豊田章男氏はこう言った「この場所を今後50年のクルマづくりの聖地、実証実験コネクテッドシティに変革させる」

インベンターガレージには、インベンターが発明品のプロトタイプを製作するものづくりのスペースや、それらを迅速に検証できる実証スペースが備えられており、トヨタやトヨタ自動車東日本による試作支援も行なわれている。また、インベンターが開発に集中できるよう宿泊施設などの施設に加え、ウィーバーズと呼ぶ住人と交流できるスペースも併設されている。
「KAKEZAN(カケザン) 2026」とのタイトルが銘打たれた取材会でインベンターガレージの一部を巡るツアーがあった。そこで見聞きした情報をお伝えしていこう。
冒頭で触れたように、ウーブンシティは元トヨタ自動車東日本・東富士工場だ。1967年に操業を開始し、閉鎖する2020年までの53年間に約752万台のクルマを生産した。最初に生産したのはトヨタ・スポーツ800。以降、センチュリー、クラウンシリーズ、カローラシリーズ、ジャパンタクシーなどさまざまなクルマを生産してきた。
東富士工場の閉鎖に合わせ建屋は取り壊す計画だったが、豊田章男社長(当時)と従業員との直接対話から存続が決定。章男氏は「この場所を今後50年のクルマづくりの聖地、実証実験コネクテッドシティに変革させる。意思があれば必ずできる」と話したという。
ウーブンシティの立ち上げメンバーは、「東富士工場のみなさんが帰って来られる場所を作りたい」と考えた。「だからこそ、表面的に残すのではなく、工場をそのまま残そうと。それを未来のウーブンシティにつなげていこうと。私たちメンバーが、『この建屋を残しませんか』と提案してプロジェクトをスタートした経緯がある」と説明した。

プロジェクトメンバーは、「何があれば実証実験を加速させることができるか」考えた。その結果、ものづくりができる場所、そして作ったものをすぐに試せる場所、イベントができる場所、ウィーバーズとインベンターが交流できる場所、インベンターが宿泊できる場所、こうした場所をひとつの施設に詰め込んで整備することにした。考えをまとめるにあたっては、30社以上のインベンターからヒアリングを行なったという。



テストエリアに割り当てられた一角には、東富士工場時代に使われていた「アンドン」が残されている。現場の異常や稼動状況をリアルタイムで可視化するシステムだ。「東富士工場のおもかげをうまく生かしたいと考え、このようなレガシー品が至るところに配置されている」と、ツアーガイドを務めたプロジェクトメンバーは説明した。
長年の使い込みによって生まれた床の段差もあえてそのまま残している。通路の壁には300枚の色見本がモザイクタイル状に貼られている。東富士工場をリノベーションしてインベンターガレージに再生する際、柱や壁などはできるだけ工場時代と同じ色で再塗装したいと考えた。その際に使った色見本だという。実際には400種類程度になったそう。

エントランスエリアと通路を仕切るカーテンには、ヘッドライトの鏡面部分などに使われるスパッタリング(コーティング技術の一種)の技術を使って表面処理がなされており、独特の表情を醸し出している。






「インベンターガレージで最もシンボリックな場所」と説明するのは、プレス機があった場所を活用した、最大で約200名を収容できるプレゼンテーションエリアだ。ボディの側面を構成するドアパネルを成形する大型のプレス機を撤去した後にできた巨大な空間を生かしている。現役当時はトリミングした端材を下に落とし、地下のピットでベルトコンベアに載せて搬送していた。地下深く掘り下げているのはそのためである。壁には潤滑油のシミが残っているが、高圧洗浄機をかけても落ちなかったそう。53年の歴史の重みを現在に伝えている。




上を見上げると、屋根を支えるトラス構造とともに、プレス金型を搬送するクレーンがそのまま残されているのがわかる。屋根は工場時代よりも強度の高いものにふき替え、太陽光パネルを設置している(難工事だったそう)。エントランスの近くには、車両を異なるレーンに搬送していたロボット(Nachiブランドの不二越製)を「挑戦の象徴」として元の場所から移して設置している。近くのテーブルにはバイス(万力)が残されていた。
テストエリアの一部とラボエリア(いずれも広大だ)は、取材時はウーブンバイトヨタの技術とインベンターズの実証プロジェクトを紹介するエリアに割り当てられていた。
「まわりに似たようなインベンターがいるので、刺激になる。短期的に泊まることもできる。研究に没頭する環境が整っているので、エンジニアにとっては夢のような世界」
インベンターのひとりはインベンターガレージの印象をこう話していた。「未来の当たり前」を生み出す場所は、工場時代の記憶を残しながら、開発や実験を加速させるために不可欠な、働く、作る、試す、交流する、生活する機能がシームレスに配置されている。
トヨタはウーブンシティで何を生み出すのか? ヘリテージ×イノベーションのKAKEZAN2026 | Motor Fan|自動車情報のモーターファン
