クラッチレバーなしで変速できる!「自動遠心クラッチ」
初代C100がデビューしたときに注目を集めたメカニズムのひとつが「自動遠心クラッチ」だった。
エンジン回転を利用してクラッチを自動的に繋いだり切ったりするため、ライダーが左手でクラッチレバーを操作する必要がない。発進時は回転の上昇に応じてクラッチが繋がり、停車時には切れるのでエンストしない。さらにシフト操作時にも適切にクラッチを断接してくれる。
つまり、左足ではちゃんとギヤを選べるのに、左手のクラッチ操作はいらない。この“手軽さとシフトチェンジの楽しさ”を両立しているのが、カブの自動遠心クラッチなのである。

クラッチレバー操作なしで発進・変速できる自動遠心クラッチ。スーパーカブを幅広い人が扱いやすいバイクにした代表的なメカニズムだ。
星の数はグレードじゃない!「一つ星/二つ星」
「このC100は二つ星だね」なんて言われたら、豪華装備のグレード名かと思ってしまいそうだけど……じつは違う。
一つ星/二つ星とは、クランクケース右側にあるクラッチ調整ネジの目印を指した呼び名。縦に2つ目印があるものを「二つ星」、1つのものを「一つ星」と呼ぶ。
なかでも二つ星仕様のC100は、1961年ごろまでの初期型に見られるもの。こんな小さなネジの違いが、旧いカブを見分ける手がかりになるのだから、カブの世界は奥が深い。

星といってもエンブレムではなく、クラッチ調整ネジの目印のこと。縦に2つあれば「二つ星」、1つなら「一つ星」と呼ばれる。ちなみに写真は「二つ星」
発進と変速を分けた!「二段クラッチ」
自動遠心クラッチは完成度の高い仕組みだったが、その中身は時代に合わせて進化してきた。
2009年以降の110ccモデルで採用されたのが「二段クラッチ」。クランク軸側には発進用の遠心クラッチ、ミッション軸側には変速用の多板クラッチを配置し、それぞれに役割を分けたシステムだ。
発進と変速を別々のクラッチに担当させることで、変速時のショックを抑え、シフトフィーリングをより滑らかにしている。クラッチレバーなしというカブらしさはそのままに、操作性はしっかり進化してきたというわけだ。

2009年以降の110ccモデルで採用された二段クラッチ。発進用と変速用のクラッチを分けることで、変速ショックを低減している。
左手を空けるために右へ!「右側ウインカー」
旧いカブを見ると、もうひとつ「今と違う!」と感じるポイントがある。それがウインカースイッチの位置だ。
鉄カブ時代の最終型までは、ウインカースイッチは右側に配置されていた。その理由は、走行中の操作(アクセル、ブレーキ、ウインカー)を右手側にまとめ、左手をできるだけフリーにしておくため。左手におかもちやお盆を持って配達するような業務用途まで考えて設計されていたのである。
今では考えにくい使い方だけれど、当時のスーパーカブが「誰が、どう使うか」まで徹底的に考えられていたことがよく分かる。

鉄カブ時代には右側に配置されていたウインカースイッチ。左手をフリーにしやすくするためという、業務用途を強く意識した配置だった。
自動遠心クラッチ、二段クラッチ、一つ星/二つ星、右側ウインカー。名前も役割もバラバラに見えるけれど、根っこにあるのは「誰でも扱いやすく、毎日使いやすいバイクにしたい」という発想だ。細かなネジひとつ、スイッチひとつにもちゃんと理由がある。そこまで知ると、いつものカブが少し違って見えてくるのである。
※この記事は月刊モトチャンプ2025年8月号を基に加筆修正を行っています
【モトチャンプ編集部】