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  • 2019/06/07
  • MotorFan編集部

「スポーツカーと暮らした時間のある人生」を──2台のマツダ・ロードスターで木曽路を目指す旅

なぜ我々はスポーツカーに乗るのか? その魅力について改めて考える

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日本が誇る2シーターオープンスポーツ、ロードスターと、電動可動式ハードトップを持つロードスターRF。FRレイアウトを持つピュアスポーツであり、世界で最も人気のあるスポーツカーとも言える。今やスポーツカーの世界的ベンチマークとなったこの2台で、中山道屈指の宿場町、奈良井宿を目指した。

REPORT●鈴木慎一(SUZUKI Shin-ichi)
PHOTO●宮門秀行(MIYAKADO Hideyuki)

※本稿は2017年7月発売の「モーターファン Vol.8」に掲載されたものを転載したものです。クルマの仕様や道路の状況など、現在とは異なっている場合がありますのでご了承ください。

NA6Cロードスター

 初めてスポーツカーをドライブしたのは、たぶん1990年か91年の冬だったと思う。ユーノス・ロードスター、いわゆる初代NA型ロードスターである。大学でちょっとぐずぐずしていたボクよりひと足早く社会人になった親友が買ったシルバーのロードスター。それを冬の間だけ預かったのだ。二輪メーカーに就職した友人は青森へ転勤になり、「冬の間、どうせ乗れないから預かってくれないか?」とボクに申し出てくれた。「好きに乗っていていいから」と付け加えて。

 こんな素敵なオファーはない。当時、ボクは社会人になりたてで、自動車とは縁のない雑誌の駆け出し編集者だった。話題のクルマに触れる機会は皆無。その日からは、自分が買った中古のトヨタ・セリカ1600GTそっちのけで、ロードスターばかり乗っていた。それまで、背が低くて2ドアのクーペのことをスポーツカーと呼ぶのだと漠然と思っていたのだが、ロードスターをドライブして、まさに眼から鱗が落ちた。「なんだ、これがスポーツカーなのか」と。

 とにかく楽しい! 慣れるまではシフトチェンジするたびにステアリングホイールを握る手が少しぶれて、クルマも4分1車線くらい横っ飛びする。ちっとも速くない。でも、思うように操れる。雨が降らない限りトップは下ろしておく。もちろん真冬でも。お気に入りのチューンだけに編集したカセットテープを、これまた厳選して数本だけ小さなセンターコンソールに入れておく。雨の日にリヤのビニール(リヤウィンドウがガラスではなくビニールだったので)を拭くためのウエスを積んでおく。パーキングエリアで停まれば、見知らぬ人から「これが、あのユーノス?」と聞かれた。面倒なことなどなにもなく、すべてが楽しかった。90年代前半がバブルの名残を引き摺っていたことを差し引いても、それはとてもとても素敵な時間だった。

 翌春になって、シルバーのNAは、青森に戻っていった。

NA8Cロードスター

 それからほどなくして、ボクは、赤いユーノス・ロードスターを買った。生まれて初めて買った新車。NA6からNA8にマイナーチェンジした1.8ℓ直4DOHCエンジンを積んだモデルである(1.6ℓモデルは、エアコンをONにしたら、とにかく走らなかったのでNA8まで待ったのだ)。カラーは赤。トランスミッションは、5速MT。電動リモコン化されたドアミラーの不格好なステーがどうしても気に入らなかったから、それを装備しない「ノーマルベース車」を手に入れた。

 ステアリングホイールをナルディのクラシックに換え、アルミホイールを交換し、ロールバーを入れた。とにかく、運転することが楽しかった。雨が降らない限り、トップはいつも下ろしていた。どこへ行くのもロードスターだった。徹夜の校了明け、そのままクルマ好きの先輩編集者と箱根へ走りに行った。

 ドライビングのスキルがあったわけではない。サイドブレーキターンはうまくできても、ヒール&トーはあやしいものだった。

中山道の宿場町、奈良井の御宿「伊勢屋」より目抜き通りを望む。

 そんなスポーツカーとの日々を過ごした後、プジョー306を買い、アルファ156の乗り換え、シトロエンに乗り、いつのまに普通のセダン(BMW320i)に乗る単なる忙しい中年男になった。取材、会議、締切、また会議、そして会議。少しずつ磨り減って、もう磨り減るものさえなくなってきているのが、今だ。週末も仕事。早朝に箱根に行くこともなくなった……。

 単なる想い出話の駄文で恐縮だが、本稿は、本誌で「スポーツカー特集」を編むにあたっての、一種の前口上である。

 副編集長Kは、「スポーツカー特集、とりわけ日本のスポーツカー特集を組みたい」と言う。スポーツカー?

 ここにひとつの数字がある。
「665分の5」。

 これは自動車産業の調査で定評のあるIHSMarkitのデータである。日本・韓国の2016年の販売台数に占めるスポーツカーの割合だ(665万台のうち5万台がスポーツカー)。わずか0.764%。150台に2台。それが日本のスポーツカーの立ち位置だ。日本の名誉のために言っておくと、同じデータで欧州のスポーツカー比率は0.728%でほぼ同じ。スポーツカー王国の北米は約2.1%である。

 日本のスポーツカーは、ざっと150台に1台。それが意味するところは、「自動車の免許を取っても、スポーツカーを一度も運転したことない人が、ほとんど」ということだ。「じゃあ、どんなクルマがスポーツカーなの?」編集会議でも、「まずスポーツカーを定義しよう」という意見がもちろん出た。2ドアじゃないと。MTじゃないとだめだよ。4ドアはダメ? FR? スポーツカーは格好だよ! モータースポーツのストーリーがなくっちゃ! ゴルフGTIはスポーツカー?軽自動車はどうなの? 速くなくっちゃ! 速けりゃいいの? 議論百出だ。「定義付けより、まずは乗り出そう」そう言ったのは言い出しっぺの副編Kである。

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