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蝶のように舞い蜂のように刺す! 約2.5トンのヘビー級ながら、フットワークは軽快【アウディe-tron スポーツバック試乗】

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e-tron スポーツバック 1st エディションの価格1327万円。サイレンスパッケージ(アコースティックサイドガラス、プライバシーガラス、 Bang & Olufsen 3Dサウンドシステム、パワークロージングドア)をはじめ、 5Vスポークスターデザインの21インチアルミホイール、カラードブレーキキャリパーオレンジを特別装備している。バーチャルエクステリアミラーが追加された仕様は1346万円となる。

9月17日から発売が開始されたe-tron スポーツバック。アウディジャパンとして初の100%電気自動車は、400km以上の航続距離を誇るSUVクーペだ。床下のバッテリーがもたらした低重心ボディと、前後モーターで構成された電動4WDが、見た目以上に俊敏な走りを楽しませてくれたことに驚かされた。

TEXT●安藤眞(ANDO Makoto)

日本初上陸のアウディEVはクーペSUV。400km以上の走行距離とスポーティな電動4WDが武器【アウディe-tron スポーツバック概要】

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アウディe-tron スポーツバックのボディサイズは全長4900mm×全幅1935mm×全高1615mm。
リヤビューではクーペライクなルーフラインが際立つ。

事前説明を受けた後、実車とご対面。数値ほど大きく感じないのは、全高が低いせいだろうか。

ドアを開けて左手をステアリングホイールにかけ、左足を車内に放り込む。サイドシルは極端に高くはないが、床下にバッテリーを搭載しているため、シル上面から床までのドロップが40mmくらいしかなく、床は少し高く感じる。ただし乗降性が悪いというほどではないし、エアサスの操作で車高は26mm下げられるから、慣れればどうということはないだろう。

ドライビングポジションは、アップライトというよりセダンライク。シフトスイッチでDレンジを選択し、クリープ発進しようとブレーキペダルから足を放すが、クルマはまったく動かない。どうやらクリープはさせない仕様のようだ。

センターコンソールが運転席に向いた、ドライバーオリエンテッドなインテリア。中央部には上下にディスプレイが並ぶ。
メーターは12.3インチで液晶。充電や回生システム、EV走行などの情報のほか、ナビ画面も表示できる。
シフトレバーは、飛行機のパワースロットルのような造形。

自分のクルマのつもりでアクセルを踏むと、発進は意外とおっとりしており、664Nmもトルクがあるようには感じられない。もっとも、発進のトルク応答を穏やかにしているのはドイツ車の常。市街地ではコントロールしやすいし、うっかりシフトを入れ間違えても、急加速する前に気づけるから安全だ。

しかし、発進で踏んだ状態のアクセルを維持していると、20km/hぐらいからモリモリとトルクが湧いてきて、巡航速度に近づくのに合わせてアクセルを戻さなければならなくなった。たとえて言うと、ターボエンジンの過給圧が上がってくるような感じだが、ダイレクトすぎるよりコントロールしやすい。なにより強い加速が必要なときには、アクセルを半分も踏めば「ごちそうさま!」と声が出るほど強力に加速するので不都合はない。

アクセルレスポンスの良さと、約2.5トンの車重を感じさせない軽快なハンドリングが印象的。

巡行中はもとより、加速時もとにかく静かだ。EVというと、加速に合わせてモーターの音が聞こえ、何かオモチャっぽい感じがするのが常だったが、e-tron スポーツバックは電気的な音がまったく聞こえない。

エアサスもフリクション感はほとんどなく、荒れた路面でもしなやに脚が動く。タイヤは265/45R21という巨大なサイズを履いているが、ドタバタと暴れる感じはない。特に床面ががっちりしている印象が強い。後で資料を見たら、バッテリーケースを床下に締結したおかげで、ボディの捩り剛性が45%高まっているらしい。

走行状況に応じて減衰力を0.1秒単位で制御するエアサスのおかげもあり、乗り心地も良好。

加減速を繰り返してみると、加速方向にはまったく車重を感じさせない。アクセルオフしただけでは回生ブレーキは作動せず、コースティングして燃費を稼ぐ制御のよう。アクセルオフしただけでも回生を取りに行くシーンがあったが、どうやら先行車を検出すると、その動きに合わせて回生ブレーキを作動させる制御が入っているようだ。能動的に回生ブレーキを作動させるには、フットブレーキを踏むか、パドル操作をする必要があり、パドルでは回生レベルは2段階に強められる。

回生協調ブレーキの違和感は皆無。ドライバーは制御を意識することなく、ブレーキコントロールができる。

ワインディングに入り、パドル操作でコーナリングのリズムを作ろうと思ったら、微妙にうまくいかない。エンジンブレーキはエンジン回転数が低くなるにつれて弱まってくるのに対し、e-tron スポーツバックの回生ブレーキは一定のGで減速を続けるので、内燃エンジン車のシフトダウン感覚でパドルを操作すると、旋回中に速度が落ちすぎる。そこで回生を弱めようとしても、パドルはステアリングと一緒に回るから、どこかに行ってしまっている。結局、フットブレーキでコントロールするのがいちばん楽なことがわかった。

ブレーキのタッチはしっかりしており、回生協調ブレーキにありがちだった違和感もない。唯一残念なのは、ブレーキペダルが高く踏み替え操作性がちょっとやりにくいことか。

ゆっくり走っている間は回頭方向に少し重さが感じられたため、コーナリングはあまり得意ではないのかと思ったが、ある程度ペースを上げてもロールは深くなりすぎず、進入のブレーキングでノーズを沈めてしまえば、グイグイと良く曲がる。タイヤもコンチネンタルのプレミアムコンタクト6と、スポーツセダンが好んで採用する銘柄が選ばれており、生半可なコーナリングではスキール音さえ出さない。操舵特性もわかりやすく、アクセルオフで曲がれば弱アンダー、アクセルオンでそれが弱まるという“楽しく安全に走れる”キャラクターだ。

ステアリングホイールの裏にはパドルを装備。
足元は21インチホイール+コンチネンタル・プレミアムコンタクト6の組み合わせ。

EVの有り難さを痛感したのが、登りタイトコーナーからの立ち上がり。内燃エンジン車では、勾配や曲率によってはシフトスケジュールが合わず、マニュアル変速したりアクセルを深踏みしてダウンシフトを誘ったりとワンアクション必要なシーンでも、アクセルを踏み増すだけで、たちどころかつ滑らかに加速する。ジャーク(加速度変化)が最小で済むので、パッセンジャーを不快にさせない運転もしやすい。

パッセンジャーついでに後席居住性にも触れておくと、身長181cmの僕が運転席を合わせたまま後席に座っても、ヒザの前には約160mm、頭上には約60mmの余裕がある。クーペスタイルながら、後席に長身者が乗っても窮屈感はまるでない。

足元、頭上ともにスペースには余裕がある。
適度なサポート性を持つ前席シート。表皮はアルカンターラ/レザー。
荷室の床面は高いが、スイッチ一つで車高を下げることができるのが便利。
後席背もたれは分割で前倒しすることが可能。

試乗と撮影を終えたときの車載電費計の数値は3.5kWh。そこそこの急加速を試したり、場所の移動で加減速を繰り返したりしての数値だから、普通の公道走行でこれより悪くなることは希だと思う。86.5kWh使えるならば、303km弱は走れる計算。上手に走ればWLTCモード相当(405km)を出すのも不可能ではない感触だった。

お値段は張るとはいえ、メルセデス・ベンツGクラスとほぼ同等。レンジローバーより少々安い。購入費用が用意できるなら、化石燃料で走るクルマより新鮮なカーライフが楽しめるに違いない。

アウディ e-tron スポーツバック 55 クワトロ 1st エディション

全長×全幅×全高:4900mm×1935mm×1615mm
ホイールベース:2930mm
車重:2560kg
サスペンション:F 5リンク式・R 5リンク式
モーター定格出力:165kW
最高出力:通常モード265kW/ブーストモード300kW
最大トルク:通常モード561Nm/ブーストモード664Nm
電池:リチウムイオン電池
総電力量:35.5kWh
総電圧:397V
交流電力量消費率:245Wh/km
一充電走行距離WLTC:405km
車両価格:1327万円(バーチャルエクステリアミラー仕様1346万円)

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