〈インプレッション:ルノー・メガーヌ R.S.トロフィー〉筑波サーキット全開試乗!
- 2020/02/09
- ニューモデル速報

メガーヌ R.S.史上もっともパワフルな300psエンジンをはじめ、軽量化や、専用セッティングの足まわりが採用された“R.S.トロフィー”を筑波サーキット2000で全開試乗!「常に高い4輪の接地感が印象的」とテスターの河村康彦は語る。
TEXT●河村 康彦 (KAWAMURA Yasuhiko)
PHOTO ●花村 英典 (HANAMURA Hidenori)
※本稿は2020年1月発売の「ルノー・メガーヌR.S.トロフィーのすべて」に掲載されたものを転載したものです。
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レカロ製フロントシートは 〝トロフィー〞ならでは
設立は120年以上も前とヨーロッパでも屈指の長い歴史を持ち、昨今では日産/三菱とアライアンスを組んだことで、日本での知名度も改めて高まりつつあるルノーというブランド。
かねてコンパクトカー作りを得意として来たこともあり、パリ近郊に居を備えるこのフランス・メーカーの作品に対して、率直なところ”戦うクルマ”というイメージは薄いかもしれない。
が、実は1906年にはル・マンで開催された世界初のグランプリを制覇し、最高峰のモータースポーツであるフォーミュラ1にも40年以上に亘って参戦を続けるなど、コンペティションの世界では知る人ぞ知る積極的な活動を続けているのがまた、このブランドの一面でもあるもの。
その組織の中で、そうした”戦うための活動”を担当するのが、「ルノー・スポーツ・レーシング」。さらに、そこで培われたノウハウや技術を活かして、特にスポーティな市販モデルの開発を担当しているのが、「ルノー・スポーツ・カーズ」部門となっている。
ここに紹介するメガーヌを含め、”RS"の活動記号与えられるのは、そんなスペシャリストの手によって入念に組み上げられた「特別なルノー車」たち。もちろん、RSとは『Renault Sport』の略に他ならないわけである。
今回、筑波サーキットの本コースでのテストドライブに用意されたのは、メガーヌRSの中にあってもサーキットでのスピード性能向上に特にフォーカスして、さらなる専用のチューニングが施された『トロフィー』の名が加えられたモデル。
オリジナルのメガーヌ用に対してフロントが60㎜、リアが45㎜拡幅された専用ボディを用いるのは、ベースのRSと同様。それでも、2014年以降介されたレーシング・コンセプトモデル『RS01』から受けつがれたデザインのホイールや、そのスポークの間に姿をのぞかせるブレンボ製の赤いブレーキ・キャリパー、エアインテーク・ブレードにさりげなく刻まれた“TROPHY"のロゴの採用などが、このスペシャル・バージョンならではの数少ないエクステリア上の識別ポイントとなっている。
一方、そんな”普通のRS”とトロフィーとの識別という作業は、実はインテリアでの方が遥かに簡単であったりもする。軽さにも留意して開発されたバケットタイプのレカロ製フロントシートが、トロフィーのみへの標準採用とされているからだ。
加えれば、そんなアルカンタラ表皮のアイテムとコーディネートをするかのように、グリップ部の一部に同じくアルカンタラが用いられたステアリングホイールも、トロフィーのみへの専用採用。
こうして、一部では見た目上の差別化も図られてはいるものの、ここでの主役であるトロフィーならではの真骨頂は、さらなる拘りの〝走りのメカニズムを、多数採用していることにほかならない。

『レース』モードではESCを完全カット!
トロフィーのフロントフード下に搭載されるのは、ベースモデルに対して21psが上乗せされたことで「RS史上最もパワフル」と謳われるに至った1.8ℓでターボ付きの直噴4気筒エンジン。アクセル操作に対する応答性向上のために、F1用ユニットも使われているというセラミック・ボール・ベアリングを用いたターボチャージャーを新採用の上、独自のセッティングが施されたという、トロフィー専用のユニットだ。
そんなエンジン本体のみならず、エキゾースト・システムにも騒音レベルの低減と排気効率の向上を両立させる目的で、ルノー・スポールの作品としては初となる、アクティブ・バルブ付きの専用アイテムが採用されたこともトピック。
異なる2タイプのトランスミッションが組み合わされるこのモデルのエンジンでは、300㎰を6000rpmで発生という最高出力のデータは同一ながら、MT用は400Nm/3200rpm、ルノーでは〝EDC〞(エフィシエント・デュアル・クラッチ)の名称で紹介される6速DCT用は420Nm/3200rpmと、2ペダル・モデルの方がわずかに最大トルクが大きくなっている。「トランスミッションの許容トルク容量に差があるため」というのがその理由だ。
ちなみに、DCTのシフト・プログラムは、センターパネル上に設けられた〝RSドライブ〞のスイッチ操作によって、任意での変更が可能。最もスポーティな『レース』のモードを選択した場合には、〝4コントロール〞(4WS)やパワーステアリングの制御がサーキット走行に相応しい設定へと変更されると同時に、スタビリティ・コントロールの作動も停止をされることになる。
かくも高められた動力性能に対応するべく、ブレーキシステムも強化されている。
特に、フロントヘビーなFFレイアウトの持ち主ゆえ、前輪側へのテコ入れが入念。ローターの径はベースのRS用と同じものの、鋳鉄製ディスクとアルミ製のハブを組み合わせることで冷却性向上と軽量化を同時に目指した〝バイメタル構造〞が採用されたことが、トロフィー用のシステムならではだ。
軽量化という話題でいえば、専用のバッテリーが採用された点も見逃せない。小型バッテリーとスーパーキャパシタ(蓄電池)を組み合わせたトロフィー専用のアイテムは、わずか8.4㎏と、通常バッテリーよりおよそ4.5㎏の重量をそぎ落としている。
シャシー関係に手が加えられているのももちろんのこと。
「フロントで23%、リヤで35%レートを高めた」というスプリングや「25%のハード化を行った」というダンパーを用いることで、よりサーキット走行に照準を合わせたサスペンション・セッティングが図られた上で、ベースのRSでは電子制御によるブレーキ力を用いていたベクタリング機能を、純機械式でより強力な効果が期待出来るトルセンLSD式へと変更。
また、電子制御されるアクチュエーターを用いてリアタイヤに切れ角を与える〝4コントロール〞(4WS)にも、『レース』のドライブモードを選択した際にはより高速域まで敏捷性の高さをキープする、独自のプログラムが採用されているのも特徴だ。

フルアクセルを与えてもトラクション能力に不足はない
そんなRSトロフィーへと乗り込んでエンジンに火を入れると、例のスポーツエキゾーストから奏でられる何とも官能的な排気音に、走りへの期待感は高まる一方。そしてそんな思いはピットロードを出てタイトな1コーナーをクリアする時点で、早くも「確信」へと変わることになった。
今回テストドライブを行ったのは、前述した2タイプが用意されるトランスミッションのうちの、2ペダルDCT仕様。300㎰という最高出力のデータは今どき「驚くには当たらない」ものかも知れない。が、特に電光石火の変速が行われ、事実上パワーフローが途切れることのないDCTとの組み合わせでは、0↓100㎞/h加速タイムがわずかに5.7秒というデータも証明しているように、「パワフルさに不足はない」と実感出来るものであったこともまた事実だ。
ピットレーンが終わり、速度規制が解除された時点でフルアクセルを与えてもトラクション能力に不足はなく、かつFFレイアウトを備えるハイパワー・モデルにありがちなトルクステアの気配も皆無であるのは、先に紹介したトルセンLSDの威力なども大きいに違いない。
ピットレーンを抜けてすぐに訪れる第一コーナーも含め、2つのヘアピンコーナーが存在するなど比較的タイトなレイアウトの筑波サーキットだが、そうしたシーンでの立ち上がり時の高いトラクション能力と共に、アンダーステアが弱いことにも感心させられる。特に、『レース』のドライブモードを選択した場合のコーナリングでは、やはりそうした印象が顕著。少々オーバースピードで進入してしまった場面でも、いとも簡単にタイトなコーナーをクリアして行く挙動には、ちょっと驚かされてしまうほどである。
そうした〝アンダー知らず〞のハンドリング感覚と共に、このモデルの走りで印象的だったのは、常に高い4輪の接地感。特に、筑波サーキット内では最も高い速度で駆け抜けることになる最終コーナーでの挙動の落ち着きぶりには、今度は見た目の迫力を演じているだけに留まらない大型ディフューザーなども関係した、空力性能の高さを実感させられることにもなった。
そんな〝骨太な走りのテイスト〞を確かなものとしていた一因には、優れたブレーキの仕上がりも大いに関係しているとも思えることに。強力な効き具合のみならず、サーキット・スピードで周回を重ねても一向にペダルタッチに変化を来たさないタフネスぶりにも、高い信頼感を味わうことが出来たからだ。
そもそものメガーヌRSが備える高い走りのポテンシャルに加えて、さらに本格的なサーキット走行に対する適性を上乗せしたトロフィーは、現在ではいくつかのライバルの姿を見ることが出来る〝1.8〜2ℓのむ300㎰級スポーツモデル〞の中にあっても、ひと際輝くリアル・スポーツモデルであったことは間違いナシ。
サーキットでホットな走りを存分に堪能した後、そのまま何食わぬ顔で公道上を自宅へと戻って行けるマルチ・パフォーマンスの持ち主でありながら、500万円を切る価格が実現されたのは、真に驚きというしかないように思えるのだ。

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