二大巨頭はコンチネンタルとピレリなのに?

改めて宣言するのは妙な気がするけれど、僕はタイヤが大好きである。

中でも、自分の愛車(最近のメインは1976年型ノートン・コマンド850)に装着できそうな細身の19インチと18インチ、旧車の大型車に適合する製品には常に目を光らせていて、新作が登場すると情報収集に精を出すのが通例になっている。

取材時の大野さんのZ1000Jが装着していたタイヤはダンロップ・スポーツマックスQ5Aで、サイズはフロント:110/80ZR18/リア:150/70ZR18。

そんな僕にとって、当記事に協力してくれた大野さんのZ1000Jが、ダンロップのスポーツマックスQ5Aを履いていたことは、ちょっと意外だった。

何と言っても、1970~1980年代前半の並列4気筒車で、運動性能の向上を目指して前後18インチ&ラジアル化を図るとなったら(ノーマルはフロント19インチ/リア18インチのバイアス)、最近はコンチネンタル・ロードアタックCRシリーズか、ピレリ・ファントムスポーツコンプRSを選択するのが通例なのだから。

そのあたりの疑問を大野さんに告げたところ、以下の答えが返ってきた。

大野さんがQ5Aを絶賛する理由

■CONTINENTAL ROAD ATTACK 3CR 近年のクラシックレースで絶大な人気を誇る、ロードアタックCRシリーズの3代目。フロント用は100/90R18と110/80R18、リア用は130/80R18と150/65R18を準備。

「もちろん、ロードアタックCRとファントムスポーツコンプRSも履いて、どちらもかなりの好感触を抱きましたよ。ただしその2つに関しては、タイヤウォーマーの使用とサーキット走行を前提にしているからか、やっぱり冷間時のグリップがいまひとつで、ライフが短く、しかも段減りを起こしやすいんです」

■PIRELLI PHANTOM SPORTSCOMP RS 昔ながらのトレッドパターンを採用するものの、ファントムスポーツコンプRSは、ピレリが最新のハイグリップスポーツタイヤで培った技術を投入。細身の大径サイズは、前輪用の110/80ZR18と後輪用の150/70ZR18のみ。

「そういった問題が発生しないスポーツタイヤがQ5Aで、冷間時からの温まりが明らかに早くて、ライフが長い。僕がZ1000Jに履いているQ5Aは、現在までに約6000kmの距離を走っていて、偏摩耗の気配はまったくないですから、おそらく、+2000kmくらいはイケるでしょう。ちなみに、ロードアタックCRとファントムスポーツコンプRSは、5000km以下で寿命を迎えました」

■DUNLOP SPORTMAX Q5A オールラウンド指向のスポーツタイヤ。18インチの前輪は110/80ZR18のみだが、後輪は140/60R18、150/70ZR18、160/70ZR18の3種が存在する。

「もちろん、絶対的なグリップ力はロードアタックCRとファントムスポーツコンプRSには及ばないですが、そもそもストリートに絶対的なグリップ力が必要になる場面はあまりないですし、私自身はQ5Aを履いたZ1000Jでワインディングロードを走って、グリップ力に不満を感じた記憶はほとんどありません」

では大野さんのZ1000Jを試乗した僕が、Q5Aにどんな印象を抱いたかと言うと、確かに、温まりが早くてグリップ力が十二分で、“乗りやすい・イコール・高性能”というカスタムのコンセプトに合っていると思った。

逆に大野さんのZ1000JがロードアタックCRかファントムスポーツコンプRSを履いていたら、第二回目に記したほどの感動と共感は覚えず、冷間時の扱いはシビアという印象を抱いたのかもしれない。

純正ホイールのサイズがF:1.85×19・R:2.15であるのに対して、大野さんのZ1000JはF:2.75×18・R:4.50×18に変更している。

ロードスマートⅣとGT601

さて、まずはQ5Aの話から始めてみたけれど、他のタイヤメーカーと比較すると、ダンロップは昔から旧車への適合を意識している感があって、Q5A以外にも細身の大径タイヤを数多く販売している。

以下にそれらの中から数点を紹介すると、まず大野さんのZ1000Jのように前後18インチ&ラジアル化を図ったカスタム車で、Q5Aと並ぶ選択肢になるのが、スポーツツーリングタイヤのロードスマートⅣだ。

■DUNLOP SPORTMAX ROAD SMARTⅣ ロングランでの快適性や耐久性を重視して生まれた、スポーツツーリング指向のラジアルタイヤ。細身の大径サイズとして、前輪用は110/80R18、後輪用は140/70R18と150/70ZR18を販売。

ロードスマートⅣの特徴は、Q5A以上の温まりの速さ、どんなバイクでも1万km以上は確実と言われているライフ(車両や使い方によっては1万5000~2万kmも夢ではない)、上質な乗り心地、環境変化に対する強さなどで、その一方でグリップ力や軽快さはQ5Aに軍配が上がる。

だから安易な甲乙は付けられないものの、ロングランが大好きで、年間走行距離が1万km以上に及ぶライダーなら、Q5AよりロードスマートⅣに好感を抱く可能性は大いにあると思う。

カワサキ空冷Zシリーズの主力機種の純正タイヤサイズは、1972年型Z1に端を発する第一世代がF:3.25×19・R:4.00×18で、1981年以降の第二世代はF:3.25×19・R:4.25×18(≒F:100/90-19・R:120/90-18)。

もちろん、ダンロップでは純正サイズに適合するバイアスも販売していて、昔ながらのトレッドパターンを維持するF11/K87やTT100GP、K300GPなどが、定番としての地位を獲得している。

■DUNLOP TT100GP 伝統のトレッドパターンを継承するTT100GPは、細身の大径サイズが主力のバイアスタイヤ。Hレンジの19/18インチに限っても、前後共用品を7種、前輪・後輪の専用品を各1種ずつラインアップ。
■DUNLOP K300GP ルックスは昔ながらだが、現代の視点で考えてもK300GPのエッジグリップは強力。細身の大径タイヤとして、フロント用は100/90-18、110/90-18、100/90-19、リア用は120/90-18と130/80-18を販売。

ただし、近年の僕が最も好感を抱いている純正サイズの適合品は、現代的なトレッドパターンのアローマックスGT601だ。

僕が考えるGT601の魅力は、現代の基準で考えて必要にして十分なグリップ力と万能性を備えていることや、ヒラヒラ軽快なハンドリングが味わえること、前述した3種のバイアスタイヤより耐久性が格段に高くて、ライフの末期になっても性能の劣化が少ないことなど。

■DUNLOP ARROWMAX GT601 Q5Aに似た資質を感じる、オールラウンド指向のスポーツバイアス。旧車に適合する細身の大径サイズは、フロント用が90/90-18、100/90-18、110/90-18、100/90-19の4種、リア用は110/80-18、110/90-18、120/80-18、120/90-18、130/70-18、130/80-18、140/70-18の7種。

と言っても、これまでに僕がGT601をオススメしたライダーの中には、ヒラヒラ軽快なハンドリングに馴染めないと言う人もいるので、ダンロップにはもうちょっとしっとり安定指向のバイアスタイヤ、個人的にはロードスマートⅣの技術を転用した製品を新規開発して欲しいのだが、そういったタイヤにどのくらいの需要があるかは、何とも言えないところである。