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内燃機関超基礎講座 | ハイブリッド車をイラストで解説:シリーズ/パラレル/マイクロ

  • 2021/02/06
  • Motor Fan illustrated編集部
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さまざまな方式で展開するハイブリッド車。それぞれのレイアウトはどのようになっているのか。イラストから理解してみよう。
TEXT:高橋一平(TAKAHASHI Ippey) ILLUST:熊谷敏直

電気自動車:Electric Vehicle

バッテリーに蓄えた電力とモーターのみで走行するEV。基本的な技術的要素と概念は自動車の黎明期から存在するほど古いものだが、ここにきてEVは着実に進歩の歩幅を伸ばしている。

バッテリーのエネルギー密度向上や、IGBTなどの高電圧のコントロールを可能とする電力制御半導体、モーターの高性能化、高度な制御を可能とするコンピューター技術など、多くの要素が複合的に絡み合う現代のEV技術を総合的に理解することは容易ではない。しかし、あえてわかりやすい部分をひとつだけ抽出すると、コンピューター制御技術と電力制御半導体により、三相交流電源でACモーターがバッテリー駆動できるようになったことが挙げられる。技術が進歩した現在も、バッテリーが蓄えられるのは依然として直流のみ、そしてモーターは交流でしか駆動しない(DCモーターも内部の機械式接点で交流化している)。このことはEVに限らず、自動車における現代の電動化技術を理解するうえで重要なポイントだ。

【車両事例】日産リーフ

シリーズハイブリッド:Series Hybrid Vehicle

シリーズハイブリッドは、EVにエンジンと発電機を付加した構成を持つ。バッテリーしか持たないEVがバッテリー容量に余裕が求められるのに対し、自己発電の機能を持つシリーズハイブリッドはバッテリー容量を必要最低限に抑えることが可能となっており、大容量バッテリーが高コストで重量がかさむ存在である現在においては魅力的なポイントとなっている。

基本的にはプラグイン充電で蓄えたバッテリーの電力でEVと同様の走行を行なうが、残存電力が少なくなると、エンジンによる発電が始まり、消費を自己発電で賄いながらの走行となる。興味深いのは、この発電を伴う走行モード時で、車両の速度や状態にかかわらずエンジンは熱効率の最も高い領域で定常運転となること。つまり、エンジン中心の視点で見ると、EVシステムを電気式の高効率CVTと捉えることもできる。実際、鉄道においてはディーゼルエンジンを効率よく使う手段として、古くから用いられている。

【車両事例】日産e-POWER

なお、“レンジエクステンダーEV”と呼ばれる車両は機械構成をシリーズハイブリッドと同じくするものの、考え方としては「EVの電欠時に非常用の発電+蓄電装置を持つもの」として定められており、基本的にはEVの仲間となる。(例:BMW・i3 REx)

パラレルハイブリッド(直結):Parallel Hybrid Vehicle [ Direct ]

エンジンとモーターの動力を混合したうえでトランスミッションに入力。エンジンとモーターの間にギヤやクラッチなどは存在せず、エンジンのクランクシャフトとモーターのローターは常に回転を共にしている。このため基本的にモーター単独のEV走行はできないが、ホンダのIMAではエンジンの気筒休止システムを利用することで、モーター単独での走行が可能となっている。

このシステムではEV走行時にもエンジンとピストンを連れまわすことになるが、吸排気バルブを閉じることでポンピングロスは最小限に抑えられており、必要最低限のシンプルな機構ゆえの損失の少なさと相まって優れた効率を引き出すことに成功している。エンジンとトランスミッションの間にモーターを挟み込むため、寸法が若干大きくなるが、わずか50〜60mm程度というものなので既存車両への追加も容易だ。

【車両事例】ホンダIMA

パラレルハイブリッド(クラッチ式):Parallel Hybrid Vehicle [ with Clutch ]

モーターとエンジンを完全に切り離すことで、純粋にモーターのみで駆動する完全なEV走行モードを実現。基本的にはエンジン/モーター直結型のパラレルハイブリッドに1組のクラッチが追加されるだけということで、比較的シンプルで既存設計への適合性も高い。

ポルシェ・カイエン、日産・フーガなどは、ともにコンベンショナルなエンジン車をベースにハイブリッドシステムを追加している。また、クラッチの追加で制御ポイントが増えることによって、EV走行モード以外にも応用の可能性が拡がることも見逃せない。ポルシェ・カイエンハイブリッドではスロットルオフ時のエンジンとトランスミッションを切り離して滑走する“コースティングモード”を設定。日産のフーガハイブリッドでは、トルクコンバーターをモーターに肩代わりさせるという制御を行なうことで、効率の向上に加えてフィーリングの演出を図るという、さらに踏み込んだ領域まで手を伸ばしている。

【車両事例】日産・1モーター2クラッチ式ハイブリッド

パラレルハイブリッド(遊星ギヤ式):Parallel Hybrid Vehicle [ with Planetary Gear ]

エンジンとモーター、そして駆動軸へと繋がるギヤを遊星ギヤで連結したパラレルハイブリッド。複数動力の混合に、混合比率の可変という要素が加わる。

遊星ギヤが絡むことでイメージ的な理解が難しくなっているが、その実例であるトヨタ・プリウスのTHS IIではモーターと遊星ギヤが2組ずつと、もはや分解図を眺めたくらいでは理解が不可能といえるほどに複雑。多様性に富んだ接続条件を生み出す、2組ずつのモーターと遊星ギヤにより、あらゆる条件で最適な運転状態が選択可能で、さらにパラレルハイブリッドの定義を超えるシリーズハイブリッドとしてのモードまで用意されている。このことは、優れた低燃費性を引き出すうえで重要なポイントだ。

もっとも、日本という環境下でフォーマットされたということで、異なる環境下では性能をフルに発揮できない場合もあるということも今や広く知られた事実でもあるが、実によく考えられたシステムであることに異論を挟む余地はない。

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マイクロハイブリッド:Micro Hybrid Vehicle

モーター機能を持たせると同時に高度な充電制御機能を持たせた大容量オルタネーターを用い、回生電力を積極的に回収。回収した電力を再びオルタネーターに戻すことでモーターとして活用、スターターモーターに代わってアイドルストップ状態からの再始動や、発進加速時のアシストに用いるというシステムがマイクロハイブリッド。

ベルトを介してクランクへモーター駆動力を伝えるため、ベルトの接続が許容するトルクの範疇でわずかにアシストする程度のものだが、基本的な構成をほとんど変更することなく既存のエンジンシステムに付加することが可能なことは注目すべきポイントのひとつ。また、一般的なスターターのような断続機能付きのギヤを用いず、ベルトで常時接続されているオルタネーターをエンジン始動に用いることで、再始動のタイミング設定における自由度が高く(通常のスターターはエンジンが完全停止するまで再始動できない)、ギヤによるノイズも回避できるというメリットも存在する。

【車両事例】スズキ・エネチャージシリーズ/欧州48Vシステム

電気アシスト:Electric Assist

FFやRRなどの2WD車の非駆動側にモーターなどのEVシステムを追加。発進加速時や低速時など、エンジンでは熱効率の低い領域を使わざるを得ない局面において適切なアシストを加えることで、燃料消費を抑えることが可能。エンジン駆動側の変速時に生じるトルク切れの補完など、フィーリングの演出にも優れた効果が期待できる。

また、エンジンとモーターがそれぞれ別の駆動輪を担当することから動力混合が不要で、複雑な機構なしに実現が可能ということも重要なポイントのひとつで、既存の車両にアドオンに近い感覚で搭載できる。実質的に4輪駆動でありながら、前後アクスルを連結するプロペラシャフトが不要でレイアウトの自由度が高いことなどから、近年ではダイナミクス向上を目的とした次世代技術としても注目を集めつつある。ミリ秒単位で制御が可能な電動駆動ならではの応答性(エンジン制御の最小時間単位は数百ミリ秒)やフレキシビリティなどを活かせば、応用の可能性はさらなる拡がりを見せるはずだ。

【車両事例】トヨタe-FOUR

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