不変のカワイらしさが多くのファンを虜に「フィアット・チンクエチェント」【最新コンパクトカー 車種別解説】

見れば誰もが頬を緩ませる稀有な存在感を放つ「フィアット・チンクエチェント」。歴史の長いモデルだがマイナーチェンジを細かく重ね、16年間に実に2000点近くものパーツが変更されている。スタイリング同様操縦性も個性に溢れ、ひと味もふた味も違う魅力は唯一無二のクルマと言える。
REPORT:竹岡 圭(本文)/小林秀雄(写真解説) PHOTO:神村 聖/平野 陽 MODEL:菅原樹里亜

異なる個性をもつ2つのパワーユニット

生誕 86年!? なんと! その歴史を紐解くと初代誕生は1936年まで遡るというから驚かされる。というよりも、そもそも現行モデルとなるフィアット500が、その前モデルとなるヌォーヴァ500の発売から50周年&終焉から30周年なんて言われていたわけで、とんでもなく歴史の長いモデルなのだ。

エクステリア

コロンとしたスタイリングは唯一無二。クローム仕上げのドアハンドルもアクセントのひとつだ。ホイールはグレード別設定で、「1.2CULT」は14インチスチールホイールを装備。

そして、この現行モデルだって登場したのは2007年。もはや15年も前のことになるわけで、その間16年に外観の小変更を含むマイナーチェンジが行なわれている。よく見ると結構変わっているし、見えないところまで含めると2000点近くのパーツが変えられたとも言われているが、とはいえ、ファンの方でないとパッと見の印象は変わらないと思う。雰囲気はまったくそのままだ。さて、現在はどういうラインナップになっているかというと「チンクエチェント 1.2カルト」、チンクエチェント ツインエア カルト」、「チンクエチェント ツイン エア ドルチェヴィータ」の3つに集約されている。

乗降性

エンジンは1.2l直列4気筒と、ツインエアと呼ばれる0.9l直列2気筒ターボモデルだ。どらも組み合わされるのは大枠ではAMTと呼ばれ、フィアットではデュアロジックという名称の、クラッチペダルのないMTシステムだが、近頃では珍しくなったシングルクラッチモデルとなるので、スムーズに走らせるには少々コツが必要だ。

最近主流のデュアルクラッチタイプは、常に隣のギヤがスタンバイしているので、オートモードで走ってもいわゆる普通のトルクコンバー付きATのようにギヤが切り替わる際のショックが少なくスムーズなクラッチなので次のギヤが待っているわけではない。なので、オートモードで普通のAT車のように走らせると、年を追うごとにかなり改善れてきたとはいえ、ギヤが切り替わるときに息継ぎをするようなショックと間が伴ってしまうのだ。

インストルメントパネル

古典的なデザインとポップな色使いが、どこかホッとさせてくれるインパネ。7 インチのオーディオディスプレイはApple CarPlayやAndroid Autoに対応。 普段使っている地図アプリをそのまま利用することができる。

しかし、MT車の変速時のように、つまりクラッチを切ってつなぐくらいのホンの少しの間を置くと、これはこれで見事にスムーズにつながってくれる。単純にクラッチペダルがないMTだと把握して、そのような気持ちで走らせると非常にダイレクトかつ、変速がメチャクチャ上手に決まった感じで、とても気持ちが良かったりするのである。

居住性

そういった意味で推したいのはツインエアエンジンだ。現在2気筒エンジンを搭載する量販モデルは、世界広しと言えどフィアット500のみ。その観点からも貴重なパワートレインであり、なんといってもそのトコトコと走るフィーリングが気持ちが良いのである。

うれしい装備

後席の背もたれは肩口のレバーを押すと倒すことができる。写真は一体可倒式だが、「TWINAIR DOLCEVITA」には5対5分割式が採用され、3名分の座席を保ちながら荷室を拡大できる。
月間登録台数   NO DATA
現行型発表     08年2月(新グレード 21年10月)
WLTCモード燃費   19.2 km/l 「ツインエア」系

ラゲッジルーム

のどかに走らせようと思えばその期待に応えてくれつつ、本気を出せば意外とシャープにも走れたりする。このいつでもドライバーと一緒、すぐ隣にいる感覚はこれでしか味わえないものがあるのだ。ボディサイズもかなりコンパクトで、後部座席に人を座らせる予定があるならば、屋根がファブリックになるため少しヘッドクリアランスの稼げている500Cモデルをオススメするが、この小さいからこその隣にいる感覚、かなり貴重である。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.142「2022-2023 コンパクトカーのすべて」の再構成です。

http://motorfan-newmodel.com/integration/142/

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