1966年式トヨタスポーツ800。

2026年5月24日に静岡県富士市にある富士市中央公園で開催された「富士山オールドカーフェスタ2026」は、地元の静岡クラシックカークラブが主催の中心になっている。そのクラブに属しているメンバーの車両は、通常の参加車が展示される多目的広場から少々離れたイベント広場に並べられた。イベント広場を歩いていると、数台ホンダSシリーズが並び隣にライバルでもあったトヨタスポーツ800が展示されていた。

UP15という型式を希望ナンバーにした。

なかなか珍しい組み合わせに、オーナーと思しき人に声をかけさせていただいた。それがヨタハチオーナーの大村正敏さん。実に84歳と高齢ながら、今でもヨタハチだけでなく数台の古いバイクを走らせている現役ドライバー&ライダーである。よくよく話を聞けば、大村さんはヨタハチだけでなくライバルであるホンダS800Mも所有されているのだとか。

新しいトヨタのエンブレムをリヤに追加している。隣のホンダS800Mも同じオーナーのものだ。

それがヨタハチの隣に展示されていた黄色いクルマ。当日は親族の方に運転してもらい2台同時に展示することとされたのだ。2台のライトウェイトスポーツカーを楽しまれている大村さんだが、所有歴が長いのはヨタハチだそう。実に45年前に友人が所有していたヨタハチと自分のクルマを物々交換して手に入れた。ホンダS800Mには古いナンバープレートがそのまま付いているのに対して、ヨタハチには新しい希望ナンバーが付いている。

GT.GRAND PRIXという珍しいフェンダーミラーを装着している。

どういうことかお聞きしてみると、なんとヨタハチは自宅の車庫で20年以上リフトに上げて保管してあった時期があるのだという。その時に一度ナンバーを切ってしまったため、再登録するときに新しい希望ナンバーとされたというわけだ。ただ、20年以上も動かさず保管だけしていたのには理由がありそうだ。

追突を予防するためハイマウントストップランプを追加した。

聞けば以前にトヨタスポーツ800のオーナーズクラブに所属して、クラブ内のイベントにヨタハチの原型でもある「パブリカスポーツ」のデザイナーだった佐藤章蔵さんをゲストにお招きしたそうだ。スライトキャノピーが特徴的なデザインのコンセプトカーで、近年になり有志一同がレプリカを作ったことで話題になったもの。

パブリカ譲りの空冷水平対向2気筒エンジン。シュラウドをサンドブラストしたままにしてある。

佐藤さんを招いたイベントで大村さんは直接お話を聞くことにされた。パブリカスポーツのこと、ヨタハチのことなど色々とお話しされた最後に佐藤さんから言われたひと言が今でも心に残っている。それが「大事にしてね」とのセリフ。このひと言で手放すことは考えなくなり、ナンバーを切った20数年の間も所有し続けてきたのだ。

アルマイトのメーターパネルがスポーティなインテリア。

20年以上も不動だったクルマを復活させるのは、とても大変なこと。業者に任せれば簡単なのだろうが、途方もない予算が必要になる。そこで大村さんは自らできることはDIYで励行しつつ、プロや友人の手を借りてコツコツと復活させた。だが復活させた後も苦労は続く。やはり長い間不動だったことも関係しているのだろう。走り出すとベルトが切れたりマフラーに穴が空くなどトラブルの連発だった。

短いストロークでコクコクとチェンジできるシフトレバー。

復活劇から4年が経った今ではトラブルを起こすこともなくなり、ヨタハチの軽快なハンドリングと非力な空冷水平対向2気筒エンジンながら軽量ボディのためスルスルと加速する走りを楽しまれている。ただ、フルオリジナルというわけではなく、フェンダーミラーを社外品に変えて楽しんだりハイマウントストップランプを追加して追突事故を予防するなど手を加えてある。

当時としてはバケット形状だったシート。

エンジンルームのバルクヘッド側に装備される特徴的な「燃焼式ヒーター」はヨタハチの純正ではなくパブリカ用と思われるもの。また空冷のためシリンダーを覆って効率的に冷却するシュラウドが装着されている。ここは通常だと黒く塗装されているのだが、大村さんのクルマは鈍いシルバー。色を変えたのか聞いてみると「サンドブラストしてみたら意外といい色合いなのでそのままにしているんです」とのこと。自分のクルマなのだから自分だけの仕様にして楽しむのが大村さん流なのだ。

シート後ろのファスナーを開閉すればトランクへアクセスできる。