チューニングされた排気音が聞こえてくる。多くの仕事を一緒にしてきた友人、N氏のR32GT-Rである。彼はチューニング雑誌『オプション』やスーパースポーツカー専門誌の『ゲンロク』にも在籍をしていたことがあり、知識が豊富。彼の理論は素晴らしく、意味のないチューニングはしない。速く走る、速く回る、そして速やかに止る、だ。そのうえで快適装備、カーオーディオにもこだわっている。そんなN氏がジムニーに乗った瞬間……。
TEXT & PHOTO◎伊倉道男(IKURA Michio)
ハブベアリング交換の工程
ハッキリ言えば非常にうるさいN氏のR32GT-Rを駐車スペースに入れさせ「さ、ピザを喰いにでかけるよ」とジムニーの助手席へ押し込む。すると走り出した瞬間に「これ、ベアリング駄目っすね。リヤのハブベアリングですかね? でも、ホーシングは響くので、そこだけとは限らないですけれど」と言われた。
僕は「こんなもんだろ~。コイツのベアリングはもう何処もかしこも駄目なのよ……」と答えたものの、人に言われると不思議なもので、そういえば「スズキの無料点検」でも指摘されていたな……などと気になってくる。
専門的なふたりから指摘されてしまうと、さすがに思い腰を上げないわけにもいかないと、気になった場所をできる限り交換していくこととする。
まずはリヤのハブベアリングだ。これ、けっこう大変な作業。
このベアリングを替えていくならリヤのデフも一緒にやるのが良いのだが、デフを降ろすとなると、またドライブシャフトを抜かねばならない。資金の問題もあり、デフはまた次回ということとする。
ハブベアリング交換の工程は以下のとおり。これはメンテナンスというよりも、僕にとっては重修理だ。スパナや眼鏡レンチだけでは作業をスムーズに進められない。
ドラムブレーキのドラムを外す。中央に有る4つのナットだ。このナットがドラムとドライブシャフトを繋いでいる。ブレーキシューはついこの間替えたばかりだが、またここを開けることになる。クルマはパーツの複合で組み上がっている。その替えたいパーツにたどり着くまでに、一緒に交換できる消耗パーツはある。できれば一回で済ませたいところなのだが。
ブレンボが13mmだったので、ブレーキラインを外す工具は13mmと思い込んでいた。どうやら国産は普通は10mmとのことらしい。ここで工具がないため買いに行くこととなる。ブレーキ関係は絶対に舐めたら駄目なところなので、慎重に行なう。
ここまでバラせば、スライディングハンマーを使いドライブシャフトを抜き取ることができる。ドラムブレーキの内容物は、装着されているままで良い。バックプレートごと、ドライブシャフトと一緒に抜く。
さて、ここで問題が発生。スライディングハンマーの付属のブラケットがジムニー(JA71C)には合わないことがわかって仕方なく自作する。どうやら後期になると、ここの形状は変わり普通のブラケットで合うように改良されたようである。ブラケットはその辺に転がっていたルーフキャリヤの脚を加工。反対側はナットで留める。ドライブシャフトの中央は凹んでいるので、いけそうだ。
ドライブシャフトを抜いたところ。デフオイルはここまで回ってきているので、垂らさないようにレジ袋をかけておく。レジ袋が有料になり出費大だ。
ホーシングに樹脂パーツを入れ、新しいオイルシールを入れる。オイルシールは平均的に入るようにベアリングレースシールドライバー を使う。オイルシールを樹脂パーツが動かなくなるまで慎重に叩きながら入れ込む。
さぁ、リヤハブベアリングが新しくなったので、山へと試走に出かける。あら、少し静かになったけれど、ここ以外にもあるようだ。疑う場所はリヤのデファレンシャル。もしかしてセンターブレーキも可能性がある。トランスファーかもしれない。まぁ、端からできる限りやっていかねばいけないか。
とりあえず、僕自身にも燃料補給
米と缶詰の中身を入れよく混ぜておく。具を上にしておくと、できあがりが豪華に見える。見えるだけだけれどね。ちなみに入れたあとの空き缶の中を良くみること。ここに大事なあさりがくっついていることがあるからね。
最後になりますが、センターブレーキを採用しているクルマはトラック以外、いまの乗用車にはもうないかと思います。その場合、ドライブシャフトを抜くときに、サイドブレーキのワイヤーを外す作業も増えます。もちろん個々のクルマで特性も違うので同じように作業ができるとは限りません。作業ミスや部品の供給など、作業を中断すると、そのクルマは動くことができなくなります。
ハブベアリング交換は部品の価格に比べて、工賃が高い。なぜ高いか? そう感じている方への回答と考えていただければ幸いです。
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