護衛艦「あさぎり」型、先代「はつゆき」型とともに艦隊基幹・主力を務める汎用護衛艦

護衛艦「あさぎり」型(1番艦、DD-151)。戦後の新世代艦艇整備で計画された、「はつゆき」型とともに護衛艦隊の中核を成す存在としての汎用護衛艦(DD)だ。写真/海上自衛隊
護衛艦「あさぎり」型は先代の「はつゆき」型を拡大発展させたもので、1980年代前半より計8隻が建造された。「はつゆき」型12隻と合わせて計20隻の陣容を整え、各護衛隊群に汎用護衛艦を配備する「八八艦隊構想」の基幹を成す艦として整備された。艦体は右舷側と左舷側で印象の違う外観が特徴だ。
TEXT&PHOTO◎貝方士英樹(KAIHOSHI Hideki)

いまも現役 昭和終盤と平成初期に登場した護衛艦

2番艦「やまぎり」(DD-152)を俯瞰する。艦全体をワイド&ローフォルムとし武装をバランスよく配置した。艦首から順に76mm単装速射砲、アスロック発射機、2本の煙突の間にSSM発射機、最後尾に短SAMシースパロー発射機を置いている。大型化された飛行甲板と格納庫が目立つ。写真/海上自衛隊

護衛艦「あさぎり」型は、「はつゆき」型の基本設計を踏襲しながら、基準排水量を増加させ、艦体に余裕のある拡大改良型として計画された。1番艦「あさぎり」の起工は1985年(昭和60年)、進水は翌86年(昭和61年)、竣工は88年(昭和63年)。そして最終8番艦「うみぎり」の竣工が1991年(平成3年)と、昭和時代の終盤と平成初期にかけて登場した護衛艦だ。1番艦「あさぎり」と2番艦「やまぎり」は2000年代の初期に練習艦へと艦種変更されたが、その後に護衛艦へ戻るという転籍の経緯を持っている。全8隻は現在も現役にある。

拡大改良の主なポイントは上部構造物を鋼鉄製に変更したこと。これは「はつゆき」型と同様の措置だ。そしてこれによる重量増加で抗堪性を向上させた。艤装は「はつゆき」型からほとんど変更はなかったが、哨戒ヘリコプターを収容する格納庫を拡大させた。これで計2機を収容することが可能になった(通常搭載されるのは1機のみ)。しかしこの大型格納庫は艦体規模からすると若干マッチョな構造となったようで、とくに右舷側は後部煙突を取り込んだ大きく一体的な平面構造物で構築され、右舷側と左舷側で造りと見た目の違う外観が本艦の大きな特徴となっている。

3番艦「ゆうぎり」(DD-153)。後部の格納庫は右舷側では2本目の煙突を取り込むように形成され、平面の大型構造物となっているのが特徴。写真/海上自衛隊
2番艦「やまぎり」の後部を左舷側から見る。飛行甲板では哨戒ヘリコプターの発着艦が可能。格納庫は哨戒ヘリ2機を収容可能で、SH-60J/Kなどを格納する。写真/海上自衛隊

そして艦体は全般に低いフォルムとされた。艦橋を3層構造から2層半に改め、煙突も低い2本とし、全長を7m、全幅を1m増やし、排水量も500トン増して大型化させた。「はつゆき」型は重武装でトップヘビー気味だとの指摘があったようで、これに対して艦体を大型化させることで武器類の配置を余裕を持って行えたようだ。また、主機の動かし方を見直し、巡航時はガスタービンを2基で運転、高速時は4基運転するCOGAG方式とした。これは同じ種類や異種のガスタービンを複数組み合わせる推進方式を指し、これで出力も向上した。

写真右手は2012年観艦式での6番艦「せとぎり」(DD-156)。左手は「はつゆき」型7番艦「はるゆき」(DD-128)。前代の「はつゆき」型と「あさぎり」型は、ほぼ同じ時代に整備されたが、試行錯誤の中で艦体の姿形などに違いが出ているのが面白い。
2番艦「やまぎり」によるアスロックの射撃。武装種をバランスさせ、あらゆる洋上戦闘に対応するありようは前代の「はつゆき」型から引き続き、以降の汎用護衛艦でも同様になっている。写真/海上自衛隊

武装面では短SAM(シースパロー)の次弾装填装置が順次整備され、防空能力は強化された。5番艦の「はまぎり」以降は当時国産新型の三次元レーダー「OPS-24」を搭載した。データ通信システム(データリンク)は送受信兼用の11型(リンク11)に更新した。「はつゆき」型では受信用のみの14型(リンク14)を装備していたが、これより情報交換能力は向上したという。武装全般は「はつゆき」型と変わらないが、同型での不具合等を改善し性能向上が図られている。

スペック)
主要要目
基準排水量      3,500t(5番艦「はまぎり」以降3,550t) 
主要寸法         137×14.6×8.8×4.5m(長さ、幅、深さ、喫水)
主機械            カスタービン4基2軸(COGAG方式)
馬力               54,000PS 
速力               30kt
主要兵装         62口径76mm単装速射砲×1、高性能20mm機関砲 (CIWS)×2、短SAMシースパロー8連装発射機×1、4連装SSM発射機×2、アスロック(ASROC)発射機×1、3連装短魚雷発射管×2、哨戒ヘリコプター×1機 
乗員               220名

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著者プロフィール

貝方士英樹 近影

貝方士英樹

名字は「かいほし」と読む。やや難読名字で、世帯数もごく少数の1964年東京都生まれ。三栄書房(現・三栄…