マツダが推進するプレミアムブランド戦略が、今、正念場を迎えている。

その象徴ともいえるフラッグシップSUV、CX-80は、発売直後こそ好調なスタートを切ったものの、データを見る限りではその後は販売が伸び悩み、月販目標を下回る状況が続いている。CX-80の商品力に大きな不足があるとは考えにくい。それでも苦戦しているという背景には、プレミアムブランドとして市場に浸透することの難しさが見え隠れする。
CX-80は2024年10月に日本市場へ投入されたマツダのフラッグシップSUVである。発売初月は1856台を販売し、月販目標の1400台を上回る好スタートを記録した。しかし、その後は販売ペースが鈍化。データを見る限り、2025年春以降は月販目標を大きく下回る月も目立ち、発売後の平均販売台数も1000台を下回る水準で推移している。

もちろん、SUV市場全体の競争激化という要因もあるが、これはCX-80が、当初期待されたほど存在感を示せていないことを物語っていると言えそうだ。
繰り返すが、販売が伸び悩んでいるとはいえ、決してCX-80の商品力が低いわけではない。全長4990mm、全幅1890mmの堂々としたボディに加え、直列6気筒ディーゼルやPHEVをラインアップ。上質なインテリアや最新の運転支援システムなどを備え、プレミアムSUVとして十分な競争力を持つ。
一方で、日本国内での価格帯は394万円から700万円超と、マツダ車としては過去に例を見ない価格設定となっている。その結果、比較対象はトヨタのハリアーだけでなく、レクサスNXやRX、BMW X3、メルセデス・ベンツGLCといったプレミアムブランドへと広がることになる。
ここで浮かび上がるのがブランド価値とのギャップだ。マツダは近年、魂動デザインや匠塗、質感の高いインテリアによってブランドイメージを着実に高めてきた。しかし、多くのユーザーには依然として「価格以上の価値を提供するメーカー」、「お買い得車メーカー」という印象が根強く残っている。
そのため、500万~700万円という価格帯では、「なぜレクサスではなくマツダを選ぶのか」という問いに対する明確な理由が求められる。
プレミアム市場では商品力だけで勝負できるわけではない。ブランドの歴史や所有する満足感、販売ネットワーク、アフターサービスまで含めた総合力が購入を左右する世界だからである。
とはいえ、プレミアム戦略そのものを失敗と結論づけるのは早計だ。電動化やソフトウェア開発への投資が加速する現在、自動車メーカーにはこれまで以上の収益力が求められている。マツダのような中堅メーカーが販売台数だけを追い続ける戦略には限界があり、1台当たりの収益を高めるプレミアム路線は必然的な選択とも言える。
実際、デザインや内装品質に対する評価は世界的に年々高まっており、ブランドイメージの向上という点では着実に成果を上げている。
レクサスも現在のブランド価値を築くまでには30年以上を要した。ブランドは短期間で完成するものではなく、時間をかけて市場の信頼を積み重ねることで初めて確立されるものなのだ。






