「もうひと声スバルである表現がほしかった!」水平対向なきスバルのデザインはどう変わる? プロの目で確かめる

元スバルのデザイン部長であり現在は、東京都立大学の教授でもある難波治さんに、スバルとトヨタが共同開発したBEV(バッテリーEV)、ソルテラとbZ4Xのデザインについてカーデザイナー的視点から解説していただいた。

それぞれの「らしさ」の表現

左がソルテラ、右がbZ4X

難波教授( 以下、教授):双方のクルマともに実車を見ていないので、個人的なスタイリングの印象コメントはできません。これまで何度も写真でのインプレッションと実写でのインプレッションの違いを感じてきて、やはり2次元の画像では自動車のデザインは語れないと強く思っていますので、共同開発としての両車の外観上の差と、そのデザインの要素、商品の立ち位置について整理したいと思います

とのこと。これを踏まえた上で、両車の違いを解説していただいた。

MF:新型のEV車両としてスバルからソルテラが、トヨタからbZ4X(読み方ビーズィーフォーエックス)が発表されました。ソルテラとbZ4Xの両車は、スバルとトヨタが共同開発したプラットフォーム「e-TNGA」(スバルの呼称は「e-SGP」)を使っているのもあって、一見そっくりに見えますね。どのあたりのデザインが違うのでしょうか。
教授:まず、スバルの専用部分はフロントはヘッドランプと、その内側にある樹脂部分。リヤはテールランプとテールランプを結ぶランプガーニッシュとその直下のボディ色樹脂パーツ部分。いずれも樹脂部分で定番的な手法。その他板金部分、ガラス部分はスバルもトヨタも共通のようです。

上がソルテラ、下がbZ4X
bZ4XとRAV4
「トヨタはSUVらしさよりも新世代感やグリルレスのEV表現を重視」と難波教授は指摘する、
ソルテラ(左)とXV(右・北米仕様のCrosstreck)
「スバルはSUVらしさとブランド表現を重視しスバルの造形モチーフを使っています」(教授)

MF:この2台は似てはいますが、ソルテラはぱっと見でスバルのクルマというのがわかりますね。
教授:スバルは北米におけるその他自社商品群が基本的にSUVゾーンのブランドイメージがあるためか、またこれまでヘキサゴナルグリルとシグネチャーランプによるブランドモチーフ表現で市場にブランドイメージを築いてきたためか、そのブランド表現でトヨタと差別化していますね。フロントエンドはグリルを塞いでヘキサゴンのプロフィールのみでEV表現を見せヘッドライトのC型シグネチャーモチーフと丸いフォグランプもスバル的です。

ソルテラ(左)とXV(右・北米仕様のCrosstreck)
高い位置で左右に突っ張ったテールランプと、シグネチャーである[C]シェイプでスバルを表現。

教授:リヤは高い位置で左右に張り出したテールランプ造形とC型シグネチャーランプ表現でスバルのブランドを表現していますが、これはまた、この前後部分でしか外観上スバルであるという差別化表現ができないという事情も大きく影響しているのではないでしょうか。

トヨタ寄りのデザインに見える

教授:サイドビューはトヨタのSUVモチーフ(RAV4)がベースになっているようですね。比較図を参照して貰えばそれがよくわかると思います。ボディサイドの主要な造形モチーフ(オレンジ)、Aピラーの角度(赤)、ホイールアーチガーニッシュとサイドシルモチーフの食いつき方(ピンク)、クォーターウィンドウ形状、Cピラーの傾き(水色)など、スタイリングの構成の原点はRAV4に多く見られます。

MF:シルエットを見たときにスバルっぽくないなと感じたんですが、、、
教授:ベルトラインの高さ(黄色)も通常のスバルとは違います。アイポイントが違うので正確なことは言えませんが、視界の良さ=安全を謳っているスバルではこれまではやらなかった高さですね。おかげでカウル部もベルトラインに合った高さになっていて、スバルの造形上の特徴であったカウル部分の落ち込みがなくフロントからルーフラインまでのつながりがスムーズになりました。

MF:スバルのクルマは水平対向エンジンを積んでるのもあって、フロントのオーバーハングが長いのが特徴的だったと思うんですが、かなり印象が違いますね。
教授:フロントオーバーハングは電動化に伴って他のスバル車に比べて短いです。水平対向エンジン+AWDでは機構上どうしても果たせなかったオーバーハングの短縮化が電動化によって達成されていますね。オーバーハングの短縮とロングホイールベースでバランスの良いプロポーションになったことはスバルにとっても悪くはないことです。以上のことから、共同開発によるEVの開発はスバルとトヨタが仲良くケンカしようという合言葉で進められたようですが、企画とデザインはトヨタ主導で行なわれたように思えますね。

bZ4XとRAV4のリヤの比較。
ランプガーニッシュ下の台形、バンパー黑色部の台形、リヤコーナー部の鋭い斜めモチーフ、アンダーカバー的造形要素など実はなんとなくトヨタらしさの共通感を醸し出している。(教授)

MF:他に細部で味付けが違うところはありますか?
教授:販売ボリュームの多さからSUVのゾーンで商品化していますが、トヨタはより先進的にシンプルな表現を使い、スバルはスバルらしさを出すための表現を用い、さらにしっかりとしたSUV表現も付加しているように見えます。ソルテラがAピラーからルーフにかけて黒くしなかったのも、SUVとしての強さと骨格感を見せ、信頼の走りを表現しようとしたのでしょう。トヨタはそれよりもキャビンを軽くし、スポーティさ、スペシャリティ感を優先しているように見えます。

MF:なるほど。細かい違いで印象が大きく変わるんですね。指摘箇所に注目すると別の車に見えてきますね。

教授:ただ、危惧することは北米市場においてスバル以外もヘキサゴン形状をフロントに使用しているブランドが存在していることから、単純にフラッシュなヘキサゴンのプロフィールだけにする事が独自性を失ってしまわないかなという部分。もうひと声スバルである表現を求めてもよかったように思います。
とはいえ、ソルテラは4隅に配置されたタイヤの位置取りや大径タイヤとも合いまって、骨格のしっかりとしたSUVになっており、スバルらしさを表現しています。bZ4Xとの表現の差はスバルのユーザーにも迎え入れられる表現だろうと思いますし、新規の顧客も呼び込むのではないでしょうか。一度実車で見てみたいですね。まだプロトタイプなので、発売までにどうデザインが変わるかも楽しみですね。

MF:教授、ありがとうございました。


スバルとトヨタの共同開発といえばBRZと86があるが、ソルテラとbZ4Xも同じような位置付けになりそうだ。今回のデザインは今まで水平対向エンジンに合わせたデザインをしていたスバルがEVに手を出すことで、トヨタに歩み寄ったデザインになったのではないのだろうか。共通のプラットフォームである「e-TNGA」は自由自在にサイズ・形が変えられる。これからe-TNGAを使った、SUV以外のBEVが登場する可能性は高そうだ。どういったデザインになるのか楽しみに待ちたいと思う。

bZ4Xもソルテラも、生産はトヨタが行なう(日本と中国)。発売は2022年央とアナウンスされている。

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