見せます、ミゾロギ流・クルマの水彩画の描き方!!

溝呂木 陽の水彩カースケッチ帳/連載最終回・第26回 ミゾロギ流・水彩クルマ絵とは?

クルマ大好きイラストレーター・溝呂木 陽(みぞろぎ あきら)さんによる、素敵な水彩画をまじえた連載カー・コラムも今回でひとまず最終回。最終回は溝呂木さんの本来の(?)お仕事である、クルマの水彩画が出来上がるまでをお目にかけましょう。ひょっとしたら、アナタも愛車の水彩画を描きたくなるかも?

26回にわたった毎週連載も今回でひとまず最終回、いつもお付き合いいただきありがとうございました。最終回となる今回は基本に立ち返り、ボクの本職である水彩画の制作過程についてお話しましょう。

このクルマは、皆様ご存知のランボルギーニ ミウラ。ジウジアーロの原案を、同い年の若き日のガンディー二が仕上げた、伝説のスーパーカーです。しかも貴重な初期型のスリークなP400。あるイベントで知り合った上品なオーナー様から、水彩画制作をオーダーいただいたものです。

まずは写真をもとに、鉛筆でスケッチ。

まずはお送りいただいた写真をもとに、鉛筆でスケッチをしていきます。全体のバランスを考えて、流れるようなラインを意識しながら描いて行きます。今回の紙の大きさは51×36センチという大きめサイズで、フランス製アルシュ高級水彩紙を用います。この紙は絵の具の吸い込みが違うのです。

しつこいぐらい何度も見直して、下書きを仕上げていきます。

そして一度、この鉛筆スケッチの段階でオーナー様にお見せして、OK いただいてから下書きを仕上げていきます。いつものA3スキャナーでは入らない大きさだったので、この状態でいったん写真に撮り、全体の形を何度も確認します。さらに一晩おいて頭の中をリセットしてから形を見直しています。

色つけ。薄い部分から水で溶いた薄い色を重ねていきます。筆者の場合は背景から描くことが多い。

翌朝から色つけ。透明水彩なので白はつかいません。薄い部分から水で溶いた薄い色を重ねていきます。ボクは背景から描き進めることが多いです。まずは幅3センチくらいの柔らかい刷毛(‘ハケ)で、薄いトーンを入れて行きます。

空間を意識して描き込んで行く。床の反射・映り込みが見せ場だ。

さらに素敵なガレージの様子を描き込みます。ここは床の反射が見せ場になります。この状態で空間が出るように気を付けて描いていきます。

背景の仕上げ。色の濃いところは一発で仕上げる。

そして背景の仕上げ。色の濃いところは一発で仕上げ、何度も絵の具をいじらないように注意します。そこにクルマを置く空間の光が見えるように。クルマ本体はまだ白いままです。

いよいよクルマ本体。今回は窓から取り掛かる。

いよいよクルマ本体に取り掛かります。今回は窓から仕上げて行きます。透明な部分はこの絵の見せ場になります。艶感と立体感、透明感などを水彩で一度に表現していきます。

難所である、ガンディーニによる複雑なデザインを持つホイールを仕上げていく。

そしてミウラの見せ場である、ガンディーニによる複雑なデザインを持つホイールに取り掛かります。タイヤの厚みなどの量感や質感にも気を付けて、足まわりを仕上げていきます。

最後にボディをカラーで一気に仕上げる。今回はを少しデフォルメして低く雄大なスタイリングを強調。絵画ならではの技法だ。

最後にミウラの美しいボディをカラーで一気に仕上げます。丸みや鉄板、アルミの前後カウルのヒヤッとした触感、ラッカーの塗膜の厚みなどを表現したいところです。これで一気に絵が完成していくので、自分でもいつもワクワクしていく工程です。ミウラの低くて雄大な広がりを持つスタイリングを、写真から少しデフォルメして表現してみました。

額装して完成。筆者の水彩画は早ければ朝から描き始めて夕方には完成するとか。

そして別注していた額に額装して絵の完成です。オーナー様からはとても喜んでいただけました。ありがとうございました。水彩画は朝から描き始めれば夕方には完成するので、近々開催する個展(詳細はhttps://blog.goo.ne.jp/gtlr1128/e/4d2498064f665ef39b76da18b541ef3d)では、ボクの在廊日には実際に制作過程をお目にかける予定です。また会場には、ボクが制作した模型も展示しようと思っています。

今回で長い連載も一休みさせていただきます。読者の皆様、本当にありがとうございました。またお会いしましょう。

■『フィアットカフェ松濤2022春 溝呂木 陽 水彩展(DRAWING CARS in FIAT CAFFE SHOTO)』のおしらせ

東京・渋谷区の『フィアット/アバルト松濤』ディーラー内のカフェスペース『FIAT CAFFE SHOTO(フィアットカフェ松濤)』において、本連載でおなじみの水彩画家・溝呂木 陽氏の個展が開催されます。水彩画・模型・模型雑誌・Tシャツ・画集等の販売や水彩画オーダー会も開催いたします。会期中の作家在廊日には、会場内で溝呂木氏による水彩画デモンストレーションも随時開催される予定です。美味しいイタリアンを食べながら、ぜひとも氏の作品や制作実演をご覧ください。皆様のお越しをお待ちしております。

会期:2022年4月16日(土)〜4月30日(土)/ 10:00-18:00 / 毎週火曜・金曜定休 / 入場無料 / お車でお越しの際は、近くのコインパーキングのご利用をお勧めいたします。

作家在廊予定日:4月16日(土)、23日(土)、24日(日)、29日(金)、30日(土) /11:00~16:00

4月16日(土)、23日(土)、24(日)は、『フィアットアバルト松濤』において整備等のお客様に、ご希望により愛車やオーナー、ペットなどの水彩画クロッキーをプレゼントいたします。また、作家在廊時には随時、水彩画実演・水彩画教室・水彩クロッキーなどを開催いたします。

会場:〒150-0046 東京都渋谷区松濤2-3-13 『フィアット/アバルト松濤』ショールーム内

TEL:03-6804-9992

会場アクセス:京王井の頭線 「神泉」 駅 徒歩5分 / 「渋谷」駅からハチ公バス「代々木上原」方面行き乗車・「東大裏」停留所下車 徒歩2分 / 「渋谷」駅から徒歩15分

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著者プロフィール

溝呂木 陽 近影

溝呂木 陽

溝呂木 陽 (みぞろぎ あきら)
1967年生まれ。武蔵野美術大学卒。
中学生時代から毎月雑誌投稿、高校生の…