WGPも。鈴鹿8耐も。最強だった “あの頃のホンダレーシング” をDioで蘇らせる
1988年に登場した初代ホンダDio(型式:AF18)は、それまでの実用スクーターとは違う路線を打ち出した1台だった。シャープなボディラインや軽快な2ストロークエンジン、大容量メットインなどを武器に、当時の若者たちから圧倒的な支持を獲得。90年代スクーターブームの土台を作った存在と言ってもいい。
そんなAF18型Dioをベースに仕上げられたこの車両は、単なる懐かし系カスタムでは終わらない。オーナーが青春時代に体感した“ホンダレーシング”の空気感を、スクーターへ落とし込んだ1台である。白・赤・青を組み合わせたトリコロールカラーは、HRCワークスマシンを強く意識したもの。NSRやRVFなど、当時サーキットで輝いていたレーシングマシンへの憧れを、初代Dioというフィールドで蘇らせているのだ。
注目なのは、そのカラーリングが単なるイメージ再現ではないこと。オーナー自身が描いたラフな塗り絵をもとに、同級生が営む「ガレージペイント・フリーダム」が全塗装を担当。フレーム裏までしっかりレストア&ペイントされており、細部まで徹底して作り込まれている。さらに外装にはKスタイル製アンダーカウルや社外製テールカウルを装着。街道レーサーを思わせるシルエットに加え、サイドへ大胆に入るDUNLOPやMOTULロゴが、当時のレーシングスクーターらしい雰囲気を強烈に演出する。“90年代スクーター小僧”が憧れたヤンチャ感までしっかり再現されているのだ。
68cc化+エンジンスワップで“走れるDio”へ進化
このマシンが本気なのは外装だけではない。エンジン周りも、大幅にアップグレードされており、スクーターチューン好きなら思わずニヤける内容だ。車体はAF18型Dioながら、エンジンにはAF35ライブDio系ユニットをスワップ。つまり、シリンダーが直立している縦型エンジンから、シリンダーが寝た横型エンジンへと換装している。さらにマロッシ製ボアアップキットによって排気量は68ccにアップされ、シンコーメタル製プーリーやステージ6製クラッチなど、トータルでリセッティングしているのである。
そのエンジンに組み合わされるのは、Kブレイン製ワンオフチタンチャンバー。美しい焼き色と独特の膨張室形状が強烈な存在感を放ち、見た目だけでなく“速そう”なオーラを漂わせる。しかもワンオフならではの特性変更によって、オーナー好みのフィーリングへ仕上げられているという。
足周りも抜かりなし。RPM製ラジアルマウントキャリパーや大径ディスクで制動力を強化し、ライブディオ系の社外製フロントフォークにライブディオ6本スポークホイール(初代AF18ディオのスチール製3本スポークに対してアルミ製6本スポーク)との組み合わせでレーシングイメージを演出。ブルーアルマイトが美しいブレーキレバーはKN企画製だ。そして個人的にグッときたのが、フロントポケットへ追加されたスピーカーとMP3プレーヤー。速さだけじゃない。音楽も、光り物も、仲間との夜遊びも!含めて90年代スクーター文化だった──そんな“あの頃の空気”まで、このDioにはしっかり詰め込まれている。
今見ると、初代AF18型Dioは決して大きな車体じゃない。でも、そのコンパクトなボディへ青春時代の憧れを全部詰め込めるところこそ、2ストスクーター最大の魅力なのかもしれない。

初代AF18型Dioをベースに、80年代HRCワークスをイメージした白・赤・青のレーシングカラーで大胆フィニッシュ。白ホイールもレーシーな雰囲気に一役買っている。当時キラキラして見えた“ホンダレーシング”への憧れを、スクーターで再構築した1台だ。■MACHINE:ホンダディオ ■OWNER:Sさん

大胆なエアロ形状が特徴のKブレイン製アンダーカウルや随所にちりばめたレーシングなロゴによって、当時のレーシングシーンの熱さを再現。90年代カルチャーを知る世代なら、この雰囲気だけでニヤけてしまうはず。
メーター周り

社外製フルデジタルメーターをスマートにビルトイン。現代的な視認性を持ちながら、車両全体の世界観も崩していない。セッティングには台湾カスタムシーンでも人気のKOSO製タコメーターを使用している。
フロント足周り

社外製フロントフォークにRPM製ラジアルマウントキャリパーで足周りを強化。Φ200mmディスクローターでブレーキ力もアップ。タイヤはダンロップTT-93GPの90/90-10サイズを履く。
フロントポケット

フロントポケットには、スピーカー&MP3プレーヤーを追加。左側の赤いスイッチは当時クルマと一部の高級モデルにしか採用されていなかった憧れのハザードスイッチ。当時の“夜遊びスクーター文化”を思い出させる、遊び心満載のポイントだ。
チャンバー

このマシンのアイキャッチとなっているKブレイン製ワンオフチタンチャンバーを装着。カチ上げ角度や焼き色、膨張室形状まで含め、まるで90年代ワークスマシンのような迫力を放つ。リヤホイールはライブディオZX用アルミ製6本スポークタイプを流用。タイヤはダンロップTT-93GPの110/90-10サイズを履く。
エンジン周り

レーシングな右側に対して左側はスクーターらしいメカニカルな雰囲気だ。エンジンはマロッシ製68ccボアアップKITで排気量アップ済み。ケーヒン製PWKΦ24mmキャブレターをエアファンネル仕様でセット。駆動系は、シンコーメタル製プーリー&トルクカム、ステージ製スポーツクラッチ、UPS製クラッチアウター、ジャイロ用センタースプリングを組み合わせる。駆動系カバーは大胆にカットされ熱ダレ対策もバッチリだ。また赤く塗られたフレームもド迫力!見た目だけでなく、“ちゃんと速い”Dioとして作り込まれている。
※この記事は月刊モトチャンプ2023年6月号を基に加筆修正を行っています