もはやターゲットはプリウスではない! ホンダ・インサイトで徹底的に走り込んでみた【インプレッション】
- 2019/03/27
- ニューモデル速報

三代目となる新型インサイトは1.5ℓ i-MMDを搭載。クラス上の静粛性と走りを備えて登場した。ホンダハイブリッドの代名詞とも言えるインサイト。しかしハイブリッドが珍しいものではなくなった今日、三代目はハイブリッドであることのその先、つまりクルマとしての本質的価値を磨き上げて登場した。
TEXT●石井昌道(ISHII Masamichi)
PHOTO●平野 陽(HIRANO Akio)
システムもコンセプトも先代からガラリと変貌

インサイトはトヨタ・プリウスとともに日本が誇るハイブリッドカーのヒストリーを紡ぎ上げてきた。初代は、プリウスが1997年、インサイトが99年に発売され、それぞれが本格普及前夜の実験的な雰囲気があった。特にインサイトはアルミボディを採用した超軽量な2シーターで、燃費コンシャスのために利便性も採算も度外視したぶっ飛んだモデルだった。
ハイブリッドカーが一般的になり始めたのは二代目プリウスがマイナーチェンジされた2005年頃からで、注文から納車まで数ヵ月掛かるほどの人気車種へとなっていった。その波が盛り上がっていったところで09年の2月には二代目インサイト、5月には三代目プリウスが相次いで登場。両車は月間販売台数首位を争うなど大いに盛り上がりをみせ、いよいよハイブリッドカーが乗用車のメインストリームに躍り出たことを印象付けたのだった。
プリウスのハイブリッドシステムは、基本的には初代から連綿と続き、改善・改良を積み重ねたもの。エクステリアデザインも富士山のシルエットのようなサイドビューが二代目から現行モデルまで続いていて、コンセプトに不変性がある。
その一方でインサイトは初代と二代目、二代目と三代目の間に空白の期間があり、コンセプトやハイブリッドシステムも関連性は薄く、スクラップ&ビルドを繰り返す結果となった。二代目インサイトはモーターもバッテリーも最小限に抑えたシンプルで低コストなハイブリッドとして、より多くの人に低燃費な乗用車を提供しようという高い志があり、発売当初こそ大人気となったが、徐々に下降線を辿った経緯がある。その原因はいくつか考えられるが、シンプルなハイブリッドシステムはリーズナブルでそこそこの燃費性能を持っていたものの、乗ってみるとハイブリッドカーらしい電気駆動感が薄く、エンジン車から乗り換えた時の驚きや感動が少ないこと、ハイブリッドカーの大衆化を目指すあまり、システム以外のところも低コスト化が目立ったことなどが、人気にも影響したのではないだろうか。
スクラップ&ビルドは、自動車メーカーにとって負担が大きいかもしれないが、次に出てくるモデルは一体どんな生まれ変わりを見せるのだろうかという楽しみもある。三代目インサイトはまさにそういったモデルで、ハイブリッドシステムは以前とまったく別モノになり、デザインも大衆車然としていた先代と一転して堂々たる体躯とエレガントな雰囲気を漂わせるようになった。
ホンダは「すべての人に生活の可能性が拡がる喜びを提供する」ことを目指しており、二代目インサイトも当時はまだ珍しかったハイブリッドカーを身近な存在にした意義は大きかったが、現在の成熟した日本の自動車ユーザーにとって環境負荷の低減を実現しつつ、質の高いカーライフが送れることは重要項目。三代目インサイトは見た目だけでもそれを期待させる。
ハイブリッドシステムはすでにオデッセイやステップワゴン、クラリティPHEVなどに採用されているSPORT HYBRID i-MMDを採用するが、二代目インサイトではIMAという1モーター式を採用していた。現在ホンダは、DCTを用いる1モーター式のSPORT HYBRID i-DCD(フィットやフリード)、3モーター式のSPORT HYBRID SH-AWD(NSXとレジェンド)を含め3つものシステムを持っている。
2モーターとなるi-MMDは中核的な存在であるとともに、エンジンは基本的には発電に徹し、電気モーター駆動がメインなのが特徴。ただし駆動用バッテリーの容量は一般的なハイブリッドカー並なので、エンジンが生み出す電力で電気モーターを回して走るハイブリッドドライブモードが大半となるが、エンジンを止めたEVドライブモードと、高速クルージング用にエンジンが直接タイヤを駆動するエンジンドライブモードがある。


極めてEVに近い動き出し エンジンの存在感は薄い

インサイトの走りの雰囲気はEVに近い。走り出しから電気モーター特有の力強いトルクで押し出され、スムーズに速度が伸びていく。ゼロ発進時のほとんどはEVドライブモード。街中の普通の加速では15~20㎞/h程度でエンジンが掛かるが、音や振動は極めて低く抑えられていて、ほとんどわからないほどだ。加速を強くしていくと、それ相応にエンジン回転数が上がってくるので存在に気付くようになっていくが、街中でちょっと速く加速するぐらいではそこまでいかない。
スピードメーターと対をなすパワー/チャージメーターは、左側の水平状態がパワーもチャージも発していないゼロを指し、反時計回りに下がっていくとチャージ、時計回りに上がっていくとパワーで、上限のフルパワーは右側の水平状態。つまりパワーは上半分の180度の範囲にあり、目盛りが8つ区切られている。街中では発進時に2目盛りぐらいまであがり、それを少し超えれば一般的な走行では十分に速い加速になる。
高速道路でも80~100㎞/hの巡航ではパワーは1目盛り程度で事足りるので至って静か。この領域ではエンジンドライブモードが頻繁に入ってくることになる。一般的にモーターは低・中速域に優れ、高速域はエンジンの方が得意になっていくが、i-MMDはそれを見越して最高効率を目指したのだ。切り替えはクラッチによって行なわれているが、ドライバーにはまったくそれと気付かせない。メーターをパワーフロー表示にしておいて確認して初めてわかるぐらいだ。

エンジンドライブモードは高速クルージングの低負荷域を主としている。少し負荷が強くなるとモーターのアシストも加わってくるが、ある程度以上になると、クラッチを再び操作してエンジン回転数を高めてモーター駆動になる。
高速域での追い越し加速などになってくるとパワーメーターの振れ幅は大きくなっていく。エンジンの存在に気付くようになるのは3目盛りを超えたあたり。4目盛り以上になるとエンジンは徐々にスポーティな咆哮を響かせるようになり、アクセル全開ではさすがはホンダと思わせるようなサウンドとなる。
アクセルペダルは奥の方まで踏みこんでいくとキックダウンスイッチのように反力があり、クリック感が生じてくる。この手前の範囲ではEV的な静かで頼もしい快適な走りとなるが、そこを超えるとダイナミックになっていく。ただしそれはECONモードやノーマルモードでの話で、SPORTモードにすると変わる。アクセルを半分ぐらい踏みこんだだけでパワーメーターはほぼ上限にまで達して全力ダッシュをみせるようになるのだ。
基本的にはモーターらしいレスポンスの良さを見せるが、ハイスピード域や高負荷域でもそれを味わいたいとなるとSPORTモードが必要となってくる。というのも、モーターの最高出力は96kWであり、それをフルに発揮させようとすればエンジンを最高出力発生回転の6000rpmに持っていく必要がある。SPORTモードはそれが機敏に行なわれるので、素早くモーターをフルに回せるからだ。エンジンの最高出力は80kWだから、それだけでは足りずにバッテリーからも電力を持ち出すことになるが、SPORTモードはエンジンが掛かりやすいから電力量も高めになって、いざという時に足りないなんて心配もほとんどない。
エンジンルームからキャビンへの音・振動の侵入は極めて低く抑えられているのが実感できるが、全体的な静粛性もハイレベルだ。一般的にはエンジン音が下がるとロードノイズや風切り音が気になってくるものだが、絶対的な音量が低い上に各ノイズのバランスも上手に取れていて耳障りなところがまるでない。また、エンジン音が入ってくるとしても加速感と釣り合いが取れているから常に快適に感じられる。効率を最重要視するよりも、ドライバーに自然な感覚をもたらすよう賢い制御を行なっているからだ。

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