フォルクスワーゲングループ全体のBEV率はじわじわ上がり5.6%に

ポルシェ タイカンが半年で2万台弱を販売! 激戦区のEV市場で勢いを増すVWグループの現状とは?

フォルクスワーゲンのEV専用プラットフォーム、MEBのファミリー展開イメージ
フォルクスワーゲン グループは、2022年上半期にBEVの出荷台数を前年同期比で27%アップ。近年、ID.3を皮切りに、ID.4やID.Buzzなど100%電気で走るフル電動モデルのラインナップを続々リリースしている。
フォルクスワーゲン グループは、2022年前半に21万7000台のBEV(電気自動車)を全世界に向けてデリバリーした。新型コロナウイルス感染症拡大や半導体不足といった逆風が自動車業界に吹き荒れる中でも、前年同期比で27%のアップを記録している。また、グループ全体の総出荷台数に占めるBEVの割合は、3.4%から5.6%にアップしたという。

VW製BEVで最も売れているのは「ID.4」

フォルクスワーゲン ID.4 GTXのフロントビュー
2022年上半期、フォルクスワーゲン グループ中で最も出荷台数が多かったのがID.4。ティグアンサイズのコンパクトな電動SUVは、いま最もニーズの見込めるセグメントといえる。

原油価格の高騰を起爆剤として、電気自動車の売り上げが伸びている。2022年前半、BEVの世界販売台数トップの座は依然としてテスラが守っているが、猛スピードで首位に追いつこうとしているのが中国BYDだ。伝説の投資家ウォーレン・バフェット氏が支援する同メーカーは、バッテリーメーカーとして1995年に創業。現在では世界70を超える国と地域にEV、PHEV、FCVを展開している。3番手も同じく中国の上海汽車。日本経済新聞の調べによると、上位20社/グループのうち、実に12社を中国企業が占めていたという。

中国勢が強さを見せつけるなか、堂々4位に食い込んだのがフォルクスワーゲン グループだった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や半導体不足など自動車販売にとってマイナスな要因がひきもきらない中、BEVの販売ペースは右上がり。2022年上半期には、対前年同期比27%アップとなる21万7000台を全世界に向けてデリバリーした。

フォルクスワーゲン グループが2022年上半期に販売したBEVのトップ6モデルは次のとおり。

1位=フォルクスワーゲン ID.4/ID.5(6万6800台)
2位=フォルクスワーゲン ID.3(2万6000台)
3位=アウディ e-tron(スポーツバック含む。2万4700台)
4位=シュコダ エンヤック iV(クーペ含む。2万2200台)
5位=ポルシェ タイカン(クロスツーリスモ含む。1万8900台)
6位=アウディ Q4 e-tron(スポーツバック含む。1万8200台)

このうち、現在日本で購入できるのはスポーツカータイプのタイカンだけ。ID.4とエンヤック、Q4 e-tronは兄弟車で、トゥアレグサイズのコンパクトなボディに5人分のシート、使い勝手に優れるクロスオーバースタイルをもつBEVだ。ID.4は2022年中の日本上陸を予定しているというが、現時点(2022年8月)では時期未定。Q4 e-tronは2022年1月に国内発表を済ませており、2022年秋以降に発売することを明言している。

国産EV勢を脅かすアウディ

Q4 e-tronは国内価格や仕様が一部発表されているので、参考までにトヨタが先般発売した話題の新型EV「bZ4X」と比較してみたい。

■ボディ■
Q4 e-tron=全長4590×全幅1865×全高1630mm、ホイールベース2765mm、車両重量2100kg
bZ4X=全長4690×全幅1860×全高1650mm、ホイールベース2850mm、車両重量1920kg

■パワートレーン/航続距離■
Q4 e-tron
モーター最高出力=150kW
モーター最大トルク=310Nm
バッテリー容量=82kWh
航続距離(WLTPモード)=576km

bZ4X
モーター最高出力=150kW
モーター最大トルク=266Nm
バッテリー容量=71.4kWh
航続距離(WLTPモード)=559km

と、サイズも性能もわりあいに拮抗している。ちなみにQ4 e-tronは後輪駆動、bZ4Xは前輪駆動が基本で、いずれもモーターをもう1基加えた4WDモデルもラインナップする(Q4 e-tronは当面日本はRWDのみの販売)。

プライスの方もQ4 e-tronが599万〜716万円、bZ4Xが600万〜650万円と、いい勝負。後者はサブスクサービス「KINTO」のみの取り扱いであり、給電機能(V2H)もついている分CEV補助金が増額となるなど条件一定で比較ができないものの、アウディにしては攻めに攻めた価格設定といえる。Q4 e-tronは、アウディという看板を掲げていながらも、実のところ国産EVと真っ向からぶつかるライバルなのだ。

911の販売台数を抜いたタイカン

ID.4もさほど遠からずの価格帯となるはずで、日本導入の際にはこのクラスの電気自動車界隈はかなりの激戦区になることが想像できる。なにしろ、ライバルにはbZ4X、そして兄弟車のスバル ソルテラ、日産アリア、メルセデス・ベンツ EQA、BMW iX1、さらにヒョンデ アイオニック5、くわえて来年には中国BYDがATTO 3を携えて上陸するなど、なんとも大混戦状態である。

一方、ポルシェらしさを全開で表現したEVスポーツ「タイカン」も、2022年上半期だけで2万台に迫る出荷台数を誇るなど、販売好調。ちなみに2021年には合計4万1296台を販売しており、911の3万8464台を上回っている。依然として世界で一番売れているポルシェはマカンだが、2023年にデビュー予定の次期型はフル電動SUVとして登場するといわれている(内燃機関型も併売するとの説も)。

フォルクスワーゲンはさらに、ワーゲンバスのようなワンボックスデザインの電動MPV「ID. Buzz」も本国で販売をスタート。フラッグシップセダン「ID.AERO」も2023年にリリース予定と、続々EVポートフォリオを拡充していく。

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著者プロフィール

三代やよい 近影

三代やよい

東京生まれ。青山学院女子短期大学英米文学科卒業後、自動車メーカー広報部勤務。編集プロダクション…