実車同様に息の長い『トミカ』、頼もしい1台です。

トミカ × リアルカー オールカタログ / No.79 トヨタ ハイメディック救急車

発売から50年以上、半世紀を超えて支持される国産ダイキャストミニカーのスタンダードである『トミカ』と、自動車メディアとして戦前からの長い歴史を持つ『モーターファン』とのコラボレーションでお届けするトミカと実車の連載オールカタログ。あの『トミカ』の実車はどんなクルマ?
No.79 トヨタ ハイメディック救急車 (サスペンション可動/後部ドア開閉・希望小売価格550円・税込)

私たちがよく目にする救急車の大部分は、地方公共団体の消防本部や消防署に属している救急車です。これらの救急車のうち現在、消防庁管轄の救急車で主力となっているのが高規格救急車(高規格救急自動車)です。高規格救急車は現状では救急車として要求されるすべての能力を備えているため、消防庁管轄以外の救急車でも採用例が多くなっています。ちなみに、高規格救急車用の車両のことを高規格準拠救急車と言います。

トヨタ ハイメディック 実車フロント&リヤビュー(2020年モデル)
トヨタ ハイメディック 実車フロントビュー。右サイドにもスライドドアがあることがわかる。『トミカ』に近い仕様。

現在、日本では高規格準拠救急車には3つの自動車メーカー製のものがありますが、そのうちの一つがトヨタの『ハイメディック』です。初代モデルは1992年にデビューし、現在、最新となっているのは2006年にデビューした3代目にあたるモデルです。救急業務の高度化に対応するために一段と広く使いやすい機能的な室内を追求したうえ、救急隊員の使用性に配慮した各種装備を充実させ、さらに迅速かつ的確な救急救命処置を念頭に、緊急搬送に応える十分な機動性を確保するとともに、高い安全・環境性能を追求したほか、よりスタイリッシュで目立つスタイルに一新するため、トヨタのベストセラー商用車『ハイエース』のスーパーロング、その中でも両側スライドドアを設定している輸出用200系をベース車として作られています。製造はトヨタ・グループの特装車事業を手掛けるトヨタカスタマイジング&ディベロップメントが担当しています。

患者室内は余裕の広さを誇っている。

先代モデルよりも患者室の長さを450mm、幅を50mm、通路幅についても40mm拡大することにより、一段と広い救急救命処置活動スペースを確保しており、スライドドア開口部の幅を180mm、高さを220mm拡大することで、救急隊員の乗降性も向上させています。また、患者室内外から使用できる運転席後方の縦型収納庫や、長尺物の収納が可能な窓下側面収収納の新設定など、使用性を考慮した十分な収納スペースが確保されています。

動力性能では、排気量2.7ℓの高性能2TR-FE型エンジンに電子制御フレックスロックアップ付4速AT(ECT-E)を組み合わせ、迅速な救急活動に求められる高い動力性能と機動性を確保。デビュー時には救急車で日本初の「平成17年基準排出ガス50%低減レベル」の認定を国土交通省より取得した事が話題となりました。また、ハイエースゆずりの強固なボディ構造、ステアリング&ブレーキペダル後退低減機構(回転式)、WIL(頸部傷害低減)コンセプトシート、歩行者傷害軽減ボディなどの採用により、高い衝突安全性能が追求されています。

使い勝手の面では、救急車初となる両側スライドドア装備による5ドア化、酸素ボンベ収納庫やバッテリー収納庫の設置場所の変更により、右側スライドドアからのメンテナンスも可能とし、使用性を向上させています。また、オルタネーターを150Aとし電力供給能力を高めることで、救急救命処置用機器の多様化に余裕を持って対応することを可能としています。

2020年にオプション設定された、車両後方のカメラ映像を映し出すデジタルインナーミラー。

また、大型のフロントおよびリヤの散光式警光灯などに、省電力に寄与して被視認性を高めるLEDが新採用されたほか、サイレンスピーカーをフロントバンパー内部に設置して室内への音漏れを低減させており、新開発のフラットマットを内蔵した新骨格構造フロントシートにより乗員の疲労を軽減させるなど、快適性や環境性能も高められています。加えてDVDナビゲーションシステム、音声ガイダンス機能付カラーバックガイドモニターをオプション設定するとともに、ワイヤレスドアロックリモートコントロール(アンサーバック機能付のメインキー3本、スペア用の一般キー2本付属)を標準装備するなど、快適装備の充実がはかられています。

2009年の一部改良でバッテリー収納庫の形状を変更してメンテナンス性を向上させたほか、患者室内においては、救急隊員用の後向き1人掛シートの座面を約100mm高くするとともに、横向き3人掛シート横に救急活動用パッドを設置し活動スペースを拡大するなど一段と救急救命処置を行ない易くしています。さらに車両上方に設置されている大型フロント散光式警光灯内の左右側面にLEDランプを追加し、被視認性を高めています。翌年のマイナーチェンジではフロントバンパー、ヘッドランプ、フロントグリルのデザインを変更したほか、視認性を高めるディスチャージヘッドランプ(ロービーム)[オートレベリング機能付]がオプション設定されました。

2020年に標準装備されたプリクラッシュセーフティのイメージ。

2013年にはベース車の『ハイエース』のマイナーチェンジに伴った改良が施され、2020年には衝突回避支援パッケージ『Toyota Safety Sense(トヨタ セーフティ センス)』や、車両安定制御システム(VSC)とタイヤ空転抑制機能(TRC)などを標準装備したほか、トランスミッションを6速化して静粛性を高め、より滑らかな走りを実現しています。

2020年にオプション設定された、車両を上から見たような映像をナビゲーション画面へ表示するパノラミックビューモニター。
パノラミックビューモニターのサイド画像。

これに加え、車両後方のカメラ映像を映し出すデジタルインナーミラーや車両を上から見たような映像をナビゲーション画面へ表示するパノラミックビューモニターをオプション設定、患者室で遮られる後方視界や目視しにくい周囲の安全確認をサポートするなど、視認性を向上させています。また、路車間/車車間通信を活用し、対向車、歩行者情報などをドライバーへ注意喚起するとともに、サイレンを鳴らしている場合に、緊急車両の存在を周囲の車両へ通知する運転支援システム『ITS Connect』もオプション設定するなど、走行時の安全性により配慮されたものとなっています。

2021年に販売店オプションで用意された、3モードに切り替えられる赤色LEDライト『アクティビーコン』。画像はハイパーモードのイメージ。

さらに2021年にはノーマル、ハイパー、ソフトの3モードに切り替えられる近隣住民に配慮した赤色LEDライト『アクティビーコン』が販売店オプションで用意され、活動負荷の軽減を目的にスイッチ操作1つでリヤガラスを「透明」と「くもり」に瞬時に切り替えられる調光フィルム『QQスクリーン』と2次感染リスクを低減させる単回使用ビニールカバー、ストレッチャー取付式簡易アイソレーター『イーカプセル』がオプション設定されており、年年歳歳、進歩をしています。

『トミカ』の『No.79 トヨタ ハイメディック救急車』は2006年にデビューした3代目ハイメディックの初期型を再現しています。サスペンションの可動に加え、後部ドアが開閉するギミックを備えているため、ちょっとした動きを楽しむことが出来ます。また、実車同様に、国内版のノーマルのハイエースには存在しない右側のスライドドアを彫刻再現している点も見逃せません。ベテランの『トミカ』ですが、今も昔も人気の高い1台です。

■トヨタ 高規格準拠救急車 ハイメディック(ハイエース特装車・2WD/2020年モデル)主要諸元 (『トミカ』モデル車種と同一規格ではありません)

全長×全幅×全高(mm):5600×1895×2510

ホイールベース(mm):3140

トレッド(前/後・mm) :1655/1650

車両重量(kg):2580

エンジン形式:2TR-FE型 水冷直列4気筒DOHC

排気量(cc):2693

最高出力:118kW(160ps)/5200rpm

最大トルク:243Nm(24.8kgm)/4000rpm

トランスミッション:6速AT

サスペンション(前/後):ダブルウィッシュボーン/リジッド

ブレーキ(前/後) :ベンチレーテッドディスク/ドラム

タイヤ:(前/後) 195/80R15

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