「バブ」=ホンダ・ホーク(CB250T)(1977年)
1977年7月に登場したホンダ「ホーク(CB250T)」。最近も、人気TVアニメ「東京リベンジャーズ」の佐野万次郎(マイキー)の愛車として話題になったので、ご存じの方も多いだろう。そして、このモデルは、「バブ」という擬音のような不思議な愛称で呼ばれていたバイクとしても知られている。
1977年5月発売の400cc版「ホークⅡ(CB400T)」の兄弟車となるモデルで、エンジンには26PSを発揮する空冷4サイクルOHC2気筒を搭載。スムーズなエンジン特性や軽快な操縦性を生むフレーム、リラックスしたライディング・ポジションなどで、街乗りから長距離ツーリングまで、オールマイティに楽しめるモデルだった。
そんな当モデルだが、「バブ」というあだ名の由来は、排気音が「バブー」と聞こえることだといわれている。ちなみに、初期型の燃料タンクは、丸みのある形状から「ヤカン」と呼ばれていたようだ。また、シートは、かなり厚みがあることで、「座布団」と呼ばれていたともいわれている。

「サンマ」=ヤマハ・TZR250(1989年)
1980年代に人気を博したレーサーレプリカのなかでも、「サンマ」という面白いニックネームで呼ばれていたのが、1989年に登場したヤマハ発動機(以下、ヤマハ)「TZR250」の2代目モデルだ。
TZR250は、初代モデルが1985年に登場。当時の最高峰2輪レースWGP・500ccクラスを闘うワークスマシン「YZR500」の技術を投入した市販車で、1995年まで販売されたロングセラーモデルだった。とくに、2代目は、水冷・2ストローク・並列2気筒エンジンに、独特な前方吸気・後方排気のレイアウトを採用。エンジンに取り入れる走行風の流れをストレートにすることで、燃料効率のアップなどを図った機構を採用していたのが特徴だった。
そんな2代目TZR250が、なぜ「サンマ」という愛称で呼ばれたのか? 理由は、型式が「3MA」だったからというのが定説だ。
「3=サン」+「MA=マ」→「サンマ」
おそらく、約10年間に及ぶ歴史を持つTZR250は、多様なバリエーションがあったため、ほかの年式や仕様と区別するために、ファンなどが型式をもじったのだろう。それだけ、多くのファンを持っている名車のひとつである証だといえる。

「赤とんぼ」=ヤマハ・YA-1(1955年)
ヤマハの輝ける第1号製品が、1955年に登場した125ccモデルの「YA-1」。このモデルは「赤とんぼ」の愛称で呼ばれたことで知られている。
当時、国産オートバイメーカーとして後発だったヤマハは、先発メーカーの多くが4ストローク車を販売していたのに対し、2ストロークエンジンの可能性に着目した。エンジンに、最高出力5.6PSを発揮する123cc・空冷2ストローク単気筒を採用し、当時としては高い走行性能を実現した。
そして、その実力を証明するために、1955年7月の第3回富士登山レースや同年11月の第1回浅間火山(全日本オートバイ耐久)レースに参戦。当時の国内最高峰レースでいずれも上位を独占したことで、一躍ヤマハ製バイクを世に知らしめた。ヤマハによれば、大卒初任給が平均1万円ほどの時代に13万8千円という価格だったにもかかわらず、3年間で約1万1千台が売れるほどの大ヒットを記録したという。
そんなYA-1だが、「赤とんぼ」というあだ名の由来は栗茶色のスリムな車体からだといわれている。当時のバイクは、黒一色で重厚なデザインが常識だったのに対し、かなり目立つカラーリングを施したことも、人気の秘密だったようだ。

「ゴキ」=スズキ・GSX400E(1980年)
スズキ製スポーツやツーリング向けバイクのシリーズが、ご存じ「GSX(ジーエスエックス)」。その400cc版であるGSX400シリーズの初代、1980年に登場した「GSX400E」は「ゴキ」のあだ名で呼ばれていたことで知られている。
GSXシリーズは、その前身となるGSシリーズが1気筒あたり2バルブの4ストロークエンジンを採用していたのに対し、より高性能な1気筒あたり4バルブの4ストロークエンジンを搭載したことが特徴だ。GSX400Eでは、DOHC4バルブを採用する399cc・空冷4サイクル並列2気筒を採用。最高出力44PSものハイパワーを発揮し、優れた動力性能を実現した。
また、フロントフォークには、当時のWGPマシン「RGB500」のノウハウを活かした「ANDF(Anti Nose Dive Fork)」も採用。制動時の前沈み現象を防止することで、車体姿勢や操縦安定性を向上するアンチ・ノーズ・ダイブ機構付きフォークだ。この当時最先端の装備を、750cc版「GSX750E」と共に世界で初採用したことも大きなトピックだった。
そんな名車の呼び声も高いGSX400Eだが、発売当初は「ゴキ」のあだ名はついていなかったようだ。どうも、マイナーチェンジで初期型よりも丸みを帯びたフォルムになったことと、車体色にブラック&ゴールドを追加したことが関係しているらしい。一説によると、マシンにまたがり真上から燃料タンクを見下ろすと、黒光りする「ゴキブリ」を連想させたことから、この愛称が付けられたという。機能的には当時先進のバイクであり、現代においても高く評価されているモデルのひとつだ。

「ケッチ」=カワサキ・KHシリーズ(1976年)
1976年から登場したカワサキ「KH」シリーズは、「ケッチ」の愛称で呼ばれていたととで知られている。
KHとは、1968年登場の「500ssマッハⅢ」など、1960年代から1970年代前半に一世を風靡した「マッハ」シリーズの後継となるモデル群のことだ。当時、圧倒的な動力性能を発揮した空冷2ストローク3気筒エンジン(通称、2ストトリプル)を継承し、独特の排気音や鋭い加速などが魅力だった。
ラインアップには、250ccの「KH250」、400ccの「KH400」、500ccの「KH500」などのほか、90ccや125ccの2ストローク単気筒モデルも存在。小排気量から中排気量まで、さまざまなタイプのモデルがリリースされ幅広いユーザーから人気を博した。
そんな同シリーズだが、愛称の「ケッチ」は、モデル名の「KH(ケイエイチ)」から付けられたといわれている。つまり、正式名の短縮形といった感じのようだ。
ともあれ、軽量な車体と高性能なエンジンなどによる俊敏な走りで、大ヒットしたのがKHシリーズ。後の厳しい排出ガス規制が導入される前、2ストロークエンジン全盛といえる1970年代のバイクシーンを象徴することで、今でも高い評価を受けているモデル群だ。

このように、モデル名からは連想できないような、ユニークで不思議なあだ名を持つバイクは意外にたくさんある。特に、バイク全盛期だった昭和の時代には、いわゆる名車と呼ばれる人気モデルも多かっただけに、愛称で呼ばれたバイクも今より多かったようだ。まさに、古き良き時代を象徴するのがそれら名車たちだといえよう。

