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陸上自衛隊:最大射程約30kmの自走砲「99式自走155mm榴弾砲」、砲弾や装薬などの装填を自動化した高性能車

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富士総合火力演習での99式自走155mm榴弾砲(15榴)。

以前に「155mm榴弾砲 FH-70」と「203mm自走榴弾砲(20榴)」という陸上自衛隊の大砲を紹介した。今回は画期的な設計と能力が光る「99式自走155mm榴弾砲」を見てみる。
TEXT&PHOTO◎貝方士英樹(KAIHOSHI Hideki)

99式自走155mm榴弾砲はご覧のとおり、装軌(キャタピラ)式の車体に砲塔を載せた自走式の榴弾砲だ。最大の特徴は、砲弾や装薬などを自動で装填する機構を備えた新設計品という点にある。「FH-70」や「20榴」にはない自動装填機構により連続射撃能力は大幅に高まり、最大で毎分6発以上、3分間の連射では18発以上の発射速度となる。大型砲弾の大量射撃が可能だ。

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ロングノーズとの愛称がついた理由がわかる横からの眺め。主砲の砲身長は52口径と長大なもの。最大射程は約30kmで、延伸弾では約40kmの長距離射撃を行なえる。車首と砲身をつなぐものはクランプと呼ばれる砲固定部品で、射撃時以外の移動・走行時はこれを接続する。

99式自走155mm榴弾砲はご覧のとおり、装軌(キャタピラ)式の車体に砲塔を載せた自走式の榴弾砲だ。最大の特徴は、砲弾や装薬などを自動で装填する機構を備えた新設計品という点にある。「FH-70」や「20榴」にはない自動装填機構により連続射撃能力は大幅に高まり、最大で毎分6発以上、3分間の連射では18発以上の発射速度となる。大型砲弾の大量射撃が可能だ。

正面から見た15榴。砲塔の大きさが特徴的だ。砲弾と自動装填装置を飲み込むのに必要な大きさなのだと思う。乗員は4名。操縦手は車体前方右側の操縦席に座り、砲塔の左右にそれぞれ車長と砲手、その後方に装填手が座る。

連射能力に加え射程距離も長く、もちろん命中精度も高い。射撃する弾種で違いはあるが最大射程は約30km。この長距離射撃性能は前型の「75式自走155mm榴弾砲」の最大射程、約19kmを大幅に超えるものとなった。砲弾飛翔時の空気抵抗を抑える形状や性能を持つベースブリード弾では約40kmにまで延伸できるという。

そして自走式だから、射撃地点への進入や射撃後の離脱・移動などが自在で迅速。自位置がバレて、攻撃されることを抑えられる。

総火演では2両の15榴が観客席の前方へ進入、さらに前進して各々少し離れた射撃位置での射撃を見せる。2両で射撃姿勢を違えた射撃や、20榴やFH70と並べて撃つなど、陸自特科の理解へ向けての展示射撃を行なうのが通例だった。

こうした高い性能を持つ99式自走155mm榴弾砲は、部隊内では「99式15榴」や「15榴」、またその現場で制式年が重なる装備がなく容易に通じる場合などには「99式」など、ごく短く呼ばれることも多い。ちなみに愛称はその外観から「ロングノーズ」だそうだ。この長い砲身と大柄な車体は間近で見るとド迫力である。

15榴は車名のように1999年に制式化された。開発自体は1985年ごろから始まっている。当初は、前型の75式の砲身長を変更する程度の計画だったというが、その75式が90年代を目前にすでに旧態化が著しいとの指摘が多かったという。実際にモノになる頃にはさらに古びてしまうという懸念である。

その総火演での15榴の射撃。車体横方向へ砲口を向けて撃っている。砲身の延長上、発砲煙の先に飛翔する砲弾が見える。

この時代、大砲(火砲や野砲など)の諸外国軍での進歩は目覚ましく、主砲の砲身長や弾種、装填装置や射撃管制装置など、ほぼ全般的に技術的・機構的な進歩がみられていた。なおさら、75式を更新するにはゴッソリと新規開発する必要があった。結局、14年ほどを費やし、全身新しく造り上げられたのが15榴ということになる。車体は89式装甲戦闘車をベースとして三菱重工が、主砲と砲塔は日本製鋼所が開発、製造している。

特徴的なのは15榴と同時開発された専用の弾薬補給車「99式弾薬給弾車」がある。15榴と本車は連結できるそうだ。連結すると補給車から15榴へ弾薬の連続供給が可能だという。弾数が格段に増えるわけだ。

99式弾薬給弾車。15榴と同時開発された専用の弾薬補給車。15榴と連結し、弾薬の連続供給を行なう。写真/陸上自衛隊

また専用射撃指揮システムをデータリンクで結ぶと、射撃指揮所から遠隔操作することも可能だという。これが一部機能に限定されるものなのか全機能リモートなのかわからないが、従来の大砲運用や部隊・組織のありようを変えるようなハイテク装備の勢いがある。

となると、その価格は極めて高価であることは容易に想像つく。1両あたり10億円に迫る調達価格だといわれ、これは新鋭戦車並みかそれ以上とも思われる。だから年あたりの配備数は5〜6両前後にとどまった。その配備地域は北海道の陸自特科(大砲)部隊である。

前型の75式を更新する目的で、北海道の全特科部隊に完全配備することを計画していたものの、冷戦以降から、とくに近年に顕著な『脅威と防衛の南西シフト』などにより防衛大綱で火砲定数の削減が行なわれ、15榴は75式を全数更新することなく、全百数十両の現役数となっているようす。これで働き続けることになりそうだ。

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