頼りになる重機を運ぶ頼もしい搬送車

トミカ × リアルカー オールカタログ / No.30 日野レンジャー 重機搬送車

発売から50年以上、半世紀を超えて支持される国産ダイキャストミニカーのスタンダードである『トミカ』と、自動車メディアとして戦前からの長い歴史を持つ『モーターファン』とのコラボレーションでお届けするトミカと実車の連載オールカタログ。あの『トミカ』の実車はどんなクルマ?
No.30 日野レンジャー 重機搬送車 (スロープ可動/重機積み下ろし/重機アーム可動 希望小売価格495円・税込)

『重機搬送車』とは一般に重機運搬車と呼ばれ、その名の通り“重機”――主に建設、土木、運搬作業で使用されるパワーショベルやクレーン車、ブルドーザーなどの公道を走行できない自走式大型機械や現場で使用される大型発電機や大型ポンプなどの大型機材――を運搬するための車両のことを言います。正しくは“産業機械運搬車”と分類されます。『重機搬送車』は大雑把には、新車や中古車、あるいは事故車や故障車を運搬するために用いられる車両運搬車――積載車やセルフ・セーフティローダーとも呼びます――と同じキャリアカーの一種になります。

日野レンジャー(レンジャープロ)実車フロントビュー(写真は海外仕様のHINO500です。国内仕様および『トミカ』の仕様とは異なります。/PHOTO:日野自動車)
セルフローダーの架装例。タダノ 産業車両運搬車(セルフローダ)SL-155R(『トミカ』の仕様とは異なります。/PHOTO:タダノ)
セルフローダーは前方をジャッキで持ち上げることで車体全体がスロープ状になります。{タダノ 産業車両運搬車(セルフローダ)SL-155R)(『トミカ』の仕様とは異なります。PHOTO:タダノ)
いわゆるセーフティローダーは荷台部分だけが後方にスライドしてスロープ状になります。{タダノ 車両運搬車(スライドキャリヤスーパーセルフローダ)SS-02F_02}(『トミカ』の仕様とは異なります。PHOTO:タダノ)

さて、『重機搬送車』はセルフローダーとセーフティローダーの2種類のタイプに分かれます。まずセルフローダーですが、セルフローダーには運転席後部、前輪後方あたりにジャッキが備えられています。このジャッキを伸ばすとキャビン側が持ち上がり、シーソーのように荷台の後方部が下がって車両全体が斜めになり、さらに荷台の後ろにある“歩み板”を降ろすことで全体がゆるやかなスロープのような姿になります。これによってショベルカーやブルドーザーなど公道を走行できない自走式大型機械などをスムーズに積み込むことができるわけです。セルフローダーは多様な車両の運搬に適しており、主に中型〜大型重機の運搬に使用されます。

もう一つのセーフティローダーは、セルフローダーのようなジャッキを装備していません。荷台部分がそのまま後方にスライドする仕組みになっており、荷台はスライドしながら後端から地面に近づき斜めになります。つまり荷台部分だけがスロープ状になるわけです。セーフティローダーは荷台部分が後方に下がる仕組みのため、積み下ろしスペースをセルフローダーよりも長手方向に広く確保する必要がありますが、セーフティーローダーの荷台の傾斜角度はセルフローダーより緩やかになるため、いくぶん安全に積み下ろしが出来ます。このため「セーフティー=安全」ローダーと名付けられているわけです。セーフティーローダーはサイズ展開が豊富なため小型から大型まで車両サイズを問わず効率よく運搬できるという利点がありますが、荷台を後方にスライドさせて傾斜させる複雑な機構を持つため、極端な重量物の運搬には不向きとされ、主にバイクや乗用車、小型~中型の重機の運搬によく用いられてます。

また、いくら車体全体や荷台がスロープ状になって積み込みやすいように変形したとしても、走行不能車両や自走不能な重量物は荷台まで引き上げる必要があります。この時に使用されるのがウインチ(巻き上げ機)です。これは基本的にキャビン後部(運転席後部)に装備されますが、車体や荷台を斜めにしなくても地面からそのまま荷台へ荷物を積み込むこともできるよう、クレーンを兼ねたウインチクレーンを装備する車両もあります。

なお、トラックは乗用車とは違い、基本的には積載する貨物や用途に合わせた装備をユーザーが自由に選び、車体と合体させて作ります。乱暴に言えばトラックは最初から“カスタムカー”なのです。この、車両に積載されている荷台などの装備のことを“架装”と言います。架装の製造はトラックの車体メーカーではなく、基本的にはタダノや古河ユニックといった架装専門のメーカーが担当しています。

取手市災害重機機動隊に貸与されている重機搬送車。(PHOTO:取手市)

さて、『トミカ』の『No.30 日野レンジャー 重機搬送車』は、そんな『重機搬送車』を的確に再現しています。車体は商品名にもあるように、日野自動車の中型トラック『日野レンジャー』を用いている設定です。ダカールラリーなどモータースポーツにも参戦するスーパートラックとしておなじみの『日野レンジャー』ですが、どうやら『レンジャープロ』と呼ばれた2017年まで製造された5代目モデルを再現しているようです。ちなみに『トミカ』の『No.30 日野レンジャー 重機搬送車』は、パッケージに記載はありませんが、赤いボディカラーと『重機搬送車』という名前により、総務省消防庁から各自治体の消防本部に無償貸与されて災害重機機動隊や緊急消防援助隊などで使用されている、消防仕様の『重機搬送車』をイメージしているものと思われます。

八代広域消防本部緊急消防援助隊に貸与されている重機搬送車。(PHOTO:八代広域行政事務組合)

この総務省消防庁から貸与されている消防仕様の『重機搬送車』には3t車と5t車の2種類がありますが、『トミカ』になっているのは3軸からわかるように5t車の方でしょう。搭載されているショベルカーは実車の貸与車両と同様にコマツのPC55MRをモデルにしたものと思われます。ちなみに5tの『重機搬送車』は、北海道の札幌市消防局、宮城県の仙台市消防局、茨城県の取手市消防本部、埼玉県のさいたま市消防局、神奈川県の相模原市消防局、静岡県の静岡市消防局、大阪府の大阪市消防局、岡山県の岡山市消防局、愛媛県の八幡浜地区施設事務組合、鹿児島県の薩摩川内市消防局に配備されているようです。

積載されているショベルカー、コマツPC55MRは様々な災害現場で活躍します。(PHOTO:八代広域行政事務組合)

『No.30 日野レンジャー 重機搬送車』はスロープが可動し、前方のアームが上下に可動する小さなショベルカーが積み下ろしできるなど、『トミカ』の中でもプレイバリューが充実した1台となっています。

■日野自動車 日野レンジャープロ GK 2012年モデル(GK8JWAA型) 主要諸元 (『トミカ』モデル車種と同一規格ではありません)

全長×全幅×全高(mm):11980×2490×2740

ホイールベース(mm):7200

トレッド(前/後・mm) :1940/1855

車両重量(kg):7590

エンジン: J08E型直列6気筒

排気量(cc):7684

最高出力: 206kW(280ps)/2500rpm

最大トルク:794Nm(81kgm)/1500rpm

トランスミッション:6速MT

サスペンション(前後):リーフリジッド

ブレーキ(前後) :ドラム

タイヤ:(前後)225/80R17.5

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