【ランボルギーニ ヒストリー】4WDもあり得た? カウンタック プロトタイプ誕生

伝説のプロトタイプ「カウンタック LP500」と市販モデルの最大の違いは?(1971)【ランボルギーニ ヒストリー】

ミウラの成功を引き継ぐべく、ランボルギーニは新たなV12スーパースポーツの開発に着手。スタンツァーニを中心にして「プロジェクト112」と称されたこのプロトタイプこそ、後にカウンタックと呼ばれ一世を風靡するスーパーカーの原石である。

Lamborghini Countach LP500

開発コード「プロジェクト112」と呼ばれたカウンタック

ガンディーニによる斬新なスタイルをもつカウンタック。シザースドアの採用により、その存在感をより強くアピールした。

V型12気筒エンジンを横置きしてミッドに搭載し、マルッチェロ・ガンディーニの手による流麗なボディを組み合わせたミウラが市場で高い人気を博す一方で、ランボルギーニの社内ではその後継車の開発プロジェクトが立ち上がっていた。

ミウラでチーフ・エンジニアの職を担ったダラーラはすでにランボルギーニを去っていた。よって「プロジェクト112」と呼ばれた後継車の開発は、スタンツァーニを中心としたチームによって行われることになったが、彼は最初からパワーユニットの搭載方法を全面的に見直すことを考えていた。

ミウラの横置きミッドシップ方式は重心の高さに加えて、重量物が極端に後輪側へと集中していた。スタンツァーニはミウラの後継車を最高速度のみならずコーナリングマシンとしても高く評価されるモデルとしたかった。だからV型12気筒エンジンを縦置きミッドシップとすることは当然の選択であった。

ガンディーニによる斬新なデザイン

サイドウインドウの開閉方式やエアインテークなど、1971年当時では他に見られないデザインでインパクトを与えた。
市販型のLP400とは異なるカウンタック LP500のコクピット。シングルスポークのステアリングの奥に左右独立して計器類を配置する。

そして、ミウラの最終進化型P400 SV ミウラが発表された1971年のジュネーブ・ショーの同じブースで、プロジェクト112から生まれたプロトタイプは「カウンタック LP500」のネーミングとともに姿を現した。LP500とはイタリア語で、Longitudinale Poteriore、つまり5.0リッターエンジンの縦置きミッドシップを意味するもの。

カウンタックという発音や表記はあくまで日本独自のものだが(正式名:クンタッチ)、これはイタリアの一部地域で用いられる驚きなどを表す方言だ。ガンディーニによるデザインは、まさにウエッジシェイプの体現化ともいうべきもので、左右のシザースドアもまた、その未来的な感覚を強めるアイキャッチとなっていた。

カウンタック LP500のボディは、ベルトーネ社内のみならず、ミラノ工科大学の風洞実験装置などを用いて空力特性の検証を行って完成されたものだった。さらにディテールを検証すると、ルーフ前端の中央部には小窓と窪みが設けられており、これは戦車に採用されているようなペリスコープ型バックミラーの視界を確保するためのものだった。サイドウインドウはフレームで二分割されるデザインで、その後方にはエンジンルームにエアを送るエアインテークが備わっている。

インテリアのフィニッシュも斬新なもので、シングルスポークのステアリングの背後には、スピードメーターとタコメーターがオフセットしてレイアウトされるデザインとなっていた。

縦置きV12を搭載し4WDを想定していたスタンツァーニ

LP500に搭載されるV型12気筒エンジン。そこに5速MTを直列に接続したのは将来的に4WDを想定していたことが理由だったという。
後の市販型となるLP400の原型となったLP500。ほぼそのまま基本デザインを受け継いでいるものの、プロトタイプゆえにデザイン優先で、張り出したエアインテークなどの突起物をもたないのが印象的だ。

ではスタンツァーニが考えたLP500のパワーユニットレイアウトはどのようなものだったのか。

それは440PSを発揮したとされる5.0リッターのV型12気筒エンジンと5速MTを直列に接続し、通常のフロントエンジン車とは前後逆に後方からキャビンへと進入させるという大胆かつシンプルなものだった。つまりパワーユニットで最前方にあるのが5速MTであり、ここからトルクは180度方向を変えて再び後部のデファレンシャルへと伝わる仕組みだ。後にスタンツァーニ本人から聞いたところによれば、彼はカウンタックで4WDの駆動方式を実現することを最終的な目的としていたという。5速MTが最前方にあることは、その意味でも非常に有利な構造だったのだ。

そして彼は、このパワーユニットレイアウトとともに、2450mmという短いホイールベースをLP500で実現することにも成功した。ちなみにLP500の車体構造はミウラと同様に鋼板を組み合わせたセンターセクションをもつセミモノコック構造であった。LP500はその後クラッシュテストなどに供されるが、それから2年もの時間を費やして誕生した最初のプロダクションモデルとなるLP400の車体構造は、実はLP500とはまったく異なる丸型と角型断面の鋼管を複雑に組み合わせたスペースフレーム構造に変更されていた。

SPECIFICATIONS

ランボルギーニ カウンタック LP500

発表:1971年
エンジン:60度V型12気筒DOHC
総排気量:4971cc
圧縮比:10.5
最高出力:324kW(440PS)/7500rpm
トランスミッション:5速MT
駆動方式:RWD
車両重量:1130kg
最高速度:300km/h

解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

ミウラP400の生産ラインとされる写真。ずらりと並ぶV12エンジンは壮観だが、実際に生産されているとは思えないほど整然としている。

カウンタックで始まったランボルギーニ伝説【歴史に見るブランドの本質 Vol.12】

自動車メーカーは単に商品を売るだけではなく、その歴史やブランドをクルマに載せて売っている。しかし、イメージを確固たるものにする道のりは決して容易ではない。本連載では各メーカーの歴史から、そのブランドを考察する。

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著者プロフィール

山崎元裕 近影

山崎元裕

中学生の時にスーパーカーブームの洗礼を受け、青山学院大学在学中から独自の取材活動を開始。その後、フ…