ポルシェ、世界初のeフューエル製造用統合商業プラント「Haru Oni」を南米チリに建設

次世代パワーソースに対するポルシェの回答。2022年からeフューエルの生産をスタート!

ポルシェ、世界初のeフューエル製造用統合商業プラント「Haru Oni」を南米チリに建設
eフューエル製造用統合商業プラント「Haru Oni」のイメージ
ポルシェとシーメンス・エナジーは、多くの国際企業と協力してカーボンニュートラルに近い燃料(eFuel:eフューエル)を生産する工業プラント「Haru Oni」を、チリのプンタ・アレーナスに建設する。この将来を担うプロジェクトの起工式が、9月10日にチリのエネルギー大臣フアン・カルロス・ジョベト氏の立会いのもとに行われた。

2026年には年間約5億5000万リットルを生産

ポルシェ、世界初のeフューエル製造用統合商業プラント「Haru Oni」を南米チリに建設
1年を通して風力発電に適した風が吹くチリのプンタ・アレナス北部に建設がスタートした「Haru Oni」。2022年から稼働をスタートし、2026年までには約5億5000万リットルのeフューエル生産を目指している。

ポルシェはエクソン・モービルと共同で、水素と二酸化炭素から生成される合成燃料「eフューエル」の研究・開発を行なっている。このeフューエルは、現在使用されている乗用車の燃料基準に合わせて混合することで、温室効果ガスの排出量を最大85%も削減することが期待されている次世代燃料だ。

第一段階ではチリ・パタゴニアのプンタ・アレナス北部にパイロットプラントを建設し、2022年に約13万リットルのeフューエルを生産する予定。その後、プラントを拡張し、2024年までに約5500万リットル、2026年までに約5億5000万リットルと、2段階に分けて生産能力を拡大していく。

今回、チリのプロジェクト担当企業であるハイリー・イノベーティブ・フューエル(Highly Innovative Fuels:HIF)社が、必要な環境許可を取得した。同時にシーメンス・エナジーが、このプロジェクトの次のステップとなる本格的な商業化に向けた準備をすでに進めている。

シーメンス・エナジーの新エネルギービジネス担当副社長のアルミン・シュネットラーは、eフューエルについて次のようにコメントした。

「強力な国際的パートナーと共に、この新エネルギーの普及を目指した国際的なプロジェクトの進展を嬉しく思います。Haru Oniでは、当社の水素技術『Power-to-X』技術によって生成されたエネルギーを世界市場に提供することになります」

「カーボンニュートラルな合成燃料を生産する世界初の統合された商業用大規模プラントが、ポルシェとの共同事業により実現に至りました。チリ南部のプラントでは、エネルギー業界で最も将来性のあるプロジェクトのひとつが稼働し、モビリティ分野の脱炭素化を推進していくことになります。これは、交通・運輸部門のCO2排出量削減に、大きな貢献をすることになるでしょう」

チリ産のeフューエルをスーパーカップでも使用

ポルシェ、世界初のeフューエル製造用統合商業プラント「Haru Oni」を南米チリに建設
eフューエルは2022年シーズンの「ポルシェMobil 1スーパーカップ」シリーズにおいて、ワンメイクレーシングカーのポルシェ 911 GT3 カップに投入され、高性能モータースポーツ用エンジンでの実績を積んでいく予定だ。

この実証プロジェクトの開始を受けて、ポルシェは自社の内燃機関モデルにチリで生成されたeフューエルを使用していく予定だ。次世代燃料の開発を進めるポルシェのR&D担当取締役のミヒャエル・ステイナーは、現在の状況について次のように説明した。

「ポルシェはパイオニア・スピリットを持って設立された自動車メーカーです。先駆者として道を切り拓くことが私たちの原動力であり、イノベーションを最も大切にしてきました。再生可能燃料に関しても私たちは自分たちがパイオニアであると自負し、開発を推進していきたいと考えています」

「例えば、911はeフューエルの使用にも適したモデルですし、多くの人々に愛されてきたヒストリックモデルも同様です。再生可能燃料を使ったテストは順調に進んでいます。eフューエルによって、化石燃料による内燃機関車両のCO2排出量を最大90%も削減することが可能になります。さらに2022年からはポルシェ・モービル1スーパーカップのレーシングカーに、チリ産の燃料を初めて使用する予定です」

EVとeフューエルでカーボンニュートラルを達成

ポルシェ、世界初のeフューエル製造用統合商業プラント「Haru Oni」を南米チリに建設
ポルシェのeフューエル戦略を進める、ポルシェのR&D担当取締役のミヒャエル・ステイナー。カーボンニュートラルの達成には、電動化に加えて、製造過程でCO2を排出しないeフューエルの導入が鍵になると指摘する。

「Haru Oni」プロジェクトでは、チリ南部のマガリャネス州の風力発電を活用。低コストのグリーン風力発電により、実質的にカーボンニュートラルな燃料を生産。このプロジェクトには、チリが国家プロジェクトして推進しているグリーン水素エネルギーの活用も含まれている。

eフューエルに用いられるのは、風力タービンで生成されるグリーン水素となる。風力で稼働する電解槽を使って水を酸素と水素に分離し、ここに大気中の二酸化炭素と組み合わせることで合成メタノールを製造。これをベースにエクソンモービルが開発したMTG手法を用いて、合成燃料「eフューエル」が完成する。

今回、建設がスタートしたパイロットプラントは、2022年半ばに生産を開始する予定。シーメンス・エナジー、ポルシェ、HIFに加えて、エネル、エクソンモービル、ガスコ、ENAPなどが、Haru Oniプロジェクトに参加している。

「eフューエルの開発は、私たちが掲げるサステナビリティ(持続可能性)戦略全体に合致するものです。ポルシェは、2030年という早い段階でCO2のネットニュートラル達成を目標としています。電動モデルに加えて、再生可能エネルギーによって生成された燃料は、この目標に貢献することとなるでしょう」と、ステイナーは付け加えた。

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