクルームを持っているモデル」は今回登場したS60のみ。それだけに、コンセプト・クーペの遺伝子をもっとも厳密に受け継いでいるといえるだろう。

 もっとも、セダンといってもS60のスタイリングはクーペ的だ。長いフードに続くキャビンは比較的コンパクトに見えるうえ、リヤウィンドウを強く傾斜させてクーペ・ライクなフォルムを実現。セダンとしては短めのリヤデッキもコンセプト・クーペを彷彿とする。リヤフェンダーに力強い張り出しを設けた点もコンセプト・クーペに似る。

 そうした細部の処理とともに重要なのが、S60の伸び伸びとしたプロポーションだ。ホイールベースを2870㎜と長めにとったうえで、前輪駆動系モデルとしてはフロントオーバーハングをギリギリまで切り詰めることで、ダイナミックな走りを予感させるスタイリングを作り上げた。最近、誕生したプレミアムセダンのなかでも傑出した格好よさといえる。

 さらに、近年のボルボで特徴的なのが「選択と集中」を徹底して行なっている点である。

 プラットフォームはSPAを主力に置き、CMAはXC40のみに採用。エンジンは4気筒 2.0ℓ1つに絞り、ここにターボチャージャー、スーパーチャージャー、プラグインハイブリッドなどのデバイスを組み合わせることで様々な市場の要求に応えている。

 こうしてシャシーやドライブトレインに費やす開発コストを最小限に抑えたうえで、投資すべき領域には思い切って予算をつぎ込む。先ほどのエクステリアデザインはその象徴だろうし、インテリアも質感とデザイン性が際立って高い。特に、インスクリプションと呼ばれるグレードで内装色のブロンドを選択すると、キャビンはオフホワイト系のフェイシアで包まれ、知的でモダンで清潔な北欧風デザインが完成する。

 しかも、インテリアに用いられている素材のクォリティ感も文句なし。この辺りにもいかにもコストがかかっていそうに思える。

T6ツインエンジン。PHEVらしく音もなく動き出すその存在感は、まさに次世代のサルーン。軽快さとシャープさの両面を併せ持ち、ハイレベルに磨き上げられた運動性能が光る。

比類なき安全装備の標準化で示されるボルボの高い安全性

 もうひとつ、ボルボが集中的にコストをかけているのが安全装備である。とりわけ“電子の目”を駆使した先進運転支援装置はメルセデス・ベンツと並んで最先端を突き進んでいる。新型S60ではシティセーフティに対向車対応機能が追加され、対向車との正面衝突時における被害軽減に貢献する。すでにボルボの各モデルには「これでもか」というくらいに安全装備が備わっているが、それでも進化の手を緩めないところにボルボの理念が現れているようだ。

 今回、私が試乗したS60はT4モーメンタム、T5インスクリプション、T6ツインエンジンAWDインスクリプションの3台。T4は最高出力190㎰の直42.0ℓターボエンジンを積むもっともおとなしい仕様で、グレードもベーシックなモーメンタムとなる。価格は489万円。T5インスクリプションはT4の高過給圧版で、最高出力は254㎰に跳ね上がる。グレードはより高級なインスクリプションとなり、価格は614万円。T6ツインエンジンはT5をベースにPHVとしたような仕様で、後輪をモーターで駆動する4WD=AWD。エンジンにはターボチャージャーに加えてスーパーチャージャーも装備するが、最高出力はなぜかT5より1㎰だけ低い253㎰となる。価格は779万円だ。

 これと比較したのは、トヨタ・クラウンが2.5ℓハイブリッドを積むGと呼ばれるグレードで、価格はT4とT5の中間にあたる572万5000円。いっぽうのCクラスは、実際にライバルになりうるのはC200ローレウス・エディションだろう。この場合、エンジンは48Vマイルドハイブリッド付きの直4 1.5ℓターボとなる。価格は586万円。本当は先ごろ追加されたプラグインハイブリッドモデルのC300e(679万円)が格好のライバルとなりそうだが、今回はあくまでも象徴的なモデルとしてC200との比較とさせていただく。

 試乗コースは雨の箱根。まずはS60 T4で走り出す。

 かつてボルボといえば柔らかめのバネをサスペンションに使っていて乗り心地はソフト、ハンドリングもスタビリティ重視でどちらかといえばおっとりした性格だったが、XC90以降の新世代ボルボは大きく方向性を変え、よりシャープでスポーティなハンドリングを手に入れている。大きな枠組みで捉えればS60の足回りもこの延長線上にあって、ステアリングの遊びはほとんど感じられず、切ればすぐ反応するレスポンスの良さを示す。ただし、T4のサスペンションは、よりスポーティな上級モデルに比べればややソフトめで、それだけに路面から伝わるゴツゴツとした感触は軽く、相対的に快適性は高い。「S60で乗り心地重視ならまずはT4を試して欲しい」 これが私からのアドバイスだ。

 それでもタイトコーナーが続くワインディングロードでは小気味いいレスポンスを発揮。もちろん、いわゆるスポーツセダンほどの鋭敏さはないが、これが人間の自然の感覚と馴染んでむしろ扱いやすいと感じる。軽いロールを伴うコーナリングフォームも、タイヤのグリップ状態をつかむのに役立ついっぽう、絶対的なロール量やロールスピードはよくコントロールされているので鈍いとも怖いとも感じない。「たまにはワインディングロードも走りたい」という向きにはちょうどいい設定だろう。

 それでも4本のタイヤからあますことなくグリップを引き出すサスペンションの性能は文句なしに素晴らしく、前輪駆動であるにもかかわらず登りのタイトコーナーで強めにスロットルペダルを踏み込んでも前輪のグリップが失われることは皆無。それどころかトラクション・コントロールさえ作動しなかったのだから、トラクション性能は恐ろしく高いといえる。いっぽうでリヤのグリップも極めて良好で、ステアリング特性としてはごくごく軽いアンダーステアに終始した。

 最高出力190㎰のエンジンは低中速トルクが厚めなうえにアクセルを踏み込んだ直後のモタツキ感が薄く、パワー感は十分以上。トップエ
ンドまで引っ張っても安っぽいノイズを響かせない点も好感が持てる。
 総じてS60 T4はスポーティなハンドリングと良好な乗り心地を高いレベルで両立した佳作である。しかも、内外装の高級感が及ばないだけで、安全面を含めた機能性では上級モデルとまったく変わらない。それで489万円は実にお買い得だと思う。

T6の仕立てが明確化するS60 のキャラクター

 続いて試乗したのはプラグインハイブリッドを搭載したS60 T6インスクリプション。S60の現行ラインナップでは実質的にフラッグシップに相当するグレードである。実は、私はこの試乗車が下ろしたてだった当時に一度テストしたことがあるが、まだ走行600㎞ほどで足回りに強いフリクション感を残していた当時に比べれば、オドメーターが2600㎞を越えた現在は実に滑らかな乗り心地を示し、T6の快適性を再認識させられることになった。

 ただし、単純な“硬い”“柔らかい”でいえばT6はT4よりも間違いなく“硬く”、それゆえハンドリングはさらにシャープ。それ以上に印象的なのが前後の重量バランスで、センタートンネル内にPHV用のバッテリーを積んでいるだけにリヤにもしっかり荷重がかかる上に電制AWDのため、後輪駆動を思わせる安定した姿勢でコーナーをクリアできるのだ。T4よりソリッドな足回りゆえにロールも軽めだが、こちらも前後のグリップバランスが良好で安定したハンドリングを引き出せることを特筆しておきたい。

トヨタ・クラウン。その静粛性の高さには脱帽。独自の存在感あるデザインは当初賛否あったが、現在ではらしさにまで昇華。新世代の6ライトスタイルがこれまでとは異なるライフスタイルを見せる。

  エンジンと電気モーターの組み合わせとなるパワートレインは絶対的なパワー感以上にスロットルレスポンスがシャープ。これには、ふたつの過給器と電気モーターの鮮やかな連携プレイが大きく寄与しているはずだ。

 いっぽうのT5は、T4とT6の中間的な位置づけにあると考えて間違いない。足回りの設定がT4より硬めなためハンドリングのレスポンスは良好。しかもエンジンのピークパワーはT6に匹敵するので、フルスロットルにすれば豪快な加速を示す。したがって高速道路でのクルージングはお手のもので、そうした走り方こそT5がもっとも得意とするフィールドといえる。敢えて弱点を挙げれば、タウンスピードで足回りが軽くバタつくことと、エンジン・レスポンスではハイブリッド・システムを備えたT6に及ばないことだが、バリューフォーマネーな点を含め、T5の総合力はかなり高いといえる。

 次にクラウンに乗り換えると、ロードノイズがほとんど耳に届かないキャビンの静けさにほっと心が安らぐ。路面の小さなギャップだったらきれいにショックを吸収する足回りのソフトさもクラウンならでは。ハイブリッドシステムの効率が高いことは驚異的で、3台のS60がいずれも10〜11㎞/ℓだったのに対して、クラウンは都内から御殿場までの移動で19㎞/ℓに迫る燃費をマーク。圧倒的な省燃費性を示した。

 ただし、雨の箱根はクラウンが得意とする舞台ではない。ハードコーナリングを試せばロールが大きめで機敏なハンドリングはあまり期待できない。それ以上に気になったのがグリップレベルで、ペースを上げていくとフロントタイヤやリヤタイヤのグリップが抜け、トラクション・コントロールやスタビリティ・コントロールが作動し始めた。これは単にスポーツ性能だけでなく、アクティブ・セーフティという面から見ても残念な結果だったといわざるを得ない。

 メルセデス・ベンツCクラスは、およそ1年前に大規模なマイナーチェンジを受け、ドライブトレインとシャシーが大幅に見直された。特に印象的なのが足回りの見直しで、スポーティさと快適性をより高い次元で両立する改良が施された。その方向性は全般的にS60と近いが、軽快感がより強調されているCクラスに対し、S60はスタビリティ感ないしどっしり感がより強いように思われた。ただし、絶対的なグリップレベルや前後バランスの点ではCクラスもS60に匹敵するレベルにあると思う。

 S60に対してややビハインドを負っていると思われたのがC200のドライブトレイン。こちらはベルトドライブの48Vマイルドハイブリッドを用いてエンジンのレスポンスを改善しており、排気量1.5ℓとしては力強さにも不満は覚えないのだが、やはり排気量2.0ℓのS60は全般的に余裕があって力強い。また高回転域まで引っ張ったときのノイズレベルでもS60がC200を凌いでいるように感じられた。

独自のスタンスを確立したボルボ。DセグメントのS60も重厚な存在感を持つ。

S60、クラウン、Cクラスの3台は、静粛性や省燃費性に特化したクラウンのみ立ち位置がやや異なるものの、スペースユーティリティの面を含め、S60とCクラスはかなりの好敵手といえそうだ。それを承知で敢えてS60のアドバンテージを拾い上げるなら、500万円弱から800万円弱までの価格帯をきめ細かくカバーしたモデルラインナップと、現代的で美しいデザインにあるような気がする。さて、アナタならどの1台を選ぶだろうか?

カンパニーカーから、パーソナルカーへとシフトした印象も強いクラウン。カンパニーカーとしての根強い人気は維持していることからも、その戦略は正しかったともいえるかもしれない。
定番中の定番ともいえるFRセダンのメルセデス・ベンツCクラス。FR系の末っ子ながら個性は明確。
T5インスクリプション

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