「ランボルギーニ ウラカン ステラート」に試乗してスーパースポーツカーの新しい可能性を体感

オフロードも走れるランボルギーニ?「ウラカン・ステラート」が見せたスーパースポーツカーの可能性

全天候型スーパースポーツを謳う「ランボルギーニ ウラカン ステラート」。その試乗コースは半分が舗装路面、半分がグラベルを走るようアレンジされていた。
全天候型スーパースポーツを謳う「ランボルギーニ ウラカン ステラート」。その試乗コースは半分が舗装路面、半分がグラベルを走るようアレンジされていた。
今までに数多くのモデルを生み出してきたランボルギーニ・ウラカンがモデル末期に新たに発表した驚きの一作、それがステラートだ。スーパースポーツとオフロード、この異色とも思えるコラボレーションは、どのような楽しさを生み出してくれるのか。(GENROQ 2023年7月号より転載・再構成)

LamborghiniHuracan Sterrato

オフロードタイヤを履いたスーパースポーツカー

車高を44mmもアップして、オーバーフェンダー状のクラッディングを装着することで、ある種の異様さを感じさせる。

ランボルギーニ・ウラカンにとって、一体これが何台目の限定車となるだろうか。デビューは2013年と、もうすぐ10年にも達しようとするモデルだけに、もはや数え切れないほどだが、2022年11月のアート・バーゼルで発表され、世界限定1499台が販売されるこのウラカン・ステラートが、その中でも1、2を争う問題作であることは間違いない。

車高をアップしてオフロードタイヤを履かせたスーパースポーツカーという今までにない存在には、下手すれば色モノ的に映る感もあった。しかしながら実際にそのステアリングを握ってみて、考えが180度変わった。この今まで見たことのないコンセプトは、これからのスーパースポーツカーにとって、ひとつの重要な選択肢となり得るのでは。そう感じたのだ。

アメリカ・カリフォルニア州パームスプリングスから、さらに東へ1時間ほど走った先に位置するチャクワラ ヴァレー レースウェイが今回の試乗の拠点。ここで初めて対面したウラカン・ステラートの存在感は、格別なものと言えた。

オフロードでの走破性とオンロードでのパフォーマンスを両立

お馴染みの切り裂くようにシャープなウラカンのボディは44mmリフトアップされ、フロント、サイドの下周り、そしてリヤのディフューザー周辺には樹脂製のプロテクターが装着される。このある種のミスマッチ感が、もう堪らない。さらに、フェンダーにも樹脂製のクラッディングを追加することで前30mm、後35mmワイド化されている。

そこに収められるタイヤは前235/40R19、後285/40R19という外径の大きなブリヂストン・デューラーAT002。いわゆるオールテレインタイヤである。オフロードでの走破性とオンロードでのパフォーマンスを両立させ、しかもランフラット構造というこのタイヤは、ランボルギーニと共同で開発された。

ルーフレールが備わるのも面白いところ。これはちゃんと荷物も載せられるという。もうひとつ目を惹くのがシュノーケル状のエアインテーク。ウラカンは元々、吸気をボディの両サイドから取り入れているが、これだとダート走行時に土や埃などが入り込んでしまうため代わりに採用された。実際、吸気系は完全に新設計されているという。

そのエンジン、V型10気筒5.2リッター自然吸気ユニットのスペックは最高出力610PS、最大トルク560Nm。トランスミッションは7速デュアルクラッチで、駆動方式はAWD。電子制御LSDも搭載する。

誰もがドリフトに挑める扱いやすさ

インテリアには大きな違いはないが、ステアリングホイール上にあるドライブモードの切り替えを可能とするANIMAのモード表示が他とは異なっている。標準のSTRADAに加えて、SPORTはダートやグラベルでのドリフトしやすさを念頭に置いた設定になり、さらに前輪への駆動力配分を増やすなど、滑りやすい路面に対応したRALLYが新設定されているのだ。

全天候型スーパースポーツと謳うウラカン・ステラート。その試乗コースは半分が舗装路面、半分がグラベルを走るようアレンジされていた。舗装路での走りで印象的だったのが無類のコントロール性の高さだ。その秘密は地上高が44mm高くなったことにより前25%、後35%増加したサスペンションストロークで、適度に姿勢変化させることによって挙動を掴みやすいものにしている。

CTO(チーフ テクノロジー オフィサー)のルーヴェン・モール氏は、例えとして「ロータス・エキシージではなくアルピーヌA110」と狙った方向性を示してくれた。速さ一辺倒ではなく、誰もがドリフトに挑める扱いやすさというわけで、実際にSPORTモードでは、3速全開で回るようなコーナーでじわじわとリヤが出てきて、ステアリングを中立付近に保ったままの高速ドリフトが楽しめた。これは面白い!

タイヤはハイトが高いオールテレインタイプなのに、こうした場面でも手応えに曖昧さはナシ。グリップも適度で、まさにこうした走りにぴったりだ。

新しいスーパースポーツカーの世界

ウラカンは元々、吸気をボディの両サイドから取り入れている。しかし、これだとダート走行時に土や埃などが入り込んでしまうため、代わりにシュノーケル状のエアインテークが採用された。

グラベルではRALLYモードで走った。滑り出しても不安感はなく、むしろアクセルを踏み込んだ方が安定するセッティングが心憎い。おかげでここでも高速ドリフトの快感を存分に満喫。操る歓びに酔いしれた。

最近のスーパースポーツカーは動力性能もシャシー性能も高過ぎて、もはやサーキットでもなかなか手に負えない感がある。そんな中、最高出力610PSのV10ユニットを思い切り歌わせ、素晴らしく良く調律されたシャシーとタイヤのおかげでスライドも自由自在なコーナリングを味わえたのは、まさに痛快だった。

一般道の走行でも、地上高とサスペンションストロークに余裕があるのでアゴを打ち付ける心配が要らず、路面がうねり舗装の荒れたアメリカの道でも気兼ねなく走りを楽しめて、とても新鮮な気分だった。この手はアリ。そう思った次第だ。

ほぼ同じタイミングでポルシェも911ダカールを世に問うたところである。最初に書いた通り、ウラカン・ステラートの示したこの世界は、もしかするとスーパースポーツカーの新たな可能性を切り拓くものかもしれない。

REPORT/島下泰久(Yasuhisa SHIMASHITA)
PHOTO/Lamborghini S.p.A
MAGAZINE/GENROQ 2023年7月号

SPECIFICATIONS

ランボルギーニ・ウラカン・ステラート

ボディサイズ:全長4525 全幅1956 全高1248mm
ホイールベース:2629mm
車両重量:1470kg
エンジン:V型10気筒DOHC
総排気量:5204cc
最高出力:449kW(610PS)/8000rpm
最大トルク:560Nm(57.1kgm)/6500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ:前235/40R19 後285/40R19
0-100km/h加速:3.4秒
最高速度:260km/h
車両本体価格:3428万1904円

GENROQ 2023年7月号「The 12 Cylinders/12気筒は永遠に」発売中

GENROQ 2023年7月号発売中! 特集「The 12 Cylinders」 アストンマーティン ヴァルキリー、東京を走る!

速さを追求してやまない世界のスーパースポーツが、軒並みその心臓部にV8エンジンを選択している…

あらゆる地形・天候において、高速走行を可能にするのがウラカン ステラートのコンセプトだ。

ランボルギーニ初のオフロードスーパースポーツ「ウラカン ステラート」がワールドプレミア

2022年11月30日、アウトモビリ・ランボルギーニは「アート・バーゼル・マイアミ・ビーチ(…

キーワードで検索する

著者プロフィール

島下 泰久 近影

島下 泰久

1972年神奈川県生まれ。走行性能だけでなく先進環境安全技術、ブランド論、運転など、クルマ周辺のあらゆ…