【火曜カーデザイン特集】 新型スバルWRXのデザインを考える

新型スバルWRXの黒いホイールアーチは2014年より予告されていた!

北米で発表された新型WRX
新型WRXのホイールアーチ部に装備された黒いガーニッシュが賛否を呼んでいるようだ。多くの意見はSUVっぽく見えてしまうので、ちょっとイメージが違うのでは? との声。ここではその謎を見ていこう。 by 松永大演 / Carstyling

黒いホイールアーチガーニッシュが話題

話題となっているWRXのホイールアーチガーニッシュだが、現状ではオーバーフェンダーのような黒いガーニッシュをつけるのはSUVの定番デザインなので、そう見えてしまうのは仕方ないのかもしれない。このガーニッシュは、フェンダーを傷から守る役割があるのだが、デザイン的にも重要な役割があると思う。

新型WRXは、往年のレーシーさも感じさせるが、加えてフィールドレスの魅力にも溢れる

最近ではSUVスタイルも普通に見慣れているので違和感はないが、出始めの時にはランクルなどの剛健なモデル対して、セダンやワゴンの背が高くなったようなクロスオーバースタイルは、場合によってはやさしい形すぎる印象があった。そのため、強さのアクセントをつける狙いとしても利用されているのがこのガーニッシュだ。また、クロカン4駆よりもちょっと小さめのタイヤを貧弱に見せないという効果もあっただろう。

ところが、それ以前の70年代前半までは似たような装備がオーバーフェンダーと呼ばれていた。これはボディ幅よりも外に出ていることが、現在のガーニッシュと大きく違うところで、レース仕様などで太いタイヤを装備した時にタイヤがはみ出ないようにする装備だ。かつては、レースに参加するクルマにはカテゴリーによっては必須の装備でもあった。

レヴォーグ&WRXの特徴はブリスターフェンダー

そこから転じたのがブリスターフェンダーで、こちらも太いタイヤをボディからはみ出させないようにした装備で、空力にも配慮できるものだった。黎明期のアウディ・クワトロなど既存のクーペをベースにフェンダーを造形したものが有名で、その後、ブリスターフェンダーをオリジナルのデザインとして形作ったものも多く登場した。実は最近の代表作がランエボだったり、インプレッサだったり、そしてレヴォーグやWRXでもある。

そんな流れの中で見ると、ホイールアーチガーニッシュは往年のサーキットを疾走するスポーティなモデルの印象もある。

VIZIV Adrenaline Concept / 2018 大胆なフェンダーデザインにも注目

そして注目していただきたいモデルが1台。2019年のジュネーブモーターショーで初出展されたコンセプトカーである、VIZIVアドレナリン・コンセプトだ。このモデルは、スバルのデザイン哲学である”Dynamic ×Solid” を表現する新たなデザインコンセプト ”BOLDER” (大胆)を具現化したものだという。

VIZIV Adrenaline Concept / 2018 デザインコンセプト “BOLDER” を突き詰めた表現

 そのためのデザインとして、VIZIVアドレナリン・コンセプトは、スポーツとフィールドの価値を無限大にバランスさせて表現したモデル。これは単に特定した1台のモデルに対するものではなく、すべてのスバル車が持っていくデザインコンセプトだという。さらに、スポーツ、フィールドそしてジャーニーを非日常の3つの価値に凝縮して捉え、表現しているという。

そうしたBOLDERの考えの中から生まれたのが、現行レヴォーグであり、またWRXなのだ。ある意味、フィールドレスの考え方がWRXに明確に表現されたと考えてもいいのかもしれない。

かつてのコンセプトカーがホイールアーチをブラック化していた

実はSUVでなくてもホイールアーチをブラックガーニッシュ化するアイデアは、スバルがかつてより熟成してきたアイテムでもあった。例えば2014年のグランツーリスモ6用にデザインされたモデル、VIZIV GT Vision Gran Turismoに始まり、2017 VIZIV Performance Concept、2017 VIZIV Perfirmance  STI Concept、そして2018 VIZIV Tourer へと引き継がれる。

VIZIV GT Vision Gran Turismo / 2014 架空のスポーツモデル
VIZIV Performance Concept / 2017 レーシーさを表現
VIZIV Performance STV Concept / 2017 さらなるレーシーさの追求
ViZIV Tourer Concept / 2018 エレガントな表現も可能か

つまりは、表に公表されているだけでも2014年より、スバルではやりたくて仕方がなかった表現だったのかもしれない。新型WRXの表現は、確かに大胆すぎなのかもしれないが、スバルのそんな強い思いをもう一度噛み締めてみるのも面白いかもしれない。

キーワードで検索する

著者プロフィール

松永 大演 近影

松永 大演

他出版社の不採用票を手に、泣きながら三栄書房に駆け込む。重鎮だらけの「モーターファン」編集部で、ロ…