このパーツを知らずして、モンキーカスタムは語れない!

当たり前のように買える社外製パーツにも、始祖となった存在があって今がある。とくにキャブレターモンキーと呼ばれるZ50J系は歴史が長く、それだけカスタムパーツの進化も濃い。

チューニング系で大きな転機となったのが、SP武川のスーパーヘッド。それまでは各メーカーやショップが純正パーツを加工して販売するスタイルが中心だったところ、SP武川は高性能工作機械を導入してオリジナルの型を起こし、イチから専用のチューニングヘッドを製作してしまった。1987年のことである。

パワー競争が激しくなると、今度は走りを支える足周りや車体にも性能が求められるようになり、NSR50用パーツを流用した12インチ化なども人気に。太くしたい、低くしたい、もっと高性能な足周りを使いたい――。そんなユーザーの声にメーカーが応えることで、モンキーカスタムの選択肢はどんどん広がっていった。

ここからは、そんなカスタム史を動かし、現在につながるきっかけとなった“始まりの逸品”を見ていこう。

チューニングヘッドの優位性を証明!【SP武川 スーパーヘッド】

4ストロークエンジンのチューニングの要となるのが、シリンダーヘッド。その純正シリンダーヘッドを加工してパワーを引き出すのが一般的だった時代に、SP武川が送り出したのがスーパーヘッド、通称“スパへ”だ。

既存部品を加工するのではなく、オリジナルの型を起こして一から専用品を製作。理想的な燃焼室形状を追求できるようになり、誰もがチューナーが組んだエンジンのようなパワーを味わえるようになった。

しかも、その実力はレースで証明される。第1回モトチャンプ杯レースでは、スーパーヘッドを装着したSP武川のゴリラが日本一に輝き、鮮烈なデビューを飾った!

「純正ヘッドをどう加工するか」から、「高性能なヘッドそのものを作る」へ。4MINI(ヨンミニ)用チューニングヘッドの世界を大きく前進させた存在だったのである。

純正ヘッドとはひと目で違いが分かる専用設計。吸排気系まで含めて本格的なエンジンチューンを楽しむ、4MINIらしい“憧れのパーツ”だった。

モンキーの弱点を克服!【SP武川 2次側クラッチ】

チューニングが進めば、それまで見えなかった弱点も顔を出す。

1万1000rpm以上の高回転が当たり前になると、一般的なモーターサイクルとは違って、クラッチ本体がクランクシャフトへ直結されるモンキーの構造ではトラブルが増えていった。レスポンスが悪いだけでなく、ハイパワーに耐え切れずクランクシャフトが破断してしまうのだ。

そこで誕生したのが2次側クラッチKITだ。もっと高回転まで回したい。もっとパワーを出したい。でも純正構造のままでは厳しい。ならば弱点となる部分そのものを作り替える。

ハイパワー化によって生まれた課題を、新たなパーツで克服する。モンキーチューニングをさらに先へ進めるための重要な一手だった。

クラッチをミッション側のメインシャフトへ移すのが大きなポイント。メーカー公式でも、クランクシャフトへの負担軽減を狙った構造として現在まで受け継がれている。

太足ブームの幕開け!【Gクラフト アルミ製ワイドホイール】

1990年代に入ると、モンキーカスタムはドレスアップ面でも一気に進化。その流れを象徴するのがGクラフトのアルミホイールだ。

ワイドホイールの登場によって足周りの太足化が進み、それ自体がひとつのカスタムジャンルへ発展。なかでもノーマルフォークのままワイド化できる3.5Jキットは大ヒットした。

小さなモンキーに太い足。いまではおなじみのスタイルだけれど、その“当たり前”にも始まりがあったわけだ。

その人気は現在にもつながっている。Gクラフトでは現在もモンキー用8インチワイドホイールをラインナップしており、3.5Jや4.0Jといったワイドサイズを展開。“太足”という遊びが一過性のブームではなく、モンキーカスタムのひとつの定番として根付いたことが分かる。

深いリム幅が生む迫力こそ、太足モンキーの醍醐味。現在の3.5Jタイプもモンキー純正のステムキットやスイングアームへ装着可能とされ、B77の110/80-8、120/70-8が推奨されている。

カスタムの多様性に対応!【Gクラフト アルミ削り出しフレーム】

パワーアップが進めば、もっと高性能な足周りが欲しくなる。そこで人気となったのがNSR50用パーツの流用だった。

ところが、NSR50の足周りをモンキーへ移植しようとすると、ノーマルフレームではネック部分の長さが足りず、エンジンに干渉してしまう。モンキーは8インチホイール車、対してNSR50は12インチホイール車と、そもそもの設計クリアランスが違うためだ。

そこで登場したのがGクラフトのアルミ削り出しフレーム。

単に「アルミ製でカッコいい」というだけのフレームではない。12インチ化したい。NSR50系の足周りを使いたい。もっと走れる車体に仕上げたい。そんな多様化するモンキーカスタムを受け止めるため、骨格そのものを作り替えるという新しい発想だったし、原付のモンキーだからこそ実現したパーツとも言える。

その考え方は、その後のGクラフト製フレームにも受け継がれている。公式サイトには現在も複数のモンキー系アルミフレームが掲載され、GC-019MNKではモンキーフレームの設計を見直し、10インチ、12インチカスタムに適した設計を採用。GC-019ではNSF100に近いネック角を採用するなど、足周りや走り方に合わせて車体側を最適化する発想が見て取れる。

パーツを交換するだけだったカスタムが、ついにはフレームそのものへ。モンキーという素材が持つ可能性を、大きく広げた逸品なのである。

無垢材から削り出したパーツを組み合わせる造形は、フレームそのものがカスタムパーツであることを強烈に主張する。足周りだけでなく“骨格から作る”というモンキーならではの世界だ。

ローダウンの必須アイテム!【FMRタイヤ/B77タイヤ】

足周りカスタムが進化すると、ホイール径だけでなくタイヤの選び方も重要になってくる。

FMRは12インチタイヤでありながら、10インチタイヤと同等の高さを実現する扁平タイヤ。大径ホイールを使いながら車高を低く見せる、大径ローダウンスタイルを確立した。

いっぽうB77は、柔らかなサイドウォールを生かした“小径引っ張りタイヤ”の定番として人気を集めた。

大きなホイールを入れれば終わりではない。タイヤ外径や扁平率、サイドウォールの見え方まで含めて車体全体のシルエットを作る。

そんな現在につながる足周りカスタムの考え方も、この時代に形になっていったのである。

12インチカスタムで車高を抑えたフォルムを狙うために使われた扁平タイヤ。ホイールを大径化しながら、低く構えたスタイルを作れるのが大きな魅力だった。

“バナナタイヤ”の愛称でも知られる8インチワイドタイヤ。後年もモンキーなどのミニバイク向け定番として販売され、Gクラフトのワイドホイール装着例でも組み合わせが紹介されている。

“いま普通に買える”の裏には、最初の一歩がある

スーパーヘッド、2次側クラッチ、ワイドホイール、アルミフレーム、そしてローダウン用タイヤ。

いまのモンキーカスタムでは珍しくないものばかりだけれど、その“普通”が存在しなかった時代には、誰かが最初に考え、試し、製品として形にしなければならなかった。

もっと速くしたい。もっと太くしたい。もっと低くしたい。もっと違う足周りを使いたい。

そんなユーザーの欲求がカスタムを進化させ、メーカーもまた新しい答えを返してきた。その積み重ねによって、モンキーのカスタムパーツは驚くほど多様な世界へ広がっていった。

そして、その流れは過去のものでもない。Gクラフトは2026年にも、キャブレターモンキー用の新しいビレットフレームを発表。「ビレットノーマルルック」を掲げ、純正同等サイズのコンパクトな車体づくりを狙った新しい提案を続けている。

カスタムパーツにも歴史あり。

数十年前に生まれた“始まりの逸品”が新しい定番を作り、その定番を土台にまた次のアイデアが生まれる。そう考えると、モンキーカスタムがいつまで経ってもおもしろい理由が、ちょっと見えてくる。

※この記事は月刊モトチャンプ2024年3月号を基に加筆修正を行っています

【モトチャンプ編集部】