F-2後継機と共通機の可能性を含む英国次世代戦闘機「テンペスト」、英国はその開発デモ機を5年以内に飛ばす予定:航空自衛隊

開発中の英国次世代戦闘機(将来戦闘航空システム)「テンペスト」のイメージ。写真/BAEシステムズ
航空自衛隊の次期戦闘機を日本とイギリスで共同開発する方向性が濃厚になり、日本政府は最終調整に入ったという状況を先ごろお伝えした。そしてこの7月、日英新戦闘機計画の「デモ機」開発を英政府が主導し、いまから5年以内に飛行させる予定だとの情報が追加された。最新動向をお知らせします。

TEXT&PHOTO:貝方士英樹(KAIHOSHI Hideki)

「テンペスト」の就役目標は2035年

航空自衛隊のF-2戦闘機の後継機となる次期戦闘機「FX(Fighter X)」の開発を日本とイギリスの共同体制で行なう方向で日本政府は最終調整に入った、というニュースが流れたのは2022年5月14日の土曜日。2022年末までに日英政府で正式合意へと運び、それまでに開発計画全体を整えるという内容だった。

F-2戦闘機は、F-15JやF-35Aと並ぶ現在の空自戦闘機の主力だが、2035年ごろには退役する予定だ。それまでに後継機を用意するのが次期戦闘機開発計画のテーマとなる。
この目的のために日英共同体制で開発し、そのための調整が進んでいる状況だということなどは既報のとおりだ。

航空自衛隊:次期戦闘機は日英共同開発。F-2後継機は英国次世代機「テンペスト」と共通か

先ごろ航空自衛隊の次期戦闘機を日本とイギリスで共同開発する体制が濃厚になったとの報道があった…

2022年7月20日、英国防衛産業BAEシステムズの日本法人からのニュースリリースには、英国防省のベン・ウォレス大臣が、英国が新戦闘機の「デモ機」開発を主導することを確認したということと、今後5年以内に実証機の飛行を予定することなどが書かれていた。英国はデモ機、あるいは実証機を2027年までには初飛行させるということだ。

英国は次世代戦闘機(将来戦闘航空システム)「テンペスト」の計画を進めている。2035年には就役させるのが目標だ。これはF-2の退役予定と同じ年になる。だから日英はタッグを組み、効率的に、コストを抑えながら次世代戦闘機を生み出すことで合意しようとしているわけだ。

トップ写真と同じく「テンペスト」。2018年のファーンボロー国際航空ショーで発表されたもの。写真/BAEシステムズ

派手でインパクトの強いものではないが……

前述した英国主導によるデモ機をいまから5年以内に飛ばす計画というのもこの「テンペスト」に当然関係している。日英共同の開発計画に参画する企業は日本が三菱重工、英国はBAEシステムズだ。「テンペスト」を造り出そうとする主力企業群の中心にいるのはBAEシステムズである。

7月18日から22日まで、ファーンボロー国際航空ショーが開催されていた。これは航空防衛産業界のいわゆる見本市で、会場はイングランド南部・ハンプシャー州のファーンボロー空港だ。ここでBAEシステムズは「テンペスト」の操縦席周辺の胴体を公開したという。
このショーを取材中の日本人ジャーナリストからメールを介して教えて貰った現地状況では、「テンペスト」の胴体展示と『デモ機を5年以内に飛行させる予定』との発表以外に新しい動きはなく、共同開発への合意予定である2022年末に向けて各種調整が進むのだろうという印象を持ったそうだ。

ショー会場で大きな決定事項などを発表したり(期待や予測に反して)しなかったり。コンセプトモデルなどを予告なく静かに展示したり……そういったことは自動車業界のモーターショーでも多く見られる。

2019年に防衛省が公表した次期戦闘機のコンセプトイラスト。次期戦闘機の予算が付いた2020年以前のイメージ図であることから、この形状のまま実態化されることはないという見方がある。写真/防衛省

「テンペスト」の胴体展示と英国防相の発表は派手でインパクトの強いものではないかもしれないが、デモ機飛行の期限を示すということは着実な進捗状況を窺わせるものでもある。
日英共同開発する新戦闘機は共通機体になるとの見方や、仕様などを導入国の事情に合わせ変更させるとの説もあるが、まだよくわからない。引き続き今年末までの動きを注視したい。

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著者プロフィール

貝方士英樹 近影

貝方士英樹

名字は「かいほし」と読む。やや難読名字で、世帯数もごく少数の1964年東京都生まれ。三栄書房(現・三栄…