スッと曲がれてポジションも楽。初心者をその気にさせるのがうまかった
1989年に友人から手に入れたNS50Fだったが、当時の評価は「RZ50やRG50ガンマに比べ、鈍くて遅い」だった。だがいま振り返れば評価は違う。ビギナーをやさしく公道に導いてくれる、包容力ある姉のような存在だったのだ。
まず乗車姿勢がラクだった。適度な前傾と自由度の高いポジションで、視界が広く安心感がある。エンジンは5000rpm付近でも交通の流れに乗れる程度のトルクがあり、街中でギンギンに回さずとも走れてしまう。もちろん8000rpm以上は2ストらしい加速が味わえるが、段付き加速ではないので怖くない。さらにコーナーでは教習所で習ったとおり「視線を出口に送る」だけですっと曲がってくれるので不安感が皆無。手に入れた時うれしさのあまり、いきなり片道50kmほど走り切ってしまえたのも、今思えばそんな初心者をもてなす能力に長けていたからだと感じる。
バイクの楽しみを気軽に味わえる原付(とくにフルサイズが好み)は、バイクブームに大きく寄与していたのは事実。もうめっきり見なくなったけど、良い個体があれば「乗る人ひとりで何台もいらなくない?」と言われながらでも所有したい一台である。(佐藤大介)
1987年登場のホンダNS50F・エアロはどんなバイクだった?

1987年に登場したホンダNS50F・エアロ。50ccながら水冷2ストエンジン、フロントディスクブレーキ、ハーフフェアリング、小物入れ内蔵シートカウルなどを備えた本格派ロードスポーツだった。速さだけでなく扱いやすさも魅力の一台だ。
エンジンは、水冷2サイクル単気筒49ccで最高出力は7.2psを8000rpmで発揮。最大トルクも7500rpmで発生するなど、どちらかと言うと低中速寄りの特性。軽量・高剛性のアルミ製キャストホイールや、前2.75/後3.00サイズの幅広タイヤを採用するなど、50ccながら足周りにも力が入れられていた。
外観ではハーフフェアリングやシングルシート風のシートカウル、ハロゲンヘッドライト、セパレートハンドル、エアプレーンタイプの燃料タンクキャップ、サイレンサー別体の排気チャンバーなどを採用。50ccスポーツとしての本格感をしっかり打ち出したモデルだった。
ただし、佐藤さんが語るNS50Fの魅力は、単なるスペックの高さではない。適度な前傾姿勢、街中でも扱いやすいエンジン特性、視線を送れば自然に曲がってくれる安心感。RZ50やRG50ガンマのようなライバルと比較されるなかで、ビギナーを受け止めてくれる“やさしさ”こそが、今振り返って見えてくるNS50Fらしさだったのかもしれない。
主要諸元|1987年 ホンダNS50F・エアロ
全長×全幅×全高:1855×630×1065mm
ホイールベース:1260mm
シート高:760mm
車両重量:92kg
エンジン:水冷2サイクル単気筒
総排気量:49cc
最高出力:7.2ps/8000rpm
最大トルク:0.65kgm/7500rpm
燃費:68.4km/L(30km/h定地走行テスト値)
ブレーキ(前・後)ディスク・ドラム
タイヤ(前・後):2.75-17・3.00-17
価格:20万9000円
※この記事は月刊モトチャンプ2025年3月号を基に加筆修正を行っています
【モトチャンプ編集部】