東日本震災の被災地でも活躍した“奇跡の重機”を『トミカ』でゲット!!

トミカ × リアルカー オールカタログ / No.65 日立建機 双腕作業機 アスタコ

発売から50年以上、半世紀を超えて支持される国産ダイキャストミニカーのスタンダードである『トミカ』と、自動車メディアとして戦前からの長い歴史を持つ『モーターファン』とのコラボレーションでお届けするトミカと実車の連載オールカタログ。あの『トミカ』の実車はどんなクルマ?
No.65 日立建機 双腕作業機 アスタコ (アーム可動/運転台回転/ドーザ可動・希望小売価格550円・税込)
日立建機ZX70TF-3『アスタコ』初代機 実機(PHOTO:日立建機)

2本の腕を持つ特徴的なフォルムにより子どもから大人まで幅広い層の人気を集めている日立建機の『アスタコ』は、2005年に油圧ショベルをベースに開発された双腕仕様機です。油圧ショベルは自走し、油圧によって腕状の構造物――根元から順にブーム、アームと呼び分けます――およびバケット(バケツ)などのアタッチメント(作業具)を作動させて、主に掘削や整地、積込といった土木作業用途に使用される建設機械の一種ですが、アタッチメントを交換することでビルの解体や林業、農業などに幅広く活用されます。一般的に、上部旋回体(エンジン、操縦席など)が360°回転でき、下部走行体(足まわり、下部フレーム)を停止した状態で、油圧によって駆動する作業装置の作動によって作業を行なう機械をいいます。英語ではエキスカベーター、あるいはディガーと呼びますが、日本では油圧(式)ショベルのほか、メーカーによってはユンボ、バックホー、パワーショベル、ドラグショベル、ショベルカーなどと呼ばれています。

ZX70TF-3『アスタコ』初代機は両腕が同じ大きさで、機体中央に操縦席を持つ。(PHOTO:日立建機)

掘削や解体など大きな力を必要とする場合に用いられる油圧ショベルですが、その名の通り油圧を利用して大きな力を生み出しています。この油圧はエンジンで油圧ポンプを回すことで発生させます。油圧ショベルの走行、旋回、掘削などのあらゆる作業は、この油圧の力で行なわれています。

そんな油圧ショベルは日本の建設業界でも古くから活躍してきました。1931年に国産電気ショベルが登場した後、ディーゼルドラグラインが製作され、戦後には近代化汎用機として機械式ショベルが登場、1960年ごろには油圧ショベルへと変化を遂げてきました。1960年代から次第に小型化され、操縦がさらに手軽になり、万能的な使いやすさが認められたことで広く普及し、油圧ショベルは建設機械の花形となったのです。

ちなみに現在では機体重量が6トンを超えるものを油圧ショベルと言い、6トン以下またはバケット容量が0.25㎥未満のものをミニ油圧ショベルと言います。タイプや仕様によっても分類されており、車体後方の旋回半径が小さく、狭いスペースでも作業ができる機種を超小旋回機あるいは後方超小旋回機と言い、市街地などの道路工事などで活躍します。仕様によるものでは、災害時に分割して運べる分割ラジコン仕様機や狭いトンネル内での作業を可能にしたトンネル仕様機といったものがあります。2本の腕を持つ『アスタコ』もまた特殊仕様機であるため、双腕仕様機と呼ばれているのです。

『アスタコ』シリーズの開発の系譜。(PHOTO:NEDO)

さて、日立建機の『アスタコ』は、2本の腕――作業装置――があるからこそ可能となる「支えながら引き出す」、「つかみながら切る」、「長いものを折り曲げる」といった複雑な作業に対応しており、災害救助や解体作業などで稼働しています。ちなみに『アスタコ』=“ASTACO”とは“Advanced System with Twin Arm for Complex Operation ”の略ですが、スペイン語でザリガニという意味もあります。双腕の建設機械というアイデアは、「ショベルカーの腕を2本にしたら、今までできなかったような作業ができるようになるのではないか」という、同社の若手社員の発想から始まったといいます。

川崎市消防局に配備されている『アスタコ』は初代機の改良モデル。災害現場で頼もしい救助機として活躍している。(PHOTO:川崎市)

2005年に7トン級の小型ショベルカーをベースに開発されたZX70TF-3『アスタコ』が初代機で、右腕と左腕が同じ大きさで、両腕の真ん中に操縦席を設置していました。この初代機には東京消防庁が災害救助に使えるのではないかと強い関心を寄せ、2009年から1年間の試用期間を経てさらなる改良が積み重ねられ、2011年に正式に東京消防庁に納入されました。次いで川崎市消防局にも納入され、計2台の『アスタコ』初代機改良型が災害救助用として活躍しています。実は『トミカ』の『No.65 日立建機 双腕作業機 アスタコ』は、右腕と左腕が同じ大きさの、この初代機をモデルとしているようです。

しかし『アスタコ』初代機は、操作の複雑さなどから、建物の解体現場ではなかなか受け入れられませんでした。2006年に東急建設から『アスタコ』初代機をベースに高層ビルの解体現場やスクラップ処理現場で活用する建設機械の共同開発の誘いを受けた日立建機は、NEDO(New Energy and Industrial Technology Development Organization =国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の“戦略的先端ロボット要素技術開発”プロジェクトの“特殊環境ロボット分野・建設系産業廃棄物処理ロボットシステム”に、東急建設と共同で参加し、2006~10年度の5年間におよぶNEDOプロジェクトで開発された2台の双腕機を経て、さらなる改良が加えられた新型の『アスタコNEO(ネオ)』が誕生しました。

様々な改良をうけて製品化されたZX135TF-3『アスタコNEO』。左右の腕が非対称で、取り付け位置なども異なる。操縦席は左側にオフセットされ、一般的な油圧ショベルに近い。(PHOTO:NEDO)

『アスタコNEO』は2本の腕が左右非対称なのが初代機との大きな違いで、右腕が主腕、左腕が副腕の役割を担っていることが特徴です。初代機の経験から、同じ大きさの腕を2本搭載すると重心が前に移動して機械全体の安定性が悪くなってしまうことがわかったため、両腕を初代機に比べて小さくするとともに、左腕はあくまでも右腕を補助する副腕にするという考えを取り入れたのです。『アスタコ』初代機は『ザリガニ』でしたが、『アスタコNEO』は右腕が左腕よりも大きい『シオマネキ』を目指したのだそうです。右腕の先端部には10~13トン級の、左腕の先端部には4トン級のショベルカー用アタッチメントを装着できます。アタッチメントには、物をつかむ“グラップル”や、鉄骨などを切断する“カッター”、コンクリートやアスファルトを砕く“圧砕機”、砂利や廃材を載せる“バケット”などがあり、用途に応じて付け替えることができます。

『アスタコNEO』の操縦席。操作・操縦はダブルジョイステック式。スティックは上下左右への動きのほか、ひねる動きも使用する。(PHOTO:NEDO)

『アスタコNEO』は奇しくも東日本大震災が発生する5日前の2011年3月6日に公開されましたが、すぐに東日本大震災の被災地、宮城県石巻市や南三陸町で、倒壊した建物の解体やがれきの撤去作業に投入されて大活躍したのです。このユニークなスタイルの“奇跡の建機”を『トミカ』で手に入れてみませんか?

■日立建機 双腕作業機 アスタコ NEO 主要諸元(『トミカ』モデル車と同一仕様、同一規格ではありません)

全長×全幅×全高(mm):7400×2640×2780(輸送時寸法)

ホイールベース(mm):2880(軸距)

トレッド(前後・mm) :2640

運転質量(kg):16200(アタッチメント含まず)

エンジン形式:いすゞ AJ-4JJ1X型 直列4気筒 OHC 直噴ディーゼル インタークーラー付ターボ

エンジン排気量(cc):2999

エンジン定格出力:69kW(94ps)/2000rpm

最大作業半径(mm):7250(主腕)/5550(副腕)(アーム先端ピンでの値)

最大作業高さ(mm):8390(主腕)/5150(副腕)(アーム先端ピンでの値)

最小旋回半径(mm):2890

副腕フロントスイング角度:左右30°

アタッチメント装着可能最大質量(kg):1550(主腕)/450(副腕)

キーワードで検索する

著者プロフィール

MotorFan編集部 近影

MotorFan編集部