【フェラーリ名鑑:26】珠玉のV12を搭載するフラッグシップ

フロントエンジンV12フェラーリ時代を定着させた「599」「F12ベルリネッタ」(2006-2015)【フェラーリ名鑑:26】 

【フェラーリ名鑑:26】珠玉のV12を搭載するフラッグシップ
フロントエンジン・リヤ駆動を採用するフェラーリ「599」。当時世界最強を誇ったハイパフォーマンスモデルだ。
575 M マラネロの跡を継いだV12フラッグシップモデル「599」。サーキット専用車の「599XX」や限定車「599 GTO」といった派生モデルを生み出し、やがて最高出力700PSを超える「F12 ベルリネッタ」へと至る。フェラーリのフラッグシップモデルを解説する。

Ferrari 599 / F12 Berlinetta / F12 tdf

FRへと回帰した3作目「599 GTB フィオラーノ」

フロントエンジン・リヤ駆動のレイアウトを採用するフェラーリ 599。2006年デビューのフラッグシップモデルだ。

575 M マラネロの後継車である「599 GTB フィオラーノ」が発表されたのは2006年のジュネーブ・ショーでのこと。ただし日本市場においては、商標の問題で正式な車名はシンプルに「599」とされている。

599は、前世代の550 マラネロ&575 M マラネロと同様に、フロントエンジン&リヤドライブの基本設計を継承したモデル。この時に至ってようやくV型12気筒エンジンをミッドに搭載するのは、スペチアーレと呼ばれる限定生産を前提とした、特別なモデルのみになるのだろうという考えが、フェラーリのカスタマーに生まれてきたように思う。だが、それを不満と思わないほどにフェラーリの12気筒FRスポーツは、素晴らしい運動性能を誇るモデルへと進化を遂げていたのだった。

V12エンジンは620PSを発揮

6.0リッターV12は最高出力620PS、最大トルク608Nmを発揮し、最高速度は330km/h以上とされている。

フェラーリの12気筒ベルリネッタがミッドシップからFRへと回帰して3世代。その走りが十分に煮詰められたのも当然のことといえる。フロントに搭載されるエンジンは、そもそもエンツォ フェラーリ用に開発されたエンジンをデチューンした5999ccのV型12気筒。最高出力は620PSに達し、これに6速のF1マチックを組み合わせた。

0-100km/h加速は3.7秒。最高速度330km/h以上というパフォーマンスは、当時のカスタマーを十分に納得させるものであった。599は、2012年まで生産が続けられるが、その間に行われたマイナーチェンジで特に大きな話題だったのは、日本市場においては価格改定と同時にCCMD(カーボンセラミックブレーキ)が標準装備化されたことだろう。

670PSを誇る「599 GTO」が限定で登場

GTOとはグラン・ツーリスモ・オモロガータを示し、サーキット専用の599XXに対して「公道走行を認証」するといった意味合い。

フェラーリは、この599をベースにサーキット専用車の「599XX」を限定生産しているが、そのロードゴーイング仕様ともいえる「599 GTO」が2010年に限定発売されたのも興味深いところだ。正式発表は同年の北京モーターショー。F1由来のエアロダイナミクス向上のためのテクニックや、磁性流体を利用した第2世代の電子制御ダンパーであるSCM2、カーボンセラミックもここで第2世代に進化を遂げている。

エンジンは599XXから受け継がれたもので、専用のクランクシャフトやインテーク、エキゾーストシステムの採用などによって、670PSの最高出力を達成。乾燥重量1495kgに抑えられた。組み合わされる6速F1マチックも、そのシフト時間はロードモデル最速とされていた。0-100km/h加速を3.35秒で、そして335km/h以上の最高速度を記録。599 GTOは、250 GTO、288 GTOに続く3世代目のGTOとしても話題になった。

ショートホイールベース化された「F12 ベルリネッタ」

599の後継モデルとして開発されたF12 ベルリネッタ。2012年にデビューしている。
6.3リッターの自然吸気V12エンジンは最高出力740PS/最大トルク690Nmを発生。

2012年のジュネーブ・モーターショーでは、599に代わる新型12気筒2シーター「F12 ベルリネッタ」が発表される。ベルリネッタというネーミングは、すでにフェラーリのカスタマーやファンにはお馴染みとなるクーペを意味するものだが、その前に掲げられる“F12”は、シンプルに12気筒車であることを示す。

F12 ベルリネッタは、フルモデルチェンジ=ボディサイズの拡大が一般論であるとするならば、それとは逆にホイールベースは599から30mm縮小された。それ以前に550 マラネロから599では一気に250mmも拡大されていたから、このF12 ベルリネッタでその流れに対してひとつの終止符が打たれたと言っていいだろう。

搭載されるエンジンは、ひと足先にデビューした2+2モデルのFF(フェラーリ フォー)と基本スペックは共通。つまり6262ccのV型12気筒だ。最高出力はさらに圧縮比を高めるなど専用のチューニングを受け、740PSに増強。この数字は599 GTOと比較しても70PSも強力なもので、0-100/h加速の3.1秒や340km/hという最高速度など、パフォーマンスデータにも着実なる進化が表れている。

後輪操舵システムを搭載した「F12tdf」

F12 ベルリネッタを内外共にチューンしたF12tdf。後輪操舵システムなどハイテクを満載したことでも知られる。

そしてフェラーリは、このF12 ベルリネッタにも魅力的な限定車を用意していた。それが2015年に799台の限定車として発表された「F12tdf」。最高出力は40PS増の780PSとされたほか、フェラーリ初の後輪操舵システム、バーチャル・ショートホイールベース・システムなど、後に登場する812 スーパーファストにも採用される多くの新技術を搭載した限定車だった。

SPECIFICATIONS

フェラーリ 599 GTB フィオラーノ

年式:2006年
エンジン:65度V型12気筒DOHC(4バルブ)
排気量:5999cc
最高出力:456kW(620PS)/7600rpm
最大トルク:608Nm/5600rpm
車両重量:1750kg
最高速度:330km/h以上

フェラーリ 599 GTO

年式:2010年
エンジン:65度V型12気筒DOHC(4バルブ)
排気量:5999c
最高出力:500kW(670PS)/8250rpm
最大トルク:620Nm/6500rpm
乾燥重量:1495kg
車両総重量:1605kg
最高速度:335km/h以上

フェラーリ F12 ベルリネッタ

年式:2012年
エンジン:65度V型12気筒DOHC(4バルブ)
排気量:6262cc
最高出力:545kW(740PS)/8250rpm
最大トルク:690Nm/6000rpm
乾燥重量:1525kg
車両総重量:1630kg
最高速度:340km/h以上

フェラーリ F12tdf

年式:2015年
エンジン:65度V型12気筒DOHC(4バルブ)
排気量:6262cc
最高出力:574kW(780PS)/8500rpm
最大トルク:705Nm/6250rpm
乾燥重量:1415kg
車両重量:1520kg
最高速度:340km/h以上

※すべてメーカー公表値

解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

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著者プロフィール

山崎元裕 近影

山崎元裕

中学生の時にスーパーカーブームの洗礼を受け、青山学院大学在学中から独自の取材活動を開始。その後、フ…