店舗の隣にある元繊維工場に保管されている圧倒的な数のバイクたち。

GARAGE521のカスタムカブを紹介するラストの記事は、センス光るGARAGE521店主、若尾さんの変態ぶりに触れたい。というのも、ここまでのカスタムセンスと技は誰でも簡単に身につくものではなく、美大出身で映画セットまで手がけた若尾さんだからこそ。でもそれだけでは語り尽くせない。なんと言っても若尾さんは大の変態さんだったからだ。

実はスズキ・ジェンマも大好物。

GARAGE521として再スタートした当時に取材させていただいたのだが、それから10年近く経ち店舗がずいぶん大きくなった。隣接する繊維工場の跡地を幸運にも入手することができたからで、そこに残る家屋を組み立て工場やパーツ置き場としている。ただ、キモはそこではない。家屋の裏に元繊維工場が建っているのだが、そこまでの中庭がとんでもないことになっている。数えきれないほどのバイクたちが車種ごとに整列しているのだ。

ホンダ・スペイシーも大量にストックしている。

さらにはスバル360やスバルR-2、ミニカスキッパーといった360cc時代の軽自動車が屋根の下に眠っている。実は若尾さんのお父さんは有名な元スバルのデザイナーであり、そのせいでスバル製の自動車が何台も保管されているのだ。とは言え、そのほとんどが不動車。見つけるとついつい買ってしまうという収集癖の塊のような人なのだろう。

希少なはずのヤマハ・ジッピィが何台も保管されていた。

元繊維工場の内部に潜入すれば、変体の領域に達した収集癖が遺憾なく発揮されている。同じ車種を何台も入手しては並べて悦に入っているのだ。そしてそのほとんどが原付という点にも注目したい。もちろん50ccの1種が多いのだが、125ccまでの2種モデルも数限りなく揃っている。外には250スクーターのホンダ・フュージョンも大量に置かれていたが、基本はやはり原付なのだ。

カワサキB11なんてレアなバイクもある。シリンダーが固着して外せず、このまま買う人がいれば譲りたいとのこと。

これらは若尾さんが若い頃に好きだったモデルが中心になっている。ところが1台毛色の異なるマシンがあった。それこそカワサキB11で、昔好きだったわけでもなく「珍しいから」手に入れてしまった。不動だったのでエンジンを開けようとしたところ、シリンダーが固着してどうしても抜けない。そのままの状態で放置されていて「欲しい人がいれば譲ります」とのこと。以下は圧巻の様子を写真でお伝えしよう。

工場の外にはホンダ・リードがズラリと整列していた。
ホンダ・フュージョンの一角。珍しいリトラ仕様は1983年に発売されたスペイシー125。
4輪も数台ある。手前のスバル360や奥のR-2のほか、三菱ミニキャブやミニカスキッパーもあった。
工場の奥にはラジコンのためのコースまで作ってしまった。
レオーネやレックスなど70〜80年代のスバル車が何台も置いてある。

アグレッシブなスタイルのレーサーカブ

スワローハンドルやテレスコフォークなどでライポジと走りの良さを追求。

GARAGE521のカスタムスタイルは基本的にスーパーカブの特徴を排して独自のものに生まれ変わらせることにある。以前の記事で紹介したように、それらの多くがアップハンドルによるチョッパー系のスタイル。ただ、前後フェンダーやレッグシールド、ハンドルを外すことは共通ながら、このようにレーシーなスタイルとすることもできる。レーサーカブと名付けられたこのマシンは、まさにスポーツできるカブといった印象を受けた。

ボディ全体をツヤ消しブラックで仕上げてある。

フロントフォークをCD50純正に入れ替えることでワイドなタイヤがよく動くセッティングになり、キャスター角も変化している。これに合わせてスイングアームを延長加工することで、ロングなホイールベースとしている。これらのカスタムにより重量も重くなっているため、ベースのC50エンジンでは役不足になる。そこで110ccまで排気量を拡大して対応させている。

スイングアームを延長加工してロングホイールベース化してある。

排気量を110ccまで拡大すればスポーティな走りが可能になる。さらにワイドタイヤとロングホイールベースにしたことで不安になるのがフレーム剛性だ。そこで純正フレームの上へサブフレームを追加して剛性アップを図っている。そのサブフレームにはワンオフ製作されたサブタンクを装備する。これにより長距離走行時の不安を払拭しているのだ。

C50エンジンをベースに110ccまで排気量を拡大してある。キャブはPC20だ。
CD50純正フロントフォークを移植して2.15リムを組み合わせた。
小ぶりの2眼メーターがスポーティ。

ハンター風でもC50ベースのオーツカブ

新しい試みとも言えるハンターカブ風のカスタムスタイル。

店舗を見ていて個人的にとても興味を抱いたのが、このCT125ハンターカブ風にカスタムされたC50ベースのマシン。リトルカブ50周年スペシャルのような色合いが目をひいたというのもあるが、なんといってもカブとは思えないほど大きい。実際跨ってみるとカブのライディングポジションではなく、オフロードバイクのそれに近い。これはフロントフォークとスイングアームを加工しつつ、前後18インチタイヤとしたことで実現した。

前後タイヤを18インチ化したことで全体的に大きくされている。

スタイル的にはCT125ハンターカブによく似ている。というのも前後のウインカーとテールランプはCT125純正をそのまま移植してあるから。さらにハンドルもCT125純正で、SP武川製のDNメーターを装着している。またマーシャル819ランプをヘッドライトとして、ワンオフしたライトガードを装備させた。C50にCT125の純正パーツを移植すると、どうしても違和感を覚えるスタイルになりそうなものだが、これもさすがのセンスと言えそうだ。

フロントフォークはワイド化+ロング加工されている。

ここまでボディが大きくなると当然C50純正のエンジンではまともに走らない。そこで排気量を75ccまで拡大してハイカムを入れるとともに、キャブレターをPC20へ、マフラーをモリワキ製へと変更している。かなり刺激的なエンジンになっているはずだ。

ハブはカブのものだがリムをヤマハSR400純正として18インチのブロックタイヤを履かせた。

前後にヤマハSR400純正ホイールリムを使うことで18インチ化を実現しているが、フロントフォークをロング加工してあることもポイント。さらにスイングアームをC50純正に行灯と呼ばれる古いカブのものを組み合わせてある。古いカブのスイングアームは後端が上へ跳ね上がるように作られており、車高をアップさせるのにピッタリだったということ。ロングホイールベースにもなっているため、リヤスタイルをどう締めるかも問題。若尾さんはリトルカブ純正のリヤキャリアを2つ合体させて長さを合わせるとともに、ワイド過ぎないスタイルを生み出した。随所に匠の技が光る1台となっている。これも変態さんならではのセンスと言えそうだ。

シートとキャリアはリトルカブ純正だがキャリアは2個を繋ぎ合わせてロング化。
純正と行灯カブのスイングアームを組み合わせてロング化+車高アップさせている。