またがってニーグリップ! なのにアクセルひとつで走れちゃう

SUZUKI ストリートマジック|1997年発売
まず目が行くのは、車体中央を通るゴツいツインチューブフレームと、その上に載った燃料タンク。一般的なスクーターのように足を前へそろえるのではなく、普通のミッション車と同じようにまたがって乗る。しかもヒザでタンクを挟んでニーグリップまでできる。
ところが、左手にクラッチレバーはないし、左足でギヤを操作する必要もない。
49ccの2ストロークエンジンに、クラッチ操作やギヤチェンジを必要としないVベルト無段変速を組み合わせる。見た目はスポーツバイクそのものなのに、操作はスクーター感覚というわけだ。スズキが掲げた「速い、カンタン、カッコいい」という言葉どおり、バイクらしく操る楽しさとスクーターの手軽さをくっつけてしまった一台だ。

スクーターなのに、ヒザで挟める燃料タンクを車体中央に配置。ニーグリップして車体を抑え込めるのがストマジ流(画像はオーナー車)。PHOTO:モルツ

足を置くのもフラットなステップボードではなく、ミッション車のようなステップ。踏ん張ったり、ニーグリップと合わせて車体を抑え込んだりできる(画像はオーナー車)。PHOTO:モルツ
横から眺めると、さらに不思議だ。本来ならエンジンがありそうな車体中央がスカッと空いていて、エンジンは後方へ。実車を見たときも、「小さいけど華奢じゃない」という印象が強かった。
前後12インチの太いタイヤにゴツいフレーム、アップライトなマフラー。かなり男前なのに、50ccらしいコンパクトなサイズのおかげでどこか愛嬌もある。カッコよさとカワイさが同居している、この妙なバランスもストマジらしさだ。
7.2ps+倒立フォーク! 見た目だけの変わり種じゃない
エンジンは、49cc空冷2ストローク単気筒で、最高出力7.2ps/6750rpm、最大トルク0.82kgm/6000rpm。50ccクラスとして十分元気なポテンシャルを持っていた。
車体側もしっかりしている。スポーツモデル並みの高剛性ツインチューブフレームに、倒立式フロントフォーク、フロントディスクブレーキを採用。タイヤは前110/80-12、後120/80-12という太めの12インチ。当時はワンメイクレースも全国各地で開催された。

フロントにはディスクブレーキを採用。12インチホイールと倒立式フロントフォークを組み合わせ、スポーツ色を強めている(画像はオーナー車)。PHOTO:モルツ
そしてハンドル周りは驚くほどシンプル。スクーターらしく必要な操作系をまとめつつ、メーターも小ぶりな丸型ひとつ。普通のスポーツバイクとは違う、ストマジ独特の軽快感がここにも表れている。

丸型スピードメーターを中心としたシンプルなコクピット。クラッチレバーもシフト操作も不要だから、見た目ほど身構えずに乗れる(画像はオーナー車)。PHOTO:モルツ
またがってニーグリップして、太いタイヤでバイクらしく操る。でも信号が青になったらアクセルをひねればOK。そんな気楽さがストマジの持ち味だった。
通学快速にするもよし、街中をブラブラするもよし、ちょっと走りを楽しむもよし。ストマジは遊び方をこちらに押しつけてこない。そこが良いのだ。
【SPECIFICATIONS|ストリートマジック】
総排気量:49cc
エンジン:空冷2ストローク単気筒
最高出力:7.2ps/6750rpm
最大トルク:0.82kgm/6000rpm
全長×全幅×全高:1635×710×965mm
重量:73kg(乾)
タイヤ:110/80-12・120/80-12
発売当時価格:18万4370円(税込)
丸目+アップフェンダー! 「ストリートマジックII」はさらに遊んだ

同じ1997年には、ストリートマジックをもっとオフロード方向へ振った「ストリートマジックII」も追加された。
スタンダードモデルの角型ヘッドライトから、ガード付きの丸型ライトへ変更。さらにアップフェンダーやディスクガード、スチール製ペグなどを加え、見た目はグッとオフ車寄りになった。
ホイールはスタンダードモデルのスチール製からENKEI製アルミキャストホイールへグレードアップ。フロントタイヤも120/80-12へ太くなり、前後同サイズに。乾燥重量は78kg。基本となる49cc・7.2psエンジンとVベルト無段変速はストリートマジックと共通だ。
本格オフロード車になったわけじゃない。でも「この車体なら、こんな格好もアリでしょ?」とさらに遊んでしまうあたりが、いかにもストマジらしい。
【SPECIFICATIONS|ストリートマジックII】
総排気量:49cc
エンジン:空冷2ストローク単気筒
最高出力:7.2ps/6750rpm
最大トルク:0.82kgm/6000rpm
全長×全幅×全高:1645×715×975mm
重量:78kg(乾)
タイヤ:120/80-12・120/80-12
発売当時価格:21万9450円(税込)
「これって原付なの?」と思わせた時点でストマジの勝ち
当時ストマジに乗っていたオーナーからは、「外車だと思われたり、『これって原付なの?』と言われることも多かった」という声も。ツインチューブフレームに太いタイヤ、普通のスクーターとはまるで違う姿なら、それも納得だ。
スクーターだから足をそろえて乗らなきゃダメ。バイクの形ならクラッチとギヤがなきゃダメ。そんな決まり、誰が作った?
またがって、ニーグリップして、しっかり踏ん張れる。それでいて操作はアクセルひとつ。1997年のストリートマジックは、「スクーターってもっと自由でいいじゃん!」をそのまま形にしたような一台だった。
※この記事は月刊モトチャンプ2025年12月号を基に加筆修正を行っています
【モトチャンプ編集部】