トヨタが声明を発表 EV、bZシリーズがアメリカで成功するために公平な競争を!

トヨタのEVシリーズ、bZの第一弾bZ4X
アメリカ・バイデン政権と与党・民主党が検討している米自動車大手の電気自動車(EV)を優遇する法案に対しトヨタが反発している。トヨタは、11月2日に声明を発表した。この問題、なかなか奥が深そうだ。

まずは、トヨタの声明を読んでみよう。

電気自動車関連税制優遇措置の均等適用の必要性に関するトヨタの声明

環境、アメリカの自動車労働者、アメリカの消費者を政治的に動かすのはやめよう。

トヨタは、自動車の未来は電気自動車だと信じている。トヨタは、自動車の未来は電気自動車だと信じており、その未来への移行を促進するために、議会は電気自動車の購入を奨励する必要があると考えています。
しかし、議会の一部には異なる考えがあります。彼らは、組合への加入を決めた労働者が製造した電気自動車にのみ、4500ドル(1$=113円で50万8500円)の追加奨励金を与えようとしています。

組合に入らないと決めたアメリカの自動車労働者にとって、これは何を意味するのでしょうか?組合に入らないという選択をしたことで、彼らの仕事の価値が4500ドル下がったということです。

アメリカの消費者にとってはどうでしょうか。フォード、ゼネラルモーターズ、クライスラー製ではない電気自動車を買おうとすると、追加で4500ドル(4年間で月々約100ドル=11300円)を支払わなければならないということです。

これは、気候変動対策のために電気自動車を購入したいと考えているアメリカ人にとって、何を意味するのでしょうか。電気自動車を普及させることは、組合結成を促進することの二の次だということです。

これは公平ではありません。正しいことではありません。

議会はこの件に関して、政治を脇に置く必要がある。正しいことをしなければならない。アメリカのすべての自動車労働者を公平に扱う。フォード、GM、クライスラー製ではない電気自動車を購入するために4500ドルを余分に支払う必要はなく、アメリカの消費者に最適な電気自動車を選んでもらいましょう。そして、気候変動との戦いを最優先にしましょう。

アメリカの労働者、消費者、環境にとって最善のことを政治よりも優先させましょう。

議員に電話をして、米国の自動車労働者が組み立てたすべての電気自動車に電気自動車税の優遇措置を平等に適用するように要請してください。

ここでいう組合とは、全米自動車労組(UAW=United Auto Workers 正式名称はInternational Union, United Automobile, Aerospace and Agricultural Implement workers of America)のことだ。GMとフォード、米クライスラーの流れを汲む欧州ステランティスの3社の従業員はUAWに加盟しているが、日本や欧州、韓国メーカーとEV専業の米テスラは非加盟だ。もともとアメリカの自動車メーカーでは労働組合が強い力を持っていた。それゆえ、UAWの加盟工場は非加盟の工場に比べ従業員の給料が高いという。日本や欧州メーカーは生産コストを下げるために組合の勢力が強い中西部を避け、ケンタッキー州やミシシッピ州など南部州に米国工場を建設した経緯がある(トヨタはケンタッキー、ミシシッピー、アラバマなどに工場を持っている)。

トヨタが問題視しているのは、バイデン政権と与党・民主党が1兆7500億ドル(約200兆円)の歳出・歳入法案の枠組みに盛り込まれたEV普及策の中身である。従来のEV購入補助金の7500ドル(約85万円)に加え、従業員がUAWに加盟する工場で生産したEVの購入者に4500ドルの所得税を控除する優遇策を設けるという。2022年1月にこの制度が導入されれば、

UAW加盟のメーカー(GM、フォード、ステランティス)のEVは7500ドル+4500ドル(約136万円)の購入補助金が得られるのに対して、トヨタやその他のEVでは購入補助金は約85万円となり、約50万円もの差がつくことになる。

この問題、世界貿易機関(WTO)ルールに抵触するとの指摘もあるほか、そもそも外国メーカーがアメリカでEVを生産するメリットが薄くなってしまうという側面もある。最初から50万円のハンデを負わされたら、公平な競争とは言えない。反発しているのは、もちろんトヨタだけではない。ホンダ、日産、スバル、マツダ、三菱自動車、フォルクスワーゲン、BMW、メルセデス・ベンツ、ボルボ、現代、起亜も懸念を示している。主に外国メーカーの車両販売店を代表する米国国際ディーラー協会も「この政策は、米国の労働者を互いに対立させ、消費者の選択を制限する」として反対している。

一方、UAWのレイ・カリー会長は、30日に発表した声明で

「現在の法案には、消費者が米国製の組合製電気自動車を購入した場合に追加の税額控除を与えることでそれを行なう規定があります。そうです、組合製です。下院と上院は、今後数週間以内に法案に投票する可能性があります。このような画期的な政策がなければ、米国はEVの生産において外国の労働組合労働者によって構築されるという保証はありません。米国で製造された組合製の電気自動車に対する追加の4500ドルの税額控除は、UAWメンバー、組織化されていない自動車労働者、および労働運動全体にとっての勝利です」

と述べ、議会に対し、修正することなく同法案を可決するよう要請している。

今後のどうなるか、注視していく必要があるだろう。

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