2022年6月現在、『トミカ』のNo.44にラインアップされている日産 NV400 EV救急車は、東京都が推進する『ゼロエミッション東京』の取り組みの一環として、東京消防局に初のゼロ・エミッション(EV=電気自動車)救急車として2020年3月31日に導入された新型車両で、池袋消防署の“デイタイム救急隊”で運用されています。
“デイタイム救急隊”とは、池袋消防署における救急車の要請が昼間に多いことから、平日の8時30分から17時15分までの間に集中的に運用するべく2019年5月に発足した救急隊です。夜間はこのEV救急車の充電時間となるそうです。
NV400 EV救急車は排気ガスを出さないという大きな利点がありますが、そもそも救急車には患者や隊員の身体的な負担軽減が求められることや、精密医療器具を搭載する必要があるため、静粛性が高く、振動の少ないEVは、この点でも大きな優位性があるものと考えられています。
さて、この救急車のベースとなっている日産NV400は、『トミカ』の『No.18 日産 NV350キャラバン 救急車』と同じく日産の商用バン「NV」シリーズの車両です。ちなみに「NV」とは「Nissan Van」の略で、「400」は車両総重量の最大が4トンであることを意味しており、主にヨーロッパで販売されているため、残念ながら日本ではほとんど見る機会がありません。「NV」シリーズの中でも最大級の車両で、貨物車やダンプカーなどの仕様が用意されているほか、ミニバスやキャンピングカーに改造されるなど幅広く活躍しています。
また、NV400はフランスのルノー・マスターの兄弟車にあたります。車両総重量から比べれば、NV400はNV350と大差ないように思えますが、NV350が車両の取り回し性能に優れているのに対し、ヨーロッパ生まれのNV400は長距離高速巡行性能に優れているのが大きな違いとなっています。
このNV400は基本的には外国車同様に左ハンドル車ですが、日本と同じ交通状況のイギリスでは右ハンドル車が用いられるため、NV400 EV救急車はイギリス仕様の右ハンドル車をベースとしています。日本の交通法規などへ適合させるための改造や専用の救急架装については、日産パラメディックでの豊富な実績を持つオートワークス京都に委託され、内外装はヨーロッパの緊急車両架装の大手メーカーであるGruau 社に委託されて、堅牢で合理的な救急架装パッケージが採用されています。
このNV400 EV救急車は、救急隊員の負担を軽減するための電動ストレッチャーや、すべてのシートに乗員の安全性を向上させるシートベルトが装備されています。さらに、本車両は33kWhと8kWhの2つのリチウムイオンバッテリーを搭載しているため、電装機器やエアコンをより長時間作動させることが可能で、停電時や災害時には移動電源としても活用することができます。
『トミカ』の『No.44 日産 NV400 EV救急車』は、この日本でも珍しいEV救急車を的確に再現しています。もともとNV400自体が珍しい車種ですので、そういう意味でも貴重な1台かもしれません。
■日産 NV400 EV救急車 主要諸元
全長×全幅×全高(mm):5548×2070×2499
ホイールベース(mm):3682
トレッド(前/後・mm) :1750
車両重量(kg):3500
モーター最高出力:55kW
モーター最大トルク:220Nm
駆動用バッテリー::容量33kWh{充電AC200V/最大7kW/普通充電(タイプ2)}
装備品バッテリー:容量8kW(充電AC100V/1.5kW)
サスペンション(前/後):ストラット/リジッド
ブレーキ(前後) :ディスク
タイヤ(前後):215/65R16